410列車 聞いてみた
「ただいま。」
そう言い、玄関のドアを開けた。
「お帰り、光。」
と迎えてくれたのは智萌だ。
「どこ行ってたの。」
「亜美の家だよ。」
「へぇ、ガールフレンドの家に行ってきたのね。」
「ガールフレンドってねぇ。」
「ところで、なんか用。」
ウチは智萌にそう聞いた。根拠はない。ただ、そんな気がしたのだ。
「さすがねぇ、テスト勉強見て欲しいんだよ。英語とか古典とか全然わかんないから。」
「それだけじゃないでしょ。全部でしょ。」
そう言い換えた。全く、テストの前にこう慌てるんなら普段からしっかりと授業聞いて、勉強する癖をつけとけっての。智萌って本当に時間の使い方があれだよなぁ。とは思ってるけど、テスト前いつものことになってくるとテスト前に勉強見て欲しいって言われないことに不安になってくる・・・というかなってるなぁ・・・。
「分かったよ。見るから。」
「ありがとう。」
そう聞いたら、ウチにくっついてくる。
「もうくっつかないで。」
「あれ、何か持ってる。」
たぶんウチが持って帰ってきた岩槻のパンフレットのことだろう。
「ああ、亜美からもらったパンフだよ。高校のね。」
「へぇ、ガールフレンドからのプレゼンとかぁ。」
「いい加減にしろ。勉強見ないぞ。」
「ごめーん。」
とりあえず、見ないでおこうかな。そう思っても智萌はそんなのお構いなしだろう。ウチを部屋に連行して、勉強を見るの強制されそう。
「謝ったから、勉強見て。」
「見るから。」
智萌に連行され、勉強を見終わったのは外が完全に暗くなってからだ。それにしても、智萌の理解力の低さはどうにかならないかなぁ・・・。自分の進路よりも智萌の進路の方が心配になるぞ・・・。まぁ、心配って言っても本人あんまり真剣な受け答えはしないけどね。
と、そうだ。早いところお父さんかお母さんにあのこと聞いとこう。階段を降りて、下の部屋に来るとお母さんが台所にいた。晩ご飯でも作ってるのかな。
「あっ、お帰り。光。いつ帰ってきたのよ。」
「ただいま。3時ぐらいだよ。」
「ふぅん。あっ、光晩ご飯もうすぐ出来るから智萌呼んできてくれないかな。」
「分かった・・・。」
「何か聞きたいことでもあるのかなぁ。」
お母さんはご飯作りながら、そう言った。何でウチの言いたいこと分かるのかな・・・。家族全員、この能力には驚かされるぐらいだ。お母さんには胸のあたりに「サードアイ」でもあるのかな。「心を読む程度の能力」・・・「○方」じゃないって。そうだね。
「それは後ででいいよ。」
「そう。」
まずは智萌を呼びに行くかぁ・・・。
ご飯を食べ終わり、20時をまわったぐらいにお父さんも帰ってきた。お母さんはお父さんが帰ってくるとすぐにウチを呼んでくれた。下に呼ばれたウチの前に座っているお父さんは通勤用のスーツのままだ。
「お母さんから聞いたよ。今日は何の話かな。」
お父さん、ウチと話すとき嬉しそうなんだよなぁ・・・。これはウチがする話がほとんど鉄道の話だからかぁ・・・。お父さんって本当に鉄道のこと好きなんだなぁ。それがよく分かる。でも、今日は鉄道の話じゃない。
「お父さんとお母さんって実家浜松だよね。」
「浜松じゃなくて、浜北だけどね。」
そこ重要・・・。
「ああ・・・。二人って地元で進学しようとかって考えなかったの。」
そう聞いたら、お父さんの顔はちょっとだけ真剣になった。そうウチが感じただけかもしれない。
「進学なんてあんまり真剣に考えてなかったからなぁ・・・。」
えっ・・・。ちょっと進学の話それでいいの。ウチはお父さんにそうツッコみたくなった。浜松から近畿に来るのってそんなに軽い気持ちでいいのかな。
「地元で進学するといやなのが着いてくるからあんまり行きたくなかったし。」
「真剣に言ってよ。」
思わずそう言った。ウチは真剣なのに回答が困難じゃ・・・。
「ごめんね。光。お父さんの言ってることは本当だから。」
お母さんがそう言ってくれた。それで少しは落ち着いた。
「・・・本当に関西に来たときほとんど何も考えてないの。」
「うん、大阪の専門学校行きたいって思ってただけだから。それ以外ほとんど何にも考えてなかったよ。」
「そうなんだ・・・。」
「光がそういうこと聞くっていうことは、光も高校は地元の高校に進学するつもりはないって事なのかなぁ。」
お父さんはお母さんの方を見ながら言った。たぶん、何か二人には分かってることがあるのかもしれない。
「・・・お母さんもそうなの。」
「そうね。お父さんと同じね。私もこっちの専門学校行きたいって思ってきただけだから。周りに知ってる人がいないとかそんなこと全然考えてなかったなぁ。」
お母さんも同じかぁ・・・。
いい答えじゃない。でも、二人ともそうなんだ。専門学校に行きたいって事だけ共通している。ウチも東京の岩槻に行くのに深い理由はいらないのかも。なんか、ウチはちょっと考えすぎていたのかもしれない。




