549列車 レトロ系新幹線駅
2062年3月5日・日曜日(第-2日目)天候:曇り 西日本旅客鉄道山口線新山口駅。
貴婦人の煤に包まれた為、僕らは何度もスーツをはたく。こんな事で煤が取れるとも思わないが、やらないよりはましだろう。17時30分。「SLやまぐち号」は定刻で新山口駅に入線した。
「着きました。」
35系客車から降りると萌が言う。
「そうだね。」
僕は「SLやまぐち号」の入った山口線のホームを見る。ホームの床は昔のホームを模したデザインがなされている。駅名は「りほごお」と行書で書かれている。新山口ではなく小郡となっているのは新山口駅がもともと小郡駅という名前だった為だ。ホームに入っている蒸気機関車とそれに続く旧客がそれに花を添える・・・のだが、やっぱりこういう所が凝っているとくると屋根上にあるエアコンは似つかわしくない。だが、そんな理由を並べたところで今はエアコンがないと無理か、気候的に。
「ナガシィ。撮り鉄のみんながはけたら、写真撮り行こう。」
僕も萌の意見には同意だ。貴婦人を労っとこう。
若狭小浜→嬉野温泉の乗車券新山口駅で途中下車
ご飯を食べでから、山陽新幹線のホームにあがる。乗る列車は18時58分発の「のぞみ45号」博多行き。リニア「ふじ45号」からの接続便だ。
「まもなく12番乗り場に18時58分発、「のぞみ45号」博多行きが12両編成で到着します。黄色い線までお下がりください。この列車は前から1号車、2号車の順で一番後ろが12号車です。グリーン車は7号車の後ろ寄りと8号車、自由席は1号車から3号車です。この列車は全席禁煙となっております。お煙草を吸われるお客様は喫煙ルームをご利用ください。普通車の喫煙ルームは3号車、11号車。グリーン車の喫煙ルームは8号車です。」
自動放送が告げる。それが終わる頃、東京方に白いライトが見えるようになる。白地に窓下の青いライン。いつものカラーリングのN700Zだ。
新山口18時58分→「のぞみ45号」→小倉19時16分
小倉駅で「のぞみ45号」から降り、日豊本線の特急「ソニック」に乗り換える。
小倉19時41分→「ソニック49号」→別府20時51分
「ソニック」は右へ、左へ車体を傾け、素晴らしいスピードで日豊本線をかけていく。別府へは21時前に到着。明日は別府のあたりでゆっくりと1日過ごす予定だ。明日は旅行という名の戦争の間にもうけられた休息の日である。
若狭小浜→嬉野温泉の乗車券別府駅で途中下車
「やべぇ、やべぇよ。」
「常陸兄うっとうしい。少し黙って。」
「稲穂はやけに冷静だな。」
「・・・。」
稲穂からの回答は返ってこない。ふと顔を上げると稲穂と目が合う。
「ちゃんと勉強しろ。お兄。」
「分かってる。」
とは言っても・・・。クソ、おじいちゃんとおばあちゃんの旅行に付いていくためには、このテストで満点取らないといけないなんて・・・。お父さんも無茶なこと言うぜ。
「明日からテストだって言うのに・・・。」
「そう思ってるのはお兄だけじゃない。」
「・・・。」
二人の邪魔にならないようにゆっくりとドアを閉める。我が息子と娘は頑張っているらしい。
「・・・。」
「光ちゃん。何して・・・。」
ウチは亜美に対して、口の前に人差し指を立て「静かに」とのメッセージを送る。その後、手招きをして「こっちに来て」と口だけを動かす。
自分たちの部屋に来てから、ウチは口を開く。
「亜美。ゴールデンウィークの予定、お父さん達に早めに出すように言っといて。」
「えっ。満点でないと行かせないんじゃなかったっけ。」
「頑張ってるからな。それに、常陸も珍しく一夜漬けじゃないんだろ。」
「分かったわ。じゃあ、お父さん達には頃合いを見計らって言っとくわね。」
「ああ、頼む。」
一口メモ
九州旅客鉄道887系
日豊本線の特急「ソニック」向けに製造された制御式振り子付き特急型電車。九州旅客鉄道があえて高価な振り子式車両を投入したことに周囲は驚いたが、それだけ「ソニック」が重要な特急列車であるという裏返しでもあろう。6両編成で883系同様車体は綺麗な青一色である。




