570列車 軍港呉への道
2062年3月16日・木曜日(第9日目)天候:曇り時々晴れ 西日本旅客鉄道山陽本線広島駅。
今日から最長往復切符の旅を再開する。ホテルを出て、広島駅に向かったが、窓口の所は混んでいる。
「こちらへどうぞ。」
そう呼ばれるまで少しの時間待っていた。
最長往復切符往路広島駅から使用再開
広島駅からホームを見渡すと全ての車両が銀色のステンレス車体だ。僕らが成人したぐらいは「國鉄廣島」とか呼ばれ、国鉄車両113系、115系、105系の天下だった。少なくとも今は「國鉄廣島」ではないが、もうそろそろ半世紀前に製造された車両の天下になりつつある。ツイッターでは「J西廣島」とか呼ばれているため、広島を走る鉄道車両が総じて古いというのはまた巡り巡ってきたのであろう。
広島9時30分→「快速安芸路ライナー」→呉10時04分
227系「安芸路ライナー」はしばらく山陽本線を東に走る。次の停車駅は海田市と言う。
海田市では山陽本線の線路を飛び越え、橋にあるホームへと滑り込んだ。ここから「安芸路ライナー」は呉線へと入る。
だが、僕らのもっている最長往復切符のこの辺りの経路を参照してみよう。
広島・「山陽本線」・倉敷
こうなっている。どこにも呉線とは書いていない。では、切符を買い足して呉線に入るのかと言われるとそうでもない。ここでは時刻表に載っている「ある項目」を活用するのだ。
JR時刻表の巻末にはピンク色のページがまとまっている。ページ数951ページ(2017年8月版の場合)に運賃計算の特例という項目がある。これは表に示された区間を利用する場合、どちらの経路をとっても短い経路で計算するというもの。そして、その間を利用するとき片道101キロ以上の乗車券ならば、どちらの経路をでも途中下車が出来るとある。その項目に今乗っている山陽本線・呉線の三原~海田市間が含まれている。因みに山陽本線経由ならば同区間は65キロ。呉線ならば同区間は87キロとなる。
持っている最長往復切符は「片道101キロ以上」は簡単にクリアしているし、今回は「最長」にこだわることにして、呉線を通ることにした。これによって僕たちは呉線を利用しているのだ。
列車は左へと舵を切る。右の車窓には多数の護衛艦を臨むようになった。軍港の街呉が近づいてきたのだ。最も近いところに停泊している護衛艦は平べったくなっており、真ん中ぐらいにボコッと飛び出たところがある。あの関係は「ヘリコプター搭載型護衛艦」の1型、きい型護衛艦だろうか・・・。
「安芸路ライナー」を呉駅で降り、窓口へと向かう。
「すいません、途中下車お願いしたいんですが。」
僕は最長往復切符をみせた。
「ああ、はい・・・。」
面倒くさそうだ。こういう塩対応にはもう慣れてきた。九州旅客鉄道管内でもそうだったが、この最長往復切符をまともに確認する駅員は少ない。中には「ちゃんと経路確認しているのか」と思えるほどのスピードで返されることもある。今回もそうなるのかと思っていたが・・・、
「経路では海田市まで使って、海田市からここまでは別に運賃支払いですね。」
と言われる。
「運賃計算の特例で海田市から三原の間は呉線使っても、山陽線使ってもどっちでも途中下車出来るって書いていましたが。」
「・・・少々、お待ちください。」
駅員はそう言うと時刻表を確認する。僕が言った項目を見つけたのか、
「はい、確かに書いてありますね。このまま呉線利用継続されますか。」
「はい。」
「じゃあ、途中下車印押しますね。どこに押しましょうか。」
「ああ、どこでも良いです。」
「・・・はい、ありがとうございます。」
「後、もう一人お願いします。」
最長往復切符往路呉駅で途中下車
「ああ、ビックリした。まさか、利用出来ないと思って。」
「そんなことないよねぇ。」
僕たちは笑い合いながら、呉駅から出た。




