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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Hikari Episode:3
462/779

462列車 ・・・。

 4月1日。

「さて・・・。」

ウチは荷物を持って立ち上がった。今日、この家を離れ一人東京(とうきょう)に行く。その日が来たのだ。

(ひかり)、ちゃんと準備できた。」

「大丈夫だよ。お母さん。」

お母さんを見てそう答える。隣には寂しそうな顔をしている智萌(ともえ)がいる。

「・・・(ひかり)、本当に行っちゃうの。」

ポツリと言った。

「ただ東京(とうきょう)行くだけなんだけど・・・。ちゃんとゴールデンウィークには戻ってくるから。安心しろよ。」

ウチは智萌(ともえ)に行った。あんまり寂しそうな顔されると困るなぁ・・・。

「・・・お父さんは。」

「もう仕事で出掛けたわ。頑張ってこいって言ってたわよ。」

お母さんがそう言った。そうなんだ。お父さんは仕事が優先だからなぁ。

 ウチは手で荷物の確認をした。ズボンのポケットに切符が入っていること、次に東京(とうきょう)に持っていくバック。それらを手で押さえながら、確認する。

「うん、持ち物はオッケイ。」

「じゃあ、行こうか。智萌(ともえ)はどうする。留守番してる。」

「私も行く。」

お母さんはそれを聞くと下に降りていって、車を出す準備をした。ウチも下に降りていくと外からレヴォちゃんのエンジンがかかった音が響く。

 車で守山(もりやま)の駅まで行く。時間はただいま9時30分。乗る列車は米原(まいばら)方面行きの新快速(しんかいそく)だ。この先ウチは新幹線ではなく在来線で東京(とうきょう)まで向かう。お父さんが買った青春18切符を貰っているし、お金をあまりかけない旅行をするにはちょうどいい。持っている18切符の残りは3日分。途中の浜松(はままつ)でおじいちゃんたちの家に立ち寄りながら向かおうかと思っている。

「次に来る米原(まいばら)方面行きの新快速(しんかいそく)は・・・9時55分かぁ・・・。ごめんね、(ひかり)。もうちょっと早く来れば良かったわね。」

新快速(しんかいそく)かぁ・・・。その前に米原(まいばら)方面へ向かう列車は9時49分発の米原(まいばら)行き。どう考えても能登川(のとがわ)ぐらいで9時55分発の新快速(しんかいそく)に抜かれるよなぁ。

「いいじゃん、別に。お母さんは(ひかり)にさっさと東京(とうきょう)に行って欲しいの。」

「そんなわけ無いでしょ。お母さんだって本当は東京(とうきょう)に行って欲しくないわよ。」

「・・・。」

何やってるんだか・・・。

「お母さん、智萌(ともえ)・・・。」

「あっ。(ひかり)浜松(はままつ)にはおじいちゃんが迎えに来てくれるって言ってたわよ。だから、ちゃんとおじいちゃんたちに何時に浜松(はままつ)に着くかLINEで連絡しなさいよ。」

「うん、分かった。」

「1番乗り場に新快速(しんかいそく)野洲(やす)行きが12両で到着します。足下白色三角印1番から12番で2列に並んでお待ちください。1番乗り場に列車が参ります。ご注意ください。」

流れたアナウンスは1本前の野洲(やす)行き新快速(しんかいそく)のものだ。野洲(やす)守山(もりやま)の一つ隣である。これに乗っても隣の駅までしか行けない。

「あっ・・・。」

入線してきた車両を見てウチは小さく言った。

「223系かぁ・・・。乗るの。」

お母さんが聞いてきた。でも、ウチはそれに首を横に振る。乗っても隣に行くだけだ。まぁ、1000番台だったら飛び乗ったかな・・・。

 だが、この列車に乗らなくても乗る列車はあと10分ほどでやってくるのだ。

 10分過ぎ、その列車が守山(もりやま)に入線した。車両は前の新快速(しんかいそく)と同じ223系。

「行ってらっしゃい。」

短くお母さんが言う。

「行ってきます。」

ウチもそれに短く答えた。

 ドアが開き、降りる客を待って、ウチは車内に入る。

「気をつけてね。」

「うん。」

ちらっと智萌(ともえ)を見たが、智萌(ともえ)はお母さんの陰に隠れてこっちを見ようともしない。

「おい、ちゃんと送り出してやれ。」

お母さんの言葉に智萌(ともえ)がなんと返したのかはだいたい察しが付いた。お母さんの腕を握る手に自然と力が入る、そんな気がした。

新快速(しんかいそく)米原(まいばら)方面長浜(ながはま)行き、発車いたします。ドア閉まります。ご注意ください。」

車掌がそう言った時、智萌(ともえ)の右親指が上がる。グッドラック・・・かな。車掌の予告通り、ドアがいったん閉まりかける。だが、ちょっと閉まったまた開いた。誰か駆け込み乗車でも試みようとしたのかな・・・。

「ドア閉まります。」

仕切り直しで今度はちゃんとドアが閉まった。

「ヒュゥゥゥゥ。」

ブレーキが緩解され、新快速(しんかいそく)守山(もりやま)のホームを離れ始める。新快速(しんかいそく)守山(もりやま)のホームの橋を通り過ぎた時、何かたがが外れたように涙がこぼれた。

「次は野洲(やす)野洲(やす)です。野洲(やす)の次は近江八幡(おうみはちまん)に止まります。」


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