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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Wakasa-Obama→Uresino-Onsen Episode
546/779

546列車 奥出雲タクシー代行

 2062年3月4日・土曜日(第-3日目)天候:曇り 西日本旅客鉄道(ジェイアールにしにほん)木次線(きすきせん)備後落合(びんごおちあい)駅。

備後落合(びんごおちあい)9時20分→「タクシー代行」→出雲横田(いずもよこた)10時22分

 タクシーは備後落合(びんごおちあい)駅を出発し、国道に入る。除雪された道をタクシーは軽快に走っていく。さっきまでゆっくり走っていたキハ120系とは大違いだ。

(このあたりは本当に車の方が便利なんだな・・・。)

思わざるを得ない。

 右側の車窓から木次線(きすきせん)の線路が近づいてきた。線路上には雪はなさそうだが、今ここに列車は来ない。このあたりは木次線(きすきせん)の中ではかなりの豪雪地帯で冬季は列車運行そのものを辞めてしまう。そうなってしまうと普段使っている人が困るのではないか。そう思う人は少なくないだろうが、それをしてもいいくらい利用者がいないと言えば、この路線の利用状況を推測出来るだろう。今乗っているタクシーに乗っているのは運転手さんも含めて3人だ。

木次線(きすきせん)を利用する人って少ないんですか。」

(もえ)が聞く。

「いねぇよ、そんな人たぁ。」

一言だった。

「みんな車持ってから、電車でどっか行くって感覚がねぇんだ。」

そうだろうなぁ・・・。僕は運転手の話を聞き流した。木次線(きすきせん)出雲横田(いずもよこた)備後落合(びんごおちあい)間は1日に3往復運行される。備後落合(びんごおちあい)行きは7時58分、13時09分、15時52分(いずれも出雲横田(いずもよこた)出発時間)。出雲横田(いずもよこた)方面行きは9時20分、14時41分、17時41分(いずれも備後落合(びんごおちあい)出発時間)。これじゃあ誰も利用しないよなぁ・・・。便利なものが目の前にあるのに便利じゃないものをあえて利用する理由がどこにもないからだ。

「お客さんみたいに遠くから来て乗る人たぁ珍しくないけど、この時期にやってくる人たぁいねぇなぁ。」

「運休してるからですか。」

「さぁな。俺には分からねぇ。」

理由は運休しているからで間違っていないと思うな・・・。木次線(きすきせん)最高のハイライトは出雲横田(いずもよこた)備後落合(びんごおちあい)間にある出雲坂根(いずもさかね)駅の三段スイッチバック。タクシーでは当然そこに到達することは出来ないからな・・・。

 三井野原(みいのはら)駅の隣を通り過ぎ、しばらく走ると大きな橋が見えてきた。

「こいつが奥出雲おろちループって言うところだ。」

と言う。

「ほう・・・。」

「道がループしてるんだ。すごい・・・。」

道がループしているというのは珍しいなぁ。確か、日本全国の中でもここだけだったかな。車はいつもと同じようにぐるぐるとループの中に入り、坂を登る。3分ぐらいで奥出雲おろちループを抜けていった。

 タクシーで移動すること約1時間。タクシーは出雲横田(いずもよこた)駅の駅前に横付けした。

「お客さん、荷物忘れんようにね。」

「はい、ありがとうございます。」

「また来なよ。」

そう声をかけてくれた。

 出雲横田(いずもよこた)からは木次線(きすきせん)のキハ120系に乗った。たらこカラー1色で塗られた気動車は国鉄を思わせる。

出雲横田(いずもよこた)10時28分→亀嵩(かめだけ)10時40分

「ナガシィ。そろそろお昼にしようよ。」

「そうだな。次の亀嵩(かめだけ)で降りてみるか。」

「蕎麦だったっけ。」

「そうそう。」

若狭小浜(わかさおばま)嬉野温泉(うれしのおんせん)の乗車券亀嵩(かめだけ)で途中下車

 約2時間後・・・。

「お蕎麦おいしかったね。」

「本当にねぇ・・・。またくるとき食べたいね。」

「またくるとき有る。そりゃ、最長往復切符で宍道(しんじ)備後落合(びんごおちあい)も通るけど。」

木次線(きすきせん)乗り通したのに三段スイッチバックは見てないからね。そこはちゃんと乗っとかないとね。」

「それもそうね。」

「フォー。」

たらこカラーのキハ120系が近づいてくる。

「またゆっくり旅が始まるわね。」

「まぁ、忌み嫌っても向こうからやってくるからね。それに「嫌よ嫌よも好きのうち」って言葉もあるし。」

「有るね。そう言うの。」

亀嵩(かめだけ)13時12分→宍道(しんじ)14時29分

宍道(しんじ)15時06分→出雲市(いずもし)15時24分

 宍道(しんじ)駅からは山陰本線(さんいんほんせん)の列車に乗り、出雲市(いずもし)駅に向かう。時間は早かったが今日はどこにも行かずそのままホテルに入った。

 夜、滋賀県・・・。

「亜美。」

光ちゃんに私は呼ばれた。

「なぁに。」

「とりあえず、そこに座れ。」

光ちゃんの左隣に私は座る。

「お父さん達から、毎日楽しそうなラインが来てるよ。」

ボソッと言う。

「そう。良かった。」

「それはそうと、亜美。一体いくらお父さん達に投資したのさ。」

「私にとっては雀の涙程度の金額よ。別にいいじゃない。うちの家計には何の影響も及ぼさないわよ。」

「・・・雀の涙か・・・。そんなこと言ってみたいもんだな。本当富豪は違うな。」

「・・・どうしたの。」

「んっ・・・。いや、亜美ばっかりお金出して貰ってるから、あんまり親孝行してる気が無くてね。」

「・・・そんなこと気にしなくていいのよ。光ちゃんは十分親孝行したんじゃない。私との間に子供は7人いるんだから。」

「・・・子孫を残すことが親孝行だってか。」

「もう一つ、光ちゃんと智萌お姉さんがちゃんと生きてるって事でしょ。」

「・・・今日はお父さん達出雲にいるんだよな。」

「そうね。・・・私のことが欲しいの。」

「ッ・・・。欲しいって言ったら・・・。」

「付き合ってあげる。」


一口メモ

奥出雲おろちループ

国道314号線にあるループ線。全長約2300メートルで高低差約100メートルをここでクリアする。


西日本旅客鉄道(ジェイアールにしにほん)木次線(きすきせん)亀嵩(かめだけ)駅(駅ナンバー:E12)

1934年11月20日開業。映画「砂の器」のロケ地として有名である。駅舎内には扇屋というそば屋が入っており、奥出雲そばを食べることが出来る。


西日本旅客鉄道(ジェイアールにしにほん)キハ126系

山陰本線(さんいんほんせん)向け気動車。まだまだ元気。


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