562列車 九州往路終了
2062年3月12日・日曜日(第5日目)天候:晴れ 九州旅客鉄道日豊本線南宮崎駅。
南宮崎14時29分→「にちりん18号」→大分17時40分
南宮崎からは特急列車に乗り換え、小倉を目指す。ここから一気に日豊本線を北上していくのだ。
列車が都農を出発すると車窓の右側に高架橋が現れる。高架橋の上にはソーラーパネルが設置されている。昔、ちまたではやったメガソーラーという設備だ。今は機能停止しているのか、荒廃しているのが車内からでも分かる。
「アレが元祖リニア実験線。」
萌が小声で聞いてくる。
「そうだな。あれから今のリニアが始まってるんだな。」
確かに、リニアの歴史はここから始まっているのだが、この実験線が東海道新幹線の鴨宮実験線ほど有能だったかと言われるとそんなことはないだろう。さっきから「にちりん」の右側にあるこの高架橋は遠目から見てもアップダウンがないことが分かる。ほぼ同じ高さを一直線に結んでいる。しかし、現在走っているリニアには急勾配も含まれる。ここまでアップダウンが無いところと言う場所は少ないのだ。
「ここのリニア実験線はあんまりなぁ・・・。」
「あんまりって。」
「いやさ、あんまり実験線としてはいいものじゃなかったって事。短いし。」
まぁ、実験線としては不完全と言わざるを得ないものだったが、リニアの源流を生むには十分だった。現在僕たちが時速500キロでの移動を享受出来るのはこういうもののおかげであると言うことは忘れてはならない。
「この実験線って今はこうなってるけど、どうなったんだっけ。」
「時速500キロ超は記録出来たけど、短いし、実験線としては不十分だし、車両が燃えたりしたりで、結局辞めたって感じ。」
「選ばれた理由は田舎だったからでしょ。狩勝実験線みたいに近くの理解ある人たちばかりに恵まれるとは限らないから。」
「まぁな・・・。」
大分17時45分→「ソニック52号」→小倉19時03分
大分で特急列車を「にちりん」から「ソニック」へ乗り換える。小倉まで「ソニック」に高速で運んで貰い、小倉からは関門トンネルで本州に渡る。
小倉20時02分→下関20時16分
今関門トンネルを通っているのは電車ではない。YC1系というディーゼルカーだ。これには蓄電池と電気モーターが搭載されており、走りは電車そのものだ。「キィィィン。」というモーター音を聞きながら、関門トンネルに入った。
「次に戻ってくるのは6月。」
「だな。」
「それまでじゃあね、九州。」
関門トンネルを抜け、本州に入る。
「まもなく、下関。下関です。下関終点です。どなた様もお忘れ物の無いようお降りください。乗車券、運賃は駅係員にお渡しください。」
最長往復切符往路下関駅で途中下車
一口メモ
九州旅客鉄道YC1系
現在は415系0番台・1500番台に変わって下関~門司間の運用についている。非電化対応の車両で415系を置き換えたため、九州旅客鉄道からは交直流の2電源に対応した車両は製造されていない。




