553列車 嬉野温泉を通過
2062年3月8日・水曜日(第1日目)天候:晴れ 九州旅客鉄道九州新幹線博多駅。
荷物を置いたままホテルから出て、博多駅へと向かう。時間は8時10分を過ぎたところである。駅までの道のりは歳を取った僕らの足でも5分とかからない。出発する列車は「あかつき621号」長崎行き。九州新幹線長崎ルートを通る列車では関西圏からの始発列車になる。
博多→新鳥栖(かえり)(九州新幹線経由)を使用開始
改札口を通り抜け、新幹線ホームへとあがる。電光掲示板には8時36分発「あかつき621号」の表示が見える。
博多8時36分→「あかつき621号」→諫早9時38分
「あかつき621号」は定刻で博多駅を出発する。それからしばらくは博多南線との供用区間を走る為、あんまりスピードを上げない。また、新鳥栖で鹿児島方面行きの九州新幹線とも分かれる為、博多総合車両所を過ぎてもあんまりスピードを上げていかない。GPSのスピードメーターアプリも160キロを少し超えるぐらいのスピードを表示するばかりでそれ以上のスピードを計測することはなかった。「あかつき号」の名誉の為にも言っておくと、これはトンネル区間が多い為だろうな・・・。
トンネルをでてしばらく走ると列車のスピードはさらに落ちる。GPSのアプリは68キロを表示する。
「新鳥栖だな。」
すぐに分かった。列車はポイントを超え、新幹線ホームをゆっくりと通過する。ホームドアで仕切られたホームにいる人はまばらである。あの人達はゆっくり通過していく新幹線を見て何を思っているのだろうか・・・。
博多→新鳥栖(かえり)(九州新幹線経由)の使用終了
若狭小浜→嬉野温泉の乗車券新鳥栖駅から使用再開
「切符の拝見をいたします。」
スマホの画面に表示されるスピードに見入っている間にいつの間にか検札が来ていたらしい。博多から使っている乗車券、若狭小浜から使っている乗車券、「あかつき621号」の特急券、そして最長往復切符を車掌に渡す。こういう特殊な切符を買うと乗車券と特急券の数が増える。
「こちらの切符は回収いたします。」
車掌はそう言うと博多からの乗車券を回収し、他の切符に判子を押す。
「こちらの切符には判子は・・・。」
車掌はそう言いながら、最長往復切符を提示する。僕がどういう旅客かというのはさっきの特急券で明らかなはずだが・・・。
「お願いします。ああ、あと妻のも。」
「畏まりました。」
入鋏印と書かれた場所に今日の日付の入った判子が押され戻ってきた。まだ正式な使用開始ではないが、この列車は嬉野温泉を通過する。嬉野温泉で判子を押して貰うことが出来ない以上、こうして貰うしかない。
列車は佐賀に到着。客を降ろして、慌ただしく出発する。「あかつき」はN700Zの加速を利用して、すぐさま260キロ近いスピードで駆け抜けていく。
「ただいま肥前山口駅を通過中です。」
「ただいま武雄温泉駅を通過中です。」
駅通過の度に車端部にある大きな電光掲示板に文字が流れる。嬉野温泉は次である。
「ここまで来ちゃったね。」
「ここまでって、まだ始まってもないよ。」
「そうだけど。何か最長往復切符をするってすごくこの世の旅って感じがしないのよ、私。」
「この世のものだから安心しなよ。」
「・・・そう感じるってだけの話。」
車窓の右側に嬉野温泉の街をのぞむようになる。すると街を覆い隠すように新幹線のホームが現れた。
「ただいま嬉野温泉を通過中です。」の文字が電光掲示板を流れていった。
若狭小浜→嬉野温泉の乗車券使用終了
最長往復切符の使用開始
一口メモ
九州旅客鉄道九州新幹線長崎ルート
新鳥栖~長崎間を結ぶフル規格新幹線。正式名称は上記の通りであるが、時刻表などでは利用者への配慮から「長崎新幹線」が積極的に使われている。整備新幹線として整備が完了すると、並行在来線は九州旅客鉄道から経営分離される方針であったが、佐賀県がそれに難色を示していた為、全線開業は最も遅い。現在佐賀県内を通る在来線は佐賀県が整備費の一部を負担することで九州旅客鉄道から経営分離しないという事で決着。全線フル規格での開業に至るという経緯を持つ。




