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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Journey Episode:4
593/779

593列車 降りたのは失敗

 2062年3月26日・日曜日(第19日目)天候:晴れのち曇り 東日本旅客鉄道(ジェイアールひがしにほん)中央本線(ちゅうおうほんせん)辰野支線(たつのしせん)岡谷(おかや)駅。

 岡谷(おかや)駅のホームには東日本旅客鉄道(ジェイアールひがしにほん)のE233系と東海旅客鉄道(ジェイアールとうかい)の315系が止まっている。僕たちが乗るのは315系の方だ。3両編成フルカラーLEDを装備し、パンタグラフ車両に2基集電装置を備えるこれは315系1600番台。313系に負けず劣らず兄弟たくさんのこの形式は難解だ。

「この列車は飯田線(いいだせん)直通普通列車飯田(いいだ)行きです。」

その案内がされる。

岡谷(おかや)8時43分→飯田(いいだ)11時13分

 出発の時間になれば、ホームを離れていった。

 岡谷(おかや)を出発するとしばらくは中央本線(ちゅうおうほんせん)を走る。岡谷(おかや)辰野(たつの)塩尻(しおじり)間は元々中央本線(ちゅうおうほんせん)の機関区間で合った場所だ。岡谷(おかや)塩尻(しおじり)間にある塩嶺トンネルが開通するまで、こちらの路線には多くの優等列車が通っていたはずだ。

 辰野(たつの)駅に近づくと僕らが進行する前側からも列車が入線する。前から近づいてくる列車は塩尻(しおじり)からやってきた列車だ。

 岡谷(おかや)辰野(たつの)塩尻(しおじり)中央本線(ちゅうおうほんせん)は大八廻りと呼ばれる区間らしい。これは中央本線(ちゅうおうほんせん)辰野(たつの)経由にした帝国議会議員伊藤大八の功績をたたえるものだという。また、議員が自由自在に鉄道を引っ張る「我田引鉄」の先駆けとも言われる区間だ。

 辰野(たつの)駅を出発すると列車は飯田線(いいだせん)へと入る。

 辰野(たつの)駅を出発して3分。列車は宮木(みやき)駅に到着する。

「・・・。」

「駅間短い。」

辰野(たつの)宮木(みやき)間は1.1キロしか離れていない。JR線にしてはかなり短い。

 宮木(みやき)を出発して、2分で隣駅伊那新町(いなしんまち)に到着。この間は1.2キロ・・・。これもJR線にしては短い。

 この先も列車はあんまりスピードを上げられないまま隣駅に到着する。飯田線(いいだせん)という路線があんまりスピードを上げられない路線だからと言っても、これは・・・。三江線(さんこうせん)よりはましなのだが・・・。

 この駅間の短さは飯田線(いいだせん)の成り立ちによる。現在の飯田線(いいだせん)はこの辺りに設立された4つの私鉄が合併・国有化されたことで出来上がった。私鉄線は基本的に地域密着型だ。駅はこまめに設置され、それぞれの地域間輸送に特化する傾向がある。国鉄とは違う思想で敷設された鉄路が国有化されたことから延長195.7キロに及ぶ日本最長のローカル線が出来上がったのだ。

 あまり聞きたくは無いと思うが、飯田線(いいだせん)を通しで走る普通列車は豊橋(とよはし)辰野(たつの)間で6時間37分(豊橋(とよはし)10時42分発)かかっている。聞いただけで発狂しそうだ。

 ただ、僕らが乗っている飯田(いいだ)行きの列車も飯田(いいだ)まで2時間30分かかる。315系の転換クロスシートでなければ色々と体がやられそうだ。

飯田(いいだ)11時32分→天竜峡(てんりゅうきょう)11時59分

 飯田(いいだ)駅で列車を乗り換え天竜峡(てんりゅうきょう)に行く。天竜峡(てんりゅうきょう)駅ではその先に進む列車がない。50分列車を待って、僕らはさらに飯田線(いいだせん)を南下する。

天竜峡(てんりゅうきょう)12時50分→小和田(こわだ)13時42分

 天竜峡(てんりゅうきょう)駅から1時間経つか経たないかぐらいで、僕たちは列車から降りた。

「なぁんにも無いわね・・・。」

「なぁんにも無いなぁ・・・。」

最長往復切符往路小和田(こわだ)駅で途中下車

「途中下車した瞬間に思ったんだけどさぁ、色々と失敗だったと思うんだよなぁ・・・。」

後ろではドアを閉めた315系がゆっくりとホームから離れていった。特徴のあるVVVFサウンドを辺りに響かせ、山の中へと消えてゆく。

「・・・それ今言う・・・。」

「何もかももう遅いなぁ・・・。」

スマホを起動して乗り換えアプリで次の列車を調べる。分かっていることだが、この辺りの列車本数は多くない。次は16時01分までない。その間に来る天竜峡(てんりゅうきょう)方面行きの列車も、臨時急行列車「飯田線(いいだせん)秘境駅(ひきょうえき)号」もない。2時間20分程度この駅で缶詰かぁ・・・。

「2時間20分列車来ないよ。」

「聞きたくなかっただに・・・。」

「ハハハ、言っちゃった。」

 さて、そんな駅で降りたのは僕らと他に一人の計3人。最後の一人はカメラと折りたたみ式の自転車を持って、そそくさと山の中へと消えていく。ここからの脱出を試みようとしている物好きらしい。

 小和田(こわだ)駅の周辺は山に閉ざされている。辺りには人一人が通れるだけの幅がある獣道が出来上がっている。さっきの人はここを通っていったらしい。ここを通り抜けていけば、この辺りにある集落に行くことが出来るのだろうが・・・。僕ら以外に人のいる気配はない。

 駅には朽ち果てたバイクがおかれている。放置されてから長い月日が経ったからか、バイクは完全に自然と同化している。

 僕らが降りた反対側にはホームが設置されているが、線路は取られ、使い物にはならないことを僕らに示している。

「この駅って利用者いないのよねぇ・・・。」

「今でも郵便配達で飯田線(いいだせん)使ってるのかな・・・。」

一応ネットの大図書館には今でも使っているようなことが書かれている。

「・・・。」

暇だ・・・。

「早く電車庫内かなぁ・・・。」

「しばらく来ないなぁ・・・。」

「こんなところで電車の耐久待合みたいな事スーツ着て二人でしてるってただの馬鹿でしょ。」

「今言わなくてもいいだに・・・。」

まぁ、でも馬鹿であることは変わりないよなぁ・・・。

 風が吹いた。耐寒耐雪装備が万全でないスーツでは少々寒い。

「ああ、寒い・・・。」

「本当に速く電車早く来ないかなぁ・・・。」

「さっきの電車に乗りっぱなしで、小和田(こわだ)駅はこういう所だったの買ってみるだけで良かったんじゃ・・・。」

「ちょっとは降りてみたいじゃん。秘境駅(ひきょうえき)第2位の駅・・・。」

「・・・ここで2時間は無いって。まだ15分も経ってないけど、もう飽きたら。」

「ハハハ・・・飽きたな。」

さて、どうしよう・・・。

「ナガシィ・・・。」

「んっ。」

「今考えてること当ててあげようか。」

「なぁに。」

「この後どうやって話題つなごうか・・・。」

「正解。」

「それよりもさぁ・・・。」

「んっ。」

「私・・・ちょっと・・・と・・・。」

「と・・・。」

「察して。」

「無理。」

「・・・トイレ行きたくなっちゃったんだけど。」

「・・・誰も来ないし、最悪隠れてすれば。」

「男じゃないの。馬鹿だら。あっ、ごめん。馬鹿だった。」

「いや、僕も最悪をされると困るだに。」

「だったら何で言ったの。」

「いや、仕事でしてたし。」

「一緒にするな。」

それもそうか・・・。

「・・・ああ・・・持つかなぁ・・・。」

「・・・僕ならまだ見られても良いだろ。」

「危ない発言禁止。」


一口メモ

東海旅客鉄道(ジェイアールとうかい)飯田線(いいだせん)小和田(こわだ)

静岡(しずおか)県浜松(はままつ)市天竜区にある飯田線(いいだせん)の駅。元々この辺りにあった集落への最寄り駅だったが、佐久間ダムの建設により、その集落が水没したことで高い位置に出来ていた駅だけが取り残される形となり現在に至る。秘境駅(ひきょうえき)として知られ、この駅に鉄道以外で到達する術は徒歩を除いて無いと言って良い。現在は秘境駅(ひきょうえき)として有名であり、臨時急行列車「飯田線(いいだせん)秘境駅(ひきょうえき)号」の停車駅となっている。


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