595列車 走る鉄道博物館
2062年3月27日・月曜日(第20日目)天候:曇り時々晴れ 東海旅客鉄道東海道本線浜松駅。
芝本→遠州鉄道→新浜松
「淳兄ちゃんも呆れてたね。」
萌が言った。
昨日は淳兄ちゃんの家に泊めて貰ったからなぁ・・・。まぁ、なんていう事情で止まるのかとかそういうことは事前に言ってあったけど。最初の一言が「お前ら、本当に変な旅やってるとは思わなかった。」には笑ったなぁ・・・。
変な旅をやってる旅人が言うのも何だが、動かなくなった車を維持している淳兄ちゃんも十分変人だと思うけど・・・。
浜松駅にやってくると東海道本線に乗り換えである。
浜松9時10分→金谷9時50分
9時10分発の普通列車興津行きは3両編成だ。「興津」という読みは知らなければ読むことが出来ないが、同じ「おきつ」でも「伊勢奥津(名松線)」の方が初見殺しだと思う。
315系2500番台には結構人が乗っている。席を選ばなければちゃんと座れるか。席に座ると列車は発車する。
天竜川駅に停まってから天竜川橋梁を通過する。磐田駅、袋井駅と止まり、新幹線が右側から近づいてくると愛野駅に到着する。ここの愛野駅は跨線橋が新幹線をまたぐように作られている。僕が小さいときはよくこの愛野駅で新幹線を眺めていたものだ。500系を初めて見たのもここだったなぁ・・・。
新幹線と併走して、掛川駅に到着。3両編成の電車は適度に混み、掛川駅を発車。
新幹線から離れ、山の中を走り、菊川に到着。菊川を発車して、車掌が次の停車駅を「金谷」と告げた。
最長往復切符往路金谷駅で途中下車
「ここで降りる人っているんだなぁ・・・。」
かなり失礼だとは思う。だが、回りには大きい建物がない。新函館北斗と同じようにこの金谷駅も鉄道から降りたらそそくさと逃げるための駅なのだろうか・・・。
僕たちは駅から降りて、すぐ隣にある鉄道線乗り場に行った。金谷駅には東海旅客鉄道以外に大井川鐵道という鉄道線が通っている。この鐵道は走る鉄道博物館と呼ばれるほど古い車両が走っている。首都圏ではもうお目にかかれない車両もここに来れば見ることが出来る。
昔は旧近鉄特急16000系や南海電鉄ズームカー、京阪電鉄テレビカーなど走っていたが、それらは経年劣化によって置き換えられている。今は南海電鉄7100系が2両ワンマン運転対応車となり、東急電鉄の車両も走っている。まぁ、首都圏からしてみれば骨董品ぶりは変わっていない。
金谷10時18分→大井川鐵道→新金谷10時21分
金谷駅から一駅離れると大井川鐵道の拠点駅新金谷駅に到着する。僕たちはここで一旦列車を降り、次の列車に乗り換える。
その次の列車はホームで「シュッ、シュッ」と蒸気をはいて待ち構えていた。
大井川鐵道の目玉であるSL急行だ。僕自身大井川鐵道に乗ったことはあるのだが、SL急行に乗った記憶が無い。南海電鉄ズームカーで運行した電車急行列車には乗ったことがあるんだけどなぁ・・・。
先頭に立つのは8620形やC57形と違い小さいC10形8号機。この蒸気機関車は小さいがこれだけで動き回ることが出来る優秀なタンク機関車だ。
「ナガシィは良いよねぇ。大井川鐵道にも乗りに来たことがあって。」
「いや、乗りに来たって言うか、ただ寸又峡温泉に大井川鐵道で言ってただけなんだけど・・・。」
新金谷10時38分→「SL急行かわね路13号」→千頭11時53分
「ボォォォォォォォォォォッ。」
汽笛一声「SL急行」は新金谷駅を出発する。ガコンと客車がきしむような音を立て、ゆっくりとホームを離れ始める。
大井川鐵道は終始大井川に沿って北上する。川の脇を白い煙を吐き、客車を牽引して走る。この光景は昔の日本ならごくありふれた光景であるが、今は珍しいものだ。沿線にはSLを一目見たいという人がたくさんいる。時に、そこには行って良いのかという場所にいるひともめに入るのだが・・・。
SL急行は家山駅に停車。すぐにドアを閉めて家山駅を発つ。
「・・・。」
「どうかした。」
「んっ。寸又峡温泉に行ったとき、この駅の近くの鯛焼き屋さんに寄ったことがあってね。そこの鯛焼き美味しかったんだけど、今はやってるのかなぁって。」
「何年前の話なの。ナガシィが寸又峡温泉行ったのって小学校の時でしょ。」
「まぁ、そうだけど・・・。」
「そんなにナガシィがおいしいって言うなら、私も途中で降りて食べに行きたかったかなぁ・・・。」
「ボォォォォォォォォォォッ。
下を見下ろすと大井川だ。ガタン、ゴトンと線路の継ぎ目をたたく音がいつになくうるさく聞こえた。
一口メモ
鉄道省C10形蒸気機関車8号機
現在大井川鐵道が所有する動態保存蒸機の1機。1930年製造された都市近郊向けタンク式蒸気機関車で1962年と1986年に2回廃車されている。2度目の廃車後、岩手県宮古周辺でSL列車の運行に従事していたが、その列車もあえなく休止。その後、大井川鐵道に譲渡され現在に至る。旧型機と言うこともあり、牽引力が不足気味であるらしい。
日本国有鉄道12系客車「かわね路号」専用客車
西日本旅客鉄道で運行していた「SLやまぐち号」で運用されていた12系客車を運用終了後に貰い受けた。状態は必ずしも良いとは言えないが、今でも走っている12系客車となっている。なお、日本国内において走行できる12系客車は大井川鐵道と東日本旅客鉄道「SLばんえつ物語号」だけである。




