9513列車 早く知りたかった
7月28日。行程3日目。今日の出発は10時14分。旅行開始以来最も遅い時間の出発となった。
「今日はどこまで行くの。」
そう聞くと、
「今日は郡山まで行くよ。」
との答え。
「今日もほとんど勉強は出来ないなぁ・・・。」
「また昨日みたいな電車に乗るの。」
「うん。今日は面白いのに乗るから。特に2本目はね。」
2本目ねぇ・・・。かなりもったいぶった言い方をする。確かに、昨日乗った電車は面白かった。語り部のイベントに津軽三味線の演奏。電車内でそういう経験なんてなかなかあるものじゃない。それを超えるという期待をしてもいいのだろうか・・・。
「ああ、でも、あんまり期待はしないで。2本目が面白いのは半分かけだから。」
(なんだよ、それ・・・。)
10時03分。昨日乗った電車と同じ顔をした電車がホームへと入ってきた。濃い茶色に金色の帯が入る3両編成。車内には昨日乗ったような列車と同じように座席が並び、窓はかなり大きい。
「この電車は。」
「電車じゃないよ。ディーゼルカーだよ。快速「リゾートみのり」これで新庄まで行くよ。」
ディーゼルカー・・・。電車じゃなくて・・・。よくよく見てみれば、よく見慣れている伝線が上に走っていないし、電車と思っている車両からはかなり薄いが煙が出ていたりする場所がある。よくわかんないけど、私が通学で利用しているようなものとは明らかに違うみたいだ。
「リゾートみのり」は古川を出発する。しばらく走ると乗っている電車は山の奥深くに入っていく。あたりには木々の緑が広がる。大きな窓はその光景を見るにはちょうどいい。
「これって秋になったら綺麗だろうなぁ・・・。」
「秋は綺麗だよ。紅葉シーズンは一見の価値ありだよ。今回は行かないけど、只見線って言うところを走ってる「リゾートもみじ」と同列でね。」
「へぇ・・・。」
東日本には「リゾート○○」って言う電車が多いのか。鉄道ファンの輝が言うのだから、相当綺麗な紅葉を見ることが出来るのだろう。
「ねぇ、秋になったらその「リゾート・・・」。」
「「リゾートもみじ」。」
「そう。その「リゾートもみじ」って言う電車にも乗せてよ。」
「・・・今回の旅でお金使いすぎてるから、今年は無理だね。1年待ってくれない。その時乗りに行こう。」
「分かった。約束だからね。」
電車はゆっくりと山の中を走っていく。時折、スピードを上げて走ったかと思えば、またゆっくりと走る。それを繰り返して、「リゾートみのり」の終点新庄に到着する。
新庄に到着すると私はあることに気付いた。ホームには見慣れない電車が止まっている。見た目から新幹線かもしれないと言うことは分かるのだが・・・。
「ねぇ、アレって。」
「山形新幹線「つばさ」。ここに停まっているのは正真正銘の新幹線だよ。」
「でも、なんで。」
「ここの「つばさ」と秋田の「こまち」は在来線に乗り入れることが出来るだ。だから、こうやって向こうじゃ見られない光景が広がっているんだよ。」
「・・・。」
「さて、今12時30分だけど。」
「お腹すいた。どこか食べに行こうよ。レストランとか有るでしょ。」
「無いよ。最低でも2キロくらい歩かないと。」
「えっ、そうなの。じゃあ、コンビニ行こう。チェーン店くらい有るでしょ。」
「ああ、レストラン行くよりは近いけど、ちょっと歩くよ。別に、そこのでいいなら駅ナカにあるけど。」
とは言ったけど、やっぱりコンビニはなぁ。あまりにも次に乗る電車まで時間が無いなら、コンビニは避けたいなぁ。
「・・・次に乗る電車って何時。」
「15時00分。まだ2時間30分有るよ。」
「じゃあ、レストランにしよう。そっちの方がいいもん。」
「分かった。本当に結構歩くからな。」
そう言う輝について行く。歩いて分かったことだが、あたりには家とかはあるけど、お店とかはほとんど無い。いや、私が知っているものはほとんど無いと言った方がいいか。
「シンクン・・・。」
「まだ1キロも歩いてないんだけど。」
「もしかして、かなり離れてる。」
「もうすぐ半分くらいだよ。」
「・・・。」
「あっ、今だから言っとくけど、新幹線くるからとか、特急が止まるから何かあるって言う幻想は捨てた方がいいよ。むしろ何もない方が多いから。」
「それ、今言わないで。もっと前に知りたかったわ・・・。」




