592列車 色々と違う
2062年3月25日・土曜日(第18日目)天候:晴れ 東海旅客鉄道関西本線亀山駅。
最長往復切符往路亀山駅で途中下車
亀山駅で列車を降りる。名古屋行きの列車はまだ30分以上待たなければならない。その間にちょっとだけ亀山の駅周辺を見て回ろうと思ったのだ。
「亀山駅って何か広いよね。」
萌がつぶやく。
そのつぶやきには同意だ。亀山駅の構内はかなり広くなっていて、そのほとんどが開けた空き地になっている。昔はがらんどうとなっている辺りにも線路が張り巡らされていたのだろう。
しばらくしてから亀山駅に戻るとキハ120系が止まっていた。この車両は柘植駅からかも駅の間で乗った車両だが・・・。この亀山駅は東海旅客鉄道と西日本旅客鉄道の境界駅となっている。僕らはこのキハ120系に乗った柘植駅は3駅先である。3日かかって3駅となりまで進んできたのか・・・。そう考えるとなぁ・・・。
16時11分にキハ120系派かも駅に向かって出発していった。
僕らは電車に乗り込む。東海旅客鉄道の主力車両315系だ。
亀山16時23分→「快速」→名古屋17時34分
亀山を出発する快速列車は途中の四日市駅まで各駅に停まる。この快速は四日市~亀山間の普通列車も兼ねているからだ。
河原田駅で右側から高架橋が寄ってくる。さっき津駅で降りた「南紀6号」の走った線路、伊勢鉄道線だ。
四日市駅からは快速運転に入る。だが、新快速みたいな勢いがあるわけではない。時折単線になる関西本線をマイペースで進んでいく。右隣には近鉄特急や急行列車が走り、なんとも慌ただしそうだ。
新幹線の高架橋が見え、その下をくぐって名古屋駅へと入る。大阪以来の大都会だ。
最長往復切符往路名古屋駅で途中下車
「萌、そろそろ晩ご飯にでもしようか。」
「名古屋と言えば味噌カツでしょ。」
「味噌カツはいるの。」
僕はそう聞いた。萌はそれには黙った。入らないって言う意思表示で良いのかな・・・。
「名古屋と言えばきしめんでしょ。」
「きしめんだったら駅降りなくても良かったんじゃない。」
萌がそう言うのは名古屋にはきしめんを食べられるところが駅構内に大量設置されているからだ。
「まぁ、良いんじゃない。ずっと列車に乗りっぱなしだし、気分転換も必要だって。」
きしめんを食べて、名古屋駅にホームに戻る。列車での移動はまだ終わらない。ここから乗る列車は中央本線の特急「しなの」だ。
「しなの号」はグリーン車を用意した。東海旅客鉄道の特急列車は「ワイドビュー○○」という名が付いている。窓は広く、先頭車両はパノラマが楽しめるようになっているものが多い。せっかくそう言う列車に乗るのだから、前面展望を楽しんでみたいでは無いか。その意味も込めてのグリーン車だ。
名古屋18時40分→「しなの21号」→塩尻20時35分
が・・・。
「よくよく考えたら、真っ暗なんだしグリーン車にする必要なかったなぁ・・・。」
「時間分からなかったわけじゃないのにねぇ・・・。お馬鹿。」
「うっ・・・。」
右に新幹線、左に東海道本線を見ながら、しばらく走る。金山駅が近づいてくると列車は東海道本線と名古屋鉄道線の下をくぐり、金山駅に入線する。金山駅を出発すると列車は左に折れ、中央本線を快走し始める。
名古屋のベッドタウンはすぐに終わり、山の線路へと姿を変える。パノラマから見えていた街の明かりは少なくなり、ヘッドライトの照らす行く手は暗闇に包み込まれている。
時折Gがかかって、スピードが落ちる。そうなると「しなの」はカーブにさしかかる。「しなの」的には十分減速しているのだろうが、それでも速い。僕が初めて鉄道で恐怖を感じた四国旅客鉄道の2000系気動車に乗っているような感覚だ。時たま前を見ていられなくなる。
「・・・。」
「どうかした。」
萌が聞いてくる。
「・・・僕の振り子車両のイメージってトップスピードのままカーブにツッコんで車体が傾くって言うイメージなんだよねぇ・・・。「しなの」ってスピードのアップダウンが激しいなぁと思っただけ。」
GPSスピードメーターアプリを起動してスピードを見ているとだいたい110キロ前後で走り、カーブにさしかかる手前で90キロ台にまで減速することがある。カーブを抜けると再び100キロオーバーまで加速する。その繰り返しだ。
「・・・ふぅん。」
興味はなさそう・・・。
「確かに「あずさ」ってあんまり加減速しなかったかもねぇ・・・。」
左へ大きくカーブする。右側から線路が近づき、その先に駅を見るようになると塩尻駅だ。
「しなの」をここで降り、今度はさっき右側から近づいてきた線路の方向へ走る普通列車に乗り換える。それで今日の移動は終了だ。
塩尻20時54分→岡谷21時04分
最長往復切符往路岡谷駅で途中下車
一口メモ
東海旅客鉄道385系
「しなの」で長らく運用された383系の老朽置き換え車両。385系には簡易振り子式車両として製造され、名古屋圏から信州への最速列車として今も君臨している。
四国旅客鉄道2000系気動車
四国旅客鉄道の開発した振り子式特急型気動車。世界で初めて振り子機構を付けたディーゼルカーであり、その技術は開発段階から広く注目されていた。現在走っている多くの振り子式気動車の始祖である。振り子式を使った速達効果は絶大で岡山~高知間を走っている特急「南風」の所要時間を最大40分短縮する記録も持つ。現在では主力の座を2600系気動車や2700系気動車に譲り、第一線からは退いている。




