567列車 哀れむほど遅い鉄路
2062年3月14日・火曜日(第7日目)天候:雨時々曇り 西日本旅客鉄道伯備線新見駅。
新見駅でお昼ご飯を食べて、戻る。13時01分発の芸備線備後落合行きのディーゼルカーキハ120系は既にホームに待機していた。30分の間にお昼ご飯を食べて戻ってくるって言うのは少々無謀だったかもしれないと思っていたが、間に合って良かった。
因みに13時01分の列車を逃すと次の列車は16時16分の東城行き。東城は新見~備後落合間にある途中駅で帝釈峡への最寄り駅となる駅だが、東城による予定はない。東城行きの次は18時24分発の備後落合行きであるが、この列車で備後落合に到着してもその先に三次・広島方面行きの列車はない。備後落合からは6時43分発の三次行きまで待たなければならない。しかし、備後落合のまわりは旅館の一つも無い場所である。あんな山の中で夜を越すことは考えられない。よって、これが広島方面行きの芸備線最終列車となる。余談ではあるが、新見から岡山方面に抜け山陽新幹線を利用して広島に行く場合、新見発7時間56分後の普通列車に乗っても広島に到着出来る。
新見13時01分→備後落合14時25分
新見→備中神代の乗車券使用開始
さっき「やくも」で通ってきた道のりをキハ120系は逆走する。次の布原という駅でキハ120系は律儀に止まる。この布原駅は伯備線にある駅なのだが、伯備線の列車は全て停車しない。その代わりに僕らの乗る芸備線の列車が止まる。それだけ利用者の少ない駅なのだ。
新見→備中神代の乗車券使用終了
最長往復切符往路備中神代駅から使用再開
「ナガシィ。」
「んっ。」
「備後落合着いたよ。」
気付いたら、備後落合に到着していた。木次線に乗ったときも来た備後落合駅。前は閑散としていたが、今日は鉄道ファンが来ている。皆大きい荷物を背負い、不釣り合いな駅に停まるレールバスにカメラを向けている。
僕たちも今まで乗ってきた列車から降り、反対側に止まっているキハ120系に乗り換えた。この辺りはキハ120系しか走っていない。それだけこの辺りは鉄道での移動が定着していない証拠でもあろう。
冬季運休が続いていた木次線出雲横田方面から備後落合にやってくる列車と乗客を待って、芸備線三次行きの列車は発車する。
備後落合14時43分→三次16時03分
車内はほとんど青春18切符を使って、ローカル線旅を楽しんでいる人たちだろう。ボックスシートとロングシートの隅は全て人が収まっている。車内では立っている人も降り、芸備線の風景を眺めている。
「・・・。」
僕はスマホを取り出して、GPSのスピードメーターアプリを起動する。GPSを測位して表示されたスピードは36キロだ。そのスピードはみるみると落ち24キロを表示する。
「ゆっくりだねぇ。」
「・・・今外見たら、たぶん面白いことがあるんじゃない。」
僕はそう言いながら、外を眺めてみる。だが、僕が思った風景は広がっていない。席を変え反対側にやってくるとその風景が見えた。鉄道の隣には道路が走り、車が悠々時は120系を抜いていく。こういう風景は2018年3月末に廃止された三江線に乗って以来だ。
「萌、おいで。」
「見ないでおくわ。ナガシィが前に「哀れむほど遅い」って言った光景を見せられるだけでしょ。」
という。見ない方がいいということには同意だ。
三次駅でキハ120系を降りる。今度は山陰本線で乗ったキハ129系に乗って広島に向かう。
三次16時09分→「快速みよしライナー」→広島17時34分
快速列車である「みよしライナー」は液を次々と飛ばす。顔だけで考えれば、関西圏の新快速に乗っている気分になる。
最長往復切符往路広島駅で途中下車
広島に到着する。時間は17時30分を少し過ぎたぐらいだ。
「萌。晩ご飯にでもする。」
「広島来たんだから、お好み焼き食べようよ。」
「お好み焼きかぁ・・・。どうする。大きいの頼んで二人でつつく。」
「そうねぇ。そうしよう。そうと決まれば、早く行こう。お店が混んじゃわないうちに。」
「そんなに焦らなくても。お店は逃げてかないって。」




