表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Journey Episode:2
577/779

577列車 行ったり来たり

 2062年3月19日・日曜日(第12日目)天候:曇り時々雨 西日本旅客鉄道(ジェイアールにしにほん)山陰本線(さんいんほんせん)鳥取(とっとり)駅。

「見てみて。すっごく(ひろ)いよ。」

萌がそう言いながら、両手をいっぱいに(ひろ)げる。ちょっと痛そう・・・。

「無理に(ひろ)げようとするなよ。」

「ハハハ・・・。分かった。」

「そんな顔されたらなぁ・・・。」

それにしても、一面の砂である。緑がなければ砂漠に見える風景が見渡す限り(ひろ)がっている。3連休の中日と言うこともあって、多くの人が靴を脱いで砂を踏みしめて歩いている。僕たちも靴を脱いで歩き回りたいところであるが、靴の中に砂が入るのはごめんである。じゃりじゃりした状態でこの先列車に乗りたくはない。

 とは思っていても、砂というのは向こうから入ってくる。ありとあらゆる隙間に「隙あり」と言わんばかりに入ってくる。

「わっ。」

足を取られそうになった萌が僕の腕を掴む。

「ちょっ・・・。」

「ごめん。」

「はいはい・・・。」

「・・・ナガシィ。」

「んっ。」

「私達ってさぁ、中田島砂丘(さきゅう)って行ったこと無いよねぇ。」

と言う。中田島砂丘(さきゅう)は浜松にある砂丘(さきゅう)だ。規模は鳥取(とっとり)砂丘(さきゅう)ほどではないが、(ひろ)かった・・・か・・・。確かに、行ったことは無いなぁ。地元のものってなかなか行かないものだなぁ。

「行ったこと無いねぇ。」

「これ見た後じゃ中田島砂丘(さきゅう)も可愛く見えちゃうよねぇ。」

「そりゃ、そうだろうなぁ・・・。行きたいって訳じゃないの。」

「えっ、ただ言っただけよ。」

「・・・。」

鳥取(とっとり)砂丘(さきゅう)12時00分→日本交通→鳥取(とっとり)駅12時22分

 鳥取(とっとり)駅に戻り、駅弁を買って列車を待つ。ホームにあがると見慣れたステンレスのディーゼルカーがエンジンをうならせて止まっている。キハ40形のほとんどを置き換えたキハ129系だ。

鳥取(とっとり)13時18分→浜坂(はまさか)14時06分

浜坂(はまさか)14時21分→「快速」→城崎温泉(きのさきおんせん)15時28分

 鳥取(とっとり)を出発し、東浜(ひがしはま)の近くで日本海を臨むようになる。東浜(ひがしはま)西日本旅客鉄道(ジェイアールにしにほん)が運行する観光列車「TWILIGHT EXPRESS瑞風(みずかぜ)2世」の停車駅だ。美しい日本が回を見ることが出来ると言うことで停まっている駅だが、間近で見たら確かに美しいだろう。

 浜坂(はまさか)で列車を乗り換え城崎温泉(きのさきおんせん)へと向かう。

城崎温泉(きのさきおんせん)15時30分→「こうのとり20号」→尼崎(あまがさき)18時14分

 城崎温泉(きのさきおんせん)からは2分の接続で特急列車に乗り換える。福知山(ふくちやま)からは福知山線(ふくちやません)に入る特急「こうのとり号」だ。こうのとりが養生したと言うことを由来にする城崎温泉(きのさきおんせん)を発ち、山の中をゆったりと進んでいく。

 尼崎(あまがさき)で降りるとアーバンネットワークの中心部に放り出された。長らくご無沙汰だった都会の喧噪が僕たちを包む。

 電光掲示板には「新快速18時23分米原(まいばら)方面敦賀(つるが)」の表示が出ている。あの列車に乗っていけば、守山(もりやま)に戻ることが出来る。しかし、僕たちはまだあの列車に乗らない。一旦反対方面の播州赤穂(ばんしゅうあこう)行きの新快速列車に乗り、西明石(にしあかし)で下車する。

尼崎(あまがさき)18時51分→「新快速」→西明石(にしあかし)19時28分

 西明石(にしあかし)駅では山陽新幹線(さんようしんかんせん)に乗り換える。基本、新幹線は並行在来線を高速で移動したことと同義である。そのため、本来なら1枚の切符としては成立しないのだ。しかし、西明石(にしあかし)新大阪(しんおおさか)間には途中に新神戸(しんこうべ)駅という並行在来線に隣接しない駅が設置されている。こういう区間では新幹線は並行在来線とは「別路線」として扱われるため、行って戻るという動作が可能になる。

西明石(にしあかし)19時50分→「こだま748号」→新大阪(しんおおさか)20時14分

新大阪(しんおおさか)21時07分→「はるか54号」→守山(もりやま)21時56分

 新大阪(しんおおさか)駅からは「はるか号」に乗り換えた。「はるか号」には一日2往復米原(まいばら)行きの通勤特急が運行される。休日の新快速ならこの時間は混みづらいが、あまり乗りたくはない。乗るなら席を確約した上で移動したいものだ。

「これでいったんは守山(もりやま)に戻るのね。」

萌が言う。

「ねぇ、ナガシィ。3日ぐらいからずっと家でっぱなしだったけど、どうだった。短い。」

「うーん。短くもなく長くもなくって感じかな。もうそんなに時間経っちゃったのかと思ったけど。」

僕はそう言った。だが、最長往復切符の旅を初めて早12日。残りの有効日数はいつの間にか100日を切っている。案外あっという間なのかもしれない。

「もうそんなにかぁ・・・。」

その時、萌は何かに気付いたようで席を立つ。

「ちょっと電話出てくるね。」

そう言って、デッキに歩いて行った。

 高槻(たかつき)を出発してから、萌は戻ってきた。

「何の電話だった。」

そう聞くと、

(あずさ)が倒れたって・・・。」

走行音にかき消されるくらいの小さい声でボソッと言った。

最長往復切符往路京都(きょうと)駅まで使用

京都(きょうと)守山(もりやま)守山(もりやま)駅窓口で運賃精算の上乗車


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ