9525列車 馬鹿でした
「あなた馬鹿なんじゃないの。」
そのことを亜美ちゃんに話すと開口一番そう言われた。
「ちょっと軽率だったわ・・・。」
「ちょっとどころじゃないわね。軽率すぎるわ。だいたい、輝君は私達の間じゃ乗り鉄「パステル」で通ってるのよ。彼のエクストリーむっぷりにはいつも感心するもの。」
「エクストリームって・・・。」
極限って意味だったわね。今回も十分エクストリームな旅だったなぁ・・・。
「でも、今回はそんなにエクストリームじゃなかったから何でだろうなぁって思ってたのよ。どおりでパステルさんにしてみればおかしいと思ったわ。」
「えっ・・・。」
「あなたがいたからよ。少しは考えてくれたんじゃないの。」
「・・・そうだったのかな。」
「そうよ。でないともっとキツい行程になっていたわね。間違いなく。」
「・・・。」
私は輝を見た。
「セーラーさんの言うとおりだと思うよ。」
と言った。
「・・・でも、何でまた輝について行こうと思ったんだよ。モズそういうのじゃないだろ。」
光君に言われた。
「ああ。そうね。私はただ思い出が作りたかったのよ。ただね・・・。」
「・・・。」
「電車乗るって私にとっては仕事みたいなものだったから。シンクンと旅行出来て色々と考えが変わるいいきっかけだったわ。」
「・・・そう言ってもらえると嬉しいなぁ・・・。」
「今度は一緒に海外でも行こうよ。」
「海外・・・。」
「あっ・・・。」
亜美が私にも聞こえる声で言う。
「んっ・・・。」
光君はどういう意味なのか分かっていないみたいだ。
「海外ねぇ・・・。僕はさ、海外って言うのは日本国内を行きまくってもう行くところが無いから行くものだと思うんだよね。海外に行くのはまだまだ先だよ。」
「パステルさん・・・。」
「いいじゃん、その前に海外行ったって。」
「いや、日本を回りきった後。日本に何も見るところは無いって言う人は日本のよさを知らないだけ。知らないのを言い訳にしているだけだから。」
「・・・シンクンは色んな日本を見てきてるでしょ。」
「見ただけの所の方が多いんだよ。行かないと。今度は北海道だろ。」
「北海道ねぇ・・・。北海道もいいけど、海外行きたいなぁ・・・。」
「北海道。」
「海外。」
「まぁまぁ、二人とも。」
間に亜美ちゃんが入る。
「熱くなるのはいいけど、パステルさんは女の子の意見も聞いてあげなきゃ・・・。」
「おい、勝手に。」
「でも、パステルさんの言うとおり、日本に何も無いと言って海外に行く人たちは知らないことを言い訳にしてるだけって言うことにも賛同するわ。」
「・・・。」
と言った。つまり、どっちが間違っているは無いと・・・。
「中百舌鳥さん、ちょっと考え方を改めてみたらどうかしら。確かに、今北海道は「はつかり」1本でいけるようになったわ。でも、北海道は本州とは違うわ。行けば必ず「ここは日本なの」という感想を持つと思う。それは日本人の中に同じ日本国内だという先入観がどこかにあるから。一度、その先入観を打ち砕かれてくるのもいいと私は思うわよ。」
「・・・先入観を打ち砕かれるね・・・。」
「私からのお薦めは帯広の方ね。あっちの方が北海道って言う感じがするから。」
「・・・帯広かぁ。」
「そういえば、僕愛国駅とか行ったこと無いなぁ・・・。」
「何それ。」
「昔はやったんだよ。「愛国→幸福」行きってね。」
「へえ。じゃあ、私達も幸福になれるようにお願いしてこようか。」
「いいね。それ。」
「丸く収まったのかな。」
「ええ。二人ともいい夫婦になりそう。」
まだ私達夫婦じゃないぞ。恥ずかしい・・・。
「夫婦なぁ・・・。」
「・・・私達もいい夫婦になりましょう、光ちゃん。」
「えっ。今何か言った。」
「ううん、何も。」
私には聞こえたぞ・・・。




