487列車 帰り際
5時50分に大垣に着き、列車を乗り継いで守山駅に到着する。時間は7時00分だ。階段を上がって、窓口で18切符を見せて、改札の外に出た。お母さんもう迎えに来ているだろうからなぁ・・・。早く行こう。そう思って、最短ルートで階段のほうへ行こうとする。
「わっ・・・。」
「あっ、ごめんなさい。」
階段の陰から現れた人にぶつかりそうになり、とっさに謝った。
「って・・・光君。」
「えっ・・・。あっ、モズ。」
久しぶりに見る顔だった。
「久しぶり。何、こっちに帰ってきてたの。」
「ああ。今着いたところ。」
「今ッ・・・。今着いたの。」
「うん。昨日夜行に乗って、今日の朝、大垣からずっと乗り換えてきて、今着いたところ。」
「ハァ・・・。鉄道ファンは皆やることなすこと常人では思いつかないわね。」
モズは少し呆れ気味だ。
「ちょ・・・ちょっと待って・・・。」
息を切らしながら、階段を上がってくる人がいた。
「輝君、遅いよ。私は早く行きたいんだけど・・・。」
またしても久しぶりに見る顔だ。輝は階段を上がってくると両手を膝に付き、いかにも疲れたというようなそぶりをみせる。ふっとあがった顔を見ると中学を卒業した時よりもどこかたくましさが増している。
「永島君。久しぶり。」
「今日の朝帰ってきたんだって。」
「今日の朝かぁ・・・。「ムーンライトながら」にでも乗ってきたの。」
「まぁ・・・。そういえば、輝とモズはこんな時間に駅に来て何してるの。」
「私はこれから部活の練習。」
とモズ。
「僕はこれから大回りしながら勉強。」
と輝が言う。
「へぇ・・・。でも、大回りで勉強って。」
「結構はかどるよ。電車の中も使いよう・・・だよ。どうせ家にいたって勉強はしないし、パソコン、スマホいじってばっかで勉強なんて出来ないから。」
そういえば、亜美も国内旅行取扱管理者の試験勉強を乗り鉄している間にやったって言ってたなぁ・・・。アレで結構勉強がはかどるとは聞いているけど、それは個人的な感覚に寄るところであり、全員が全員電車の中で勉強がはかどると言うことではないか。
「ああ。なるほどねぇ・・・。」
「あっ、そうそう。光君LINEとかツイッターとかやってる。もしやってるならアカウント教えて欲しいんだけど。」
そういうとモズは輝のほうを見て、
「そのくらいいいでしょ。アカウント教えて貰うくらい。」
「教えて欲しいなら教えて貰えば。別に何も言わないし。それに新快速はまだ発車しないから。」
時間はまだ7時05分くらい。次の新快速は7時16分であるため、まだ大丈夫だ。
「ああ。ちょっと待ってて・・・。」
ウチはスマホを取り出し、中百舌鳥とLINEを相互登録する。その後、輝とも相互登録した。
「教えてくれて、ありがとう。光君、また会おうって言う前に東京行っちゃうんだもん。ずっとどう連絡取ろうか困ってたんだよねぇ。」
「まぁ・・・。僕はあんまり永島君と連絡取られると困るけどねぇ・・・。」
明後日の方向を向きながら、輝がつぶやく。
「妬いてる。」
「妬いてない・・・。」
「フフフ・・・かわいい。」
輝は顔を赤くする。
「アカウント教えてくれてありがとうね。光君。」
そういうとモズはウチのほうを見ながら、改札口の方へ歩き始める。
「輝君、早く来てくれないと私が困るんですけど。」
「はいはい・・・。」
そう言うと輝も改札口の方へ歩き始める。
「じゃ、また会おうね。永島君。」
「うん。ウチ、学校始まるまでこっちにいるから、もし機会があったら遊ぼうな。」
「・・・じゃあ、今誘ってもいいかな。年が明けてから乗り始めに行こうと思うんだけど、その時一緒にどう。勉強会でもやろうよ。」
「オッケイ。」
「輝君。」
「ああ。ごめん。じゃ、後でLINE送るから、それで予定つめようか。」
「分かった。」
輝の後ろ姿を見送り、ウチは階段を降り始めた。




