9519列車 数えるのを諦めた
7月31日。行程6日目。
さすがに6日も家に帰っていないと背負っている鞄の中はどれも一度は来たものばかりになっている。ファ○リーズとかをしても、洗濯に勝るものは無い。そろそろ洗濯したいなぁ・・・。輝の場合そういうことは想定してないかな・・・。それを話すと、
「あっ・・・。ごめん。考えまわってなかったね。」
(やっぱりそうだったか・・・。)
「じゃあ、どうする。今日は熊本から宮崎に行くだけ。明日は宮崎から小倉に行くだけなんだけど・・・。まぁ、もちろん鹿児島に寄ったりしてもいいんだけど。」
「鹿児島かぁ・・・。」
近いところがあるなぁ・・・。
「でも、鹿児島に行くためには隼人から鹿児島か鹿児島中央までの乗車券を別に買い足さないとダメなんだよね。余計にお金がかかる。」
それは余計にお金をかけたくないから宮崎の方へ行っておきたいって事よね。そう考えている間に、輝は時刻表を取り出し、ページをパラパラとめくった。
「これ・・・。」
輝はある場所を指さす。
「今日はこれで宮崎の到着が19時22分。明日の宮崎出発は17時30分の特急「にちりんシーガイア24号」の予定なの。」
「ほぼ一日宮崎にいるの。」
「まぁ、電車の都合で何だけどね。コインランドリーで洗濯している間は動けないだろうけど、それが終わったら半日くらいは自由に動けるんじゃないかな。」
「じゃあ、それで行きましょう。私は電車のことよくわかんないから。」
今日もSL列車からスタートだ。乗る列車は「SL人吉号」。先頭には前にみたのとは確かに違う蒸気機関車がいる。どこがどう違うのかは分からないけど。確か、前の「SLばんえつ物語号」を牽引していたのはC57が立って言う蒸気機関車だったかな。そう思いながら、写真を見て確認する。
「これは・・・。58654形・・・。」
「8620形蒸気機関車435号機。」
「どこにもそんなこと書いてないけど・・・。8600形ってどこから分かるの。」
「8620形ね。これって結構ややこしいんだよ。58654って書いてある先頭の「5」。あれは8620から順番に付番されて、8699まで行った回数を表してるんだ。だから先頭の「5」は「5巡目」って意味。下二桁の「54」は20から順番に数えて35番目って言う意味になるんだ。」
言っていることが全く分からない。でも、ややこしいと言うことだけは伝わった。何でもっと簡単にしなかったのだろうか。
「元々8620形を80両作ったところで81両目は8700の番号になるはずだったんだけど、8700形蒸気機関車は既にあったんだよね。だから、番号重複出来ないから81両目の8620形を「1」8620とすることで解決したんだよ。」
ようは簡単にできない事情があったって事ね。そういう理解でいいのね。
「SL人吉号」も汽笛を鳴らして、熊本駅を発つ。ゆっくりとした足取りで熊本県を南下し、八代駅から山の中へと入っていく。川の流域に沿って建設されたなだらかな線路を右へ左へ車体を揺らして、ゆっくりと走って行く。
途中珍しい橋を渡ったようで、その場所では乗客はしきりに写真を撮っていた。
12時09分人吉駅に到着。
「次の電車は・・・。13時22分・・・。」
何かだんだんこういうのにも慣れてきたなぁ・・・。




