501列車 気付いたら帰ってた
実感がなかった。だが、ウチは学校が終わるとすぐに上野駅にみどりの窓口に走っていた。ウチは東京都区内→守山の往復券を買い、学生服のまま東京から新幹線に乗って米原に行っていた。
新幹線を米原で降り、新快速に乗り換えようとしたが、僅差で新快速は出発してしまった。するとウチはスマホを取り出し、家に電話をかける。
「もしもし、光。」
その声にウチの気持ちは更に高鳴る。
「ウチ受かった。」
そう言っていた。
「はっ・・・。受かったってどこに。」
「東海旅客鉄道。東海旅客鉄道に受かった。」
「・・・おめでとう。」
お母さんはそう言ってくれた。
「ありがとう。」
「今度帰ってきたらお祝いしないとね。」
「19時57分発、高槻から快速姫路方面加古川行きは・・・。」
「えっ、今光こっちに来てる。」
ホームのアナウンスが向こうにも聞こえたのだろう。ウチはそれに「うん」と答える。
「か・・・帰ってくるならちゃんと前もって言いなよ。ビックリするじゃない。」
「ごめんなさい。でも嬉しくて。」
「・・・今どこの駅にいるの。米原。迎え行ってあげるわよ。」
「今米原にいるよ。19時57分の列車に乗って帰るね。」
「分かったわ。お父さん迎えに行ってから迎えに行くからちょっと守山で待っててね。」
「うん。」
ウチは電話を切ってから225系に乗り込んだ。それで守山まで行くと20時35分に到着する。少しの間守山駅近くで待っているといつものレヴォちゃんが迎えに来た。運転席にはお母さんが座り、助手席にお父さんが座っている。
「ただいま。」
ウチはそう言ってレヴォちゃんに乗り込む。
「お帰り。おめでとう、光。」
「おめでとう。よく頑張ったね。」
お父さん、お母さんの順番で「おめでとう」と言ってくれた。
「ありがとう。」
「でも、前もって言ってよね。」
「そうは言っても、嬉しいんでしょ。」
「ちょっと・・・。」
「まぁ、光日曜日には帰るんだよねぇ。」
「うん。」
「明日にでも焼き肉しに行こうか。いいでしょ。そのぐらい。」
「いいわよ。ナガシィ、またちょっと我慢してね。」
「えっ、そこから出すの。」
「いいでしょ。」
「・・・僕いつになったら旅行行けるのかなぁ・・・。」
「しばらく先。頑張ってね。」
「はいはい。」
わいわい話していたため、家に着くのはあっという間だった。ウチは車から降りて、家の中に入る。智萌が出迎えてくれるのもいつも通りだった。
「・・・。」
「ナガシィ・・・。」
「んっ。」
「胸苦しくない。」
「ああ。ちょっとね。」
「・・・。」
「おかしいねぇ・・・。もう諦めたはずなんだけど・・・。今でも、就活とかそういう話を聞くと心臓が・・・。誰かに握りつぶされるかのように痛くなる・・・。」
「諦め切れてないんじゃないかな。・・・ナガシィ、私達のために我慢してる。」
「そりゃね・・・。」
「・・・今からでも目指してみたら。」
「はっ・・・。あんなのフィクションだから出来ることだよ。そんな風にならないことくらい知ってるよ。」
「・・・。」
「まぁ、行ったとしても色々と有ってもうやれてなかったかもしれないしね。」
「そう言い聞かせてるだけじゃないの。」
「・・・こんな話、終わりにしよう。萌。」
「・・・そうね。今は光のことお祝いしてあげよう。ねっ。」
「自分からふっといて・・・はいはい。」




