9516列車 シャワーを浴びる為の作戦
「「サンライズエクスプレス」って前乗ったときに遅れてたって言ってた。」
私はそう聞いた。
「そうだよ。この列車に乗っていけば、明日の朝には岡山駅に着けるんだ。」
「夜行バスみたいな電車ね。」
そう言うと、
「夜行バスとは全然違うよ。1万円くらいの特急料金を払えば、横になれることと布団が確約されるわけだからね。」
私が言った同じって言うのは夜に出発して、朝に目的地に着くと言うことだったのだけど・・・。それを言ったら「そこは同じだけど夜行バスと寝台特急を同じって言うな」と言われた。どうも一緒にして欲しくないらしい。
「とりあえず、荷物置く前にやることがあるから。」
と言って、輝はある場所に向かった。そこには多くの人が列を作っていた。
「何、この列。」
「シャワーカードを買ってるんだ。「サンライズ」はシャワー室が付いてるの。そのシャワーを浴びるためにはカードが必要なんだ。さすがに夏場でシャワーも浴びないって言うのは嫌でしょ。」
確かに。だが、私達の順番になったとき、シャワーカードは1枚しか買えなかった。
「はい。」
「えっ、シンクンはどうするの。シャワー浴びれないんでしょ。」
「売り切れたんじゃ仕方ないよ。僕もう一つの方行ってみる。そっちならまだ売ってるかもしれないから。部屋は4号車の2番室だから。先行ってて。」
そう言うと輝は隣の車両へと消えていった。
私は先に部屋に入った。中には二つのベッドがあり、二人で使っても十分な広さがあることが分かる。でも・・・これって・・・。
「お待たせ。」
「ねぇ、シンクン。ここに泊まるのよねぇ。」
「そうだよ。何かあった。」
「あのさぁ、私女の子なんだよ。部屋わけるとかっていう発想はなかったの。」
「・・・あっ・・・。」
「無かったのね。」
「ごめん。」
「そういえばシャワーカードは買えたの。」
「ううん。買えなかった。」
「えっ、じゃあどうするの。私のシャワーカードで二人はいるわけじゃないよね。」
「ああ。それはないから大丈夫。入る前にざっくりやり方は説明するけどね。」
「ありがとう。私、この電車に乗るのも初めてだし、ましてシャワーカードなんて使ったことないから。・・・じゃなくて、お風呂どうする気なのよ。」
「それも大丈夫。さっきシャワーカード買いに行ったときに僕のおじさんと会ったから。おじさんが入ってるところで僕も一緒にシャワー浴びることにしたから。」
考えていることは色々とぶっ飛んでいる。そのおじさんが乗っていなかったら本当にどうするつもりだったのだろうか・・・。
「今日も「サンライズエクスプレス」をご利用くださいまして、ありがとうございます。」
いつの間にか東京駅を出発していたらしい。
「とりあえず、シャワー浴びたら寝よう。」
「シンクン、おじさんと一緒にはいるんでしょ。早く行ったら。」
「まだ行かないよ。1時過ぎたぐらいにシャワー浴びに行くから、先にやり方教えとくね。」
「・・・。」
私は思った、輝のサバイバル術は数多くの乗り鉄の上に培われたものであり、常人ではとうてい思いつかないことを平然とするのだと。
(私付いてきて良かったのかな・・・。)




