477列車 三島
8月の後半。ウチは青春18切符で東京からの帰路に就いた。何で滋賀県からじゃ無いのかというと、バイトの関係でこうなってしまっただけだ。本来ならもうちょっと長く滋賀県には痛かったが、バイトをサボるわけにも行かなかったのだ。お父さんもお母さんももうちょっと長くいればいいのにと言ってはくれたけど、まぁ仕方ないね。
金町から東京メトロ千代田線を経由し、上野駅にやってきた。いつもはここから学校へ行っているが、今日は学校には行かない。
ウチはSuicaを持ってホーム上にある自動券売機に行った。上野東京ラインホームにある自動券売機はSuicaをタッチする箇所と画面がある、改札口の外で見るものとはまた違った自動券売機だ。この券売機で買うことが出来るのは東京首都圏の中距離列車にはほぼ全てに連結されている自由席グリーン券だ。いつもは乗らないが、今日は奮発してみた。
Suicaを置き、券売機を操作して「上野→熱海」の乗車データを入力する。入力が終われば、後は4号車か5号車に連結されているグリーン車に乗れば良い。乗る列車は13時30分発快速「アクティー」熱海行き。これに乗れば15時30分に三島に着くことが出来る。
列車に乗ってみた感想は「やっぱり、特急の座席と比べちゃダメだな」と言うことかな・・・。
「次は東京、東京。降り口は右側です。中央線、京浜東北線、山手線、横須賀線、京葉線、新幹線、地下鉄線はお乗り換えです。The next stop is Tokyo.」
あの「Tokyo」の部分だけ何で日本語っぽい読みになるんだろうなぁ・・・。それはいつも疑問である。
気付くと列車は早川を出ていた。
(あっ、結構グリーン車って快適だなぁ・・・。)
だが、初めての自由席グリーンはほとんど寝て過ごしてしまった・・・。980円無駄じゃ無かったと思うけどなぁ・・・。
15時30分。定刻通りに三島駅に到着した。
「ふぅ・・・。」
東海道本線で下ってくるって言うのも結構疲れるなぁ・・・。
「へぇ・・・。315系かぁ・・・。いいものに乗ってきたわね。」
「亜美。」
「東海旅客鉄道の新しい通勤電車。炭化ケイ素素子VVVFインバーター制御車。211系5000番台ないし6000番台の老朽置き換え車両・・・。」
「315系かぁ・・・。」
とは言っても315系の顔は313系とうり二つ。車体合金にマグネシウムを使ったり、車内照明をLEDにしたり、LCDが付いていたりするのは新型車両だとよく分かるが顔がうり二つという所はいかにも東海旅客鉄道らしい。
「乗降よし。ドア閉。」
315系の発車を見届ける。
「ここで待っていれば、本当に光ちゃんのおじさんが来るのよね。」
「うん。まだ16時まで30分ぐらいあるけど、大丈夫じゃないかな。」
だが、ウチには少し気になることもある。
「亜美、ここまでどうやって来たの。」
「今朝、新宮から出てきたのよ。「南紀」に乗って名古屋まで行った後、浜松から三島までの切符を買い足して、名古屋から「こだま」に乗ってやってきたの。紀伊半島は和歌山の首長が西日本旅客鉄道にお金落としてくれないから、かなり不便になったのよね。私が前に紀伊半島回った時よりも不便になったんじゃないかしら。」
亜美はぶつぶつ言った。それにしても、新宮からここまでやってきたんだな。新幹線と特急がなせる技か・・・。
三島駅のロータリーにやってきたが、まだおじさんたちは来ていないか・・・。
「いないのね。おじさんの車。」
「うん・・・。でも、もうすぐやってくると思うよ。」
「それは勘・・・。」
「ううん。」
「そう・・・。」
言葉数は多くない。時間が流れ16時となった。だが、おじさんの車はまだ来ない。
「もう16時過ぎてるわよ。」
「うーん、仕事長引いてるのかな。」
そう言った時、おじさんの車がロータリーに入ってきた・・・って。インプ○ッサ。
「古そうな車・・・。」
亜美の一言が耳に届く。
運転席から淳平おじさんが出てきた。スーツ姿だ。
「悪い。ちょっと遅れた。ごめんな。」
「ううん。気にしてないよ。」
「全く、人を待たせておいて遅れるなんてね。一社長としてどうなのかなぁ。」
真琴おばさんもいたのか。二人ともスーツ姿って事は本当に仕事帰りなんだな。
「話長そうな重役さんの話をうまく交わしてきた俺のテクに少しは感謝しないんですか・・・。」
「はいはい。感謝してますよ。社長さん。」
「・・・。」
(社長と秘書じゃなくて、夫婦ね。)
「あの、おじさん。」
「ああ。ごめん。荷物はトランクに入れておいて。高速飛ばして帰るからな。」
「二人とも覚悟しといた方がいいよ。私の旦那は高速に入ると人が変わるからね。」
真琴さんが言うこと怖いんだけど・・・。




