580列車 若狭路
2062年3月21日・火曜日(第14日目)天候:晴れ 西日本旅客鉄道小浜線東舞鶴駅。
東舞鶴駅に到着すると、僕らはホームの反対側に止まっている223系5500番台に乗り換える。種別表示にはエメラルドグリーンの文字で「わかさライナー」と書いてある。小さい表示器に7文字入っているので、一文字一文字窮屈そうな表示だ。
東舞鶴10時13分→「快速わかさライナー」→若狭小浜10時56分
「今日も西日本旅客鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は快速「わかさライナー」若狭小浜行き、ワンマンカーです。」
との案内が入る。
「フュー。」
ブレーキを解除し、すぐに東舞鶴駅を発つ。223系を使って入るものの、東海道・山陽本線を新快速として爆走していたときほどの早さはない。いや、5500番台は最初からそう言う運用とは無縁か・・・。
同じ223系とは思えない、ゆったりとした足取りで若狭路を進む。上に点いている運賃表には東舞鶴と書かれた下に「210」と表示が出ている。あれは東舞鶴から乗車し、次の松尾寺で下車した際に徴収される運賃だ。だが、この列車はその松尾寺駅を通過する。徴収なんてものは最初から出来ないのだが・・・。
「進行、松尾寺通過。」
その声がしてから上の運賃表を見る。
東舞鶴の下は「240」に変わり、松尾寺の下には「190」と表示が出た。次の青郷駅も通過なんだが・・・。
「まもなく、若狭高浜、若狭高浜です。運賃、乗車券は駅係員にお渡しください。若狭高浜の次は若狭本郷に止まります。」
アナウンスが入る。ホームに止まると、乗り慣れた人たちはドア横のボタンを押して、そそくさと降りていく。そして、すぐに出発だ。
小浜駅を出発して、右側から高架橋が近づいてくると終点若狭小浜駅に到着する。3月1日に出発して以来、最長往復切符の発効まで使っていた切符の起点となる駅だ。
在来線の改札口と新幹線の改札口は離れている。一旦、在来線の改札口からでて、新幹線改札口へと歩く。僕らと同じように在来線改札から新幹線改札に歩いているのは約10人。そのうち7割くらいが新幹線の改札内へと消えていく。この乗り換えは少々不便だ。
小浜線の東舞鶴~若狭小浜間は今でもJR線のままなのだが・・・。
僕たちは窓口で最長往復切符をみせた。窓口の駅員はチラッと見ただけで、僕らの持っている特急券に判子を押した。経路は確認してないだろうなぁ・・・。
「今の人ちゃんと確認したのかな。」
「アレはさすがにね・・・。こっちは乗車のプロじゃないからな・・・。」
僕の口は何を言っているのだろうなぁ・・・。
若狭小浜の新幹線ホームには通過線が設置されていない。時間が合えば、時速260キロで通過する北陸新幹線の車両を見ることが出来る。そんなに都合よくくることは無いと思っていたが、ちょうど轟音を立てて列車が通過する。見たのはまたしても上越新幹線のE16系だった・・・。北陸新幹線のE16系はいないのか・・・。
「まもなく11番乗り場に、「つるぎ819号」富山行きが到着いたします。安全柵から離れてお待ちください。」
鉄道唱歌のチャイムが流れ、自動放送が始まる。もうすぐ僕たちの乗る「つるぎ」がやってくるのだ。
「今度はどっちかな。」
「どっちだろうなぁ・・・。」
北陸新幹線に乗る度にやるこのやりとりも既定路線だ。
白いライトを付けた列車がゆっくりとホームに近づいてくる。だんだんと銅のラインが入っているのが見えてくる。この旅では初めてやってきた北陸新幹線塗装のE16系だ。
「キィ、キィ、キィ、キィ、キィ。キュイィ、キュイィ、キィイイィィィッ・・・。」
耳を塞ぎたくなるほど大きいブレーキ音だ。
「ドアが開きます。」
僕たちは「つるぎ」に乗り込む。乗客の多くはスーツ姿のビジネスマンだ。
(僕たちはスーツを着てても、浮いてるなぁ・・・。)
「ドアが閉まります・・・。」
いつの間にか、「つるぎ819号」は若狭小浜駅から離れ始めている。
「本日も北陸新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございます。」
自動放送が始まる前に流れるチャイムが北陸ロマンだった。今乗っているのはW16系らしい・・・。
若狭小浜11時10分→「つるぎ819号」→富山12時51分
一口メモ
快速「わかさライナー」
北陸新幹線敦賀~新大阪間の開業以後小浜線に設定された快速列車。若狭小浜~東舞鶴間で運行され、北陸圏から山陰方面へダイレクトに抜けることができるようになっている。223系5500番台または125系0番台で運用され、全区間でワンマン運転される。
停車駅(基本パターン):東舞鶴~若狭高浜~若狭本郷~小浜~若狭小浜




