584列車 偲ばるる
2062年3月23日・木曜日(第16日目)天候:晴れ時々曇り 南海電鉄南海本線和歌山市駅。
「和歌山城広い。」
そういいながら、萌は両手を広げる。鳥取砂丘でも同じ事してて、肩痛そうにしたのに。学習しない奴・・・。そう思いながら見ていたが、やっぱり肩を痛めたらしい。
「イタタ・・・。」
「学習しない奴・・・。」
僕はそう言いながら、萌の肩をなでる。
「ごめん、ありがとう。」
「・・・。」
和歌山城は紀州徳川家が居城としていたお城。平地にある山の上に建造された平山城という分類に含まれるらしい。現在でもかなり広い和歌山城だが、最盛期は現在の4倍の広さを持ち、紀の川という天然の堀を持つお城だったという。訳の分からない広さだなぁ・・・。
場内をまわっていると萌が僕のスーツの袖を引っ張る。
「ナガシィ。面白そうなの有るよ。」
ふと見てみるとその一角だけは黒いカーテンで仕切られた区画がある。上を見てみると何々「VR和歌山城」・・・。
「CGで作った最盛期の和歌山城とその城下町を再現しています。3D映像のため、ご気分を悪くされた方はお近くの係員までお申し出くださいだって。見てみる。」
「・・・いいよ、別に。」
「ええ、見ようよ。面白そうじゃん。」
「いいってば・・・。」
「見ようよ。見ようよ。」
「ご覧になりますか。」
係員に声をかけられるともう見るしかないだろう・・・。
VR画像を見終わると気持ち悪くなる。吐きはしないけどね。
「和歌山城って広かったね。それにしてもすごかったね。侍いたよ、侍。」
「いたなぁ・・・侍。」
和歌山城から出て、15分くらい歩くと南海電鉄の和歌山市駅に到着する。ビルには大きく「NANKAI」とかかれ、ロゴマークが映える。ここからJRに乗るのだが、まずはお昼ご飯を済ませよう。
お昼ご飯を済ませたら、切符を買って南海電鉄の改札を通り抜ける。どこからもJRがでる雰囲気はないが、上の案内を見ると小さく「紀勢線 和歌山方面」とでている。ホームに降りるとそこには227系1000番台が止まっている。これは西日本旅客鉄道のものだし、行き先はちゃんと「和歌山」となっている。227系の反対側には南海電鉄の難波行き特急「サザン」や急行が止まっている。この駅でJRは完全にアウェイだ。
「アウェイね。」
「アウェイだな・・・。」
列車に乗り込むと緑色のロングシートが広がっている。ドア横には黄色のはしごが装備されている。この227系は太平洋の海岸線に沿って運行する列車のため、万が一列車から避難しなければならなくなった状況を考慮してあるのだ。
「紀勢線和歌山行き発車します。」
「あっ、速く乗ろう。」
僕たちは押しボタンを押して、車内に入った。
和歌山市14時03分→和歌山14時10分
「コフォホホホホホ・・・。」
和歌山市→和歌山の乗車券使用開始および終了
列車は「発車します」と声をかけただけで出発する。それ以上の案内はない。
西日本旅客鉄道227系1000番台
広島地区に投入された227系をベースに開発された和歌山、奈良地区向け227系。ワンマン運転対応の2両編成で、車内はロングシートのみで構成される。それぞれのドアには避難用のはしごが装備されており、緊急時に対応する。はしごの付近にはパンダを用いた「はしごの使い方」ポスターが貼られている。パンダ可愛い・・・。




