457列車 Challenger
10月15日。僕らは米原に来ていた。こういう所にお父さん抜きで来ると良いなぁと言いそうだが、お父さんは仕事だから仕方ない。
さて、鉄道ファンで米原に来るというとある場所が思い浮かぶ人が多いのでは無いだろうか。東海道新幹線を左側の車窓を見ていると米原を通過後(または通過直前)に鉄道車両が3両おいてあるのが見えると思う。アレは米原にある風洞実験の施設である。その風洞実験施設は年に1回程度一般公開される。公開は鉄道の日(10月14日)前後で、今年は10月15日に一般公開となった。
「光、おいで。」
「・・・お母さん・・・。」
何かいつもより騒いでいるような・・・。
一般公開される時とあって、見に来ている人は鉄道ファンがその大半を占めているようだ。そういう人たちが見に行くのはやはり鉄道車両なのだ。
「WIN350。」
お母さんは紫色の新幹線に寄っていった。アレは500系900番台。かの有名な500系新幹線の試験車両だ。だが、500系とは似ても似つかない。車体も円筒形では無いし、ロケットを彷彿とさせる先頭形状でも無い。鉄道ファンの目から見てもこれが500系だと言われても、違和感を覚えるだけである。
「すごいよね。これで350キロ出したんだよ。」
「うん・・・。」
そうそう。ウチも最近まで知らなかったんだけどWIN350のWINは「勝つ」では無く「West Japan Railway’s INnovation for the operation at 350km/h.」の略。意味は「350キロ運転のためのJR西日本の革新的な技術開発」である。
「ほらほら、二人とも。そこ並んで。」
「お母さん子供みたいだね。」
智萌がウチにそうささやく。
「もう、二人とも並んでよ。写真撮れないじゃない。」
「子供のお母さんにつきあおう。」
WIN350をバックに写真を撮るとおかれている他の2両の新幹線に目を移した。WIN350の隣に置かれているのがJR東海の高速試験車955形新幹線。通称300X。その隣にはJR東日本の高速試験車952形新幹線。通称STAR21である。
300Xは日本国内最速の時速443キロをたたき出した高速試験車。STAR21は425キロを記録した高速試験車だ。試験車として記録した最高速度ばかりに目が行ってしまいがちだがどれも今の環境に優しく、快適な新幹線を作る礎を走ることによって作り上げていった車両たちである。
「光。STAR21よ。」
「お母さん・・・。」
「ほら、おいで。」
(ちょっと恥ずかしいなぁ・・・。)
でも、結構楽しかったな。普段は入れないところには入れたし。今度はお父さんも一緒に・・・あっ。




