380列車 戸締り
学校が始まって1か月がたった。もうやる部活も決まった。えっ、ウチが入ったのはパソコン部だ。断じて帰宅部ではない。
まぁ、そんなことはどうでもいや。ただ、学級委員っていうのはやらなきゃいけない運命なのかな・・・。さて、男子はウチが選ばれたけど女子からはモズが選ばれたため、小学校の時と何ら変わらない状態になってしまった。まぁ、いいけど。
「よしっ・・・。これで鍵もしめたし、そろそろ帰ろうかな。」
ウチがそう言うと
「そう言えば、例のあれ。早そうな人見つかった。」
とモズが聞いてきた。
「ああ、早い人は案外近くにいたよ。だから、そのことに関してはもういいよ。」
「そう・・・。」
「まぁ、ちょっと信じがたいんだけどね。早くなる方法は。」
「えっ。」
「だって、計算の答えを言ってくだけで早くなるって。普通信じる。」
「・・・まぁ、信じないかな。」
モズはちょっと考えてからこういった。
「でしょ。だから、本当に早くなるかどうかは疑問のままなんだよね・・・。」
「でも、やってみる価値はあるんじゃないの。光ちゃ・・・君って・・・ごめん。」
「・・・。」
モズはそれで黙ってしまった。
「まぁ、価値があるって言えばあるね。だから、やってみようとおもって。まぁ、それもあって部活動は大会とか関係ない文化部にしたわけだけどね。もともとうちは運動神経よくないから運動部に入るつもりはなかったけどさぁ。」
「昔から体育は得意じゃないもんね。他のは出来るのに。」
「・・・料理も出来ないけどね。」
「あっ、それも出来れば女子力高いね。」
「ウチは女子じゃないから、料理は別に出来なくても・・・困らないことはないかな・・・。」
「フフ。そうね。」
離しながら歩いていると階段を下りて2階に来ていた。職員室はこの2階にある。階段から右手に折れ、見えてくる渡り廊下を歩いていくとその突き当りにある。
「鍵は私が置いて来るわよ。部活があってもなくても早く帰りたいでしょ。」
「ごめん、ありがと。」
そう言いうちはモズと別れ、階段をそのまま降りた。
「中百舌鳥さん。」
「っ。」
その声にドキッとする。振り向くと輝君がたっていた。
「あっ、教室閉めちゃった。」
「うん・・・。その何か忘れ物でもあった。」
「うん。筆箱忘れたみたいで。ほら、今日数学の宿題が出てたでしょ。家の使ってもいいんだけど、まだそんなに離れてなかったから取に戻ってきたんだけど・・・。」
「筆箱ね。取って来るから待ってて。」
「あっ。自分で取りに行くから教室の鍵貸してくれれば。それにそのまま職員室には返しとくし。」
「大丈夫、すぐとって来るから。」
階段を駆け上がり、自分たちの教室に向かう。
(ああ・・・。自分でも変な感じ・・・。)
教室にかかっている南京錠に鍵を差し込んだ。輝君とは卒業式以来あんまり話して無かったような・・・。向こうが避けてる・・・。いや、こっちも話すのが恥ずかしいから話しかけることもなかったか・・・。実を言うと輝君が最初に告白された人なんだよなぁ・・・。まぁ、告白してくる人が今までいなかった原因は私と光君が付き合ってるって噂だったからだろう。その噂はもう中学校でも学年に広がりを見せているけど・・・。
「うーんと。」
輝君の机は廊下側から2番目の縦列一番後ろ。机の中に手を突っ込んでみると確かに、なんかある。それを引っ張り出してみるとさっき言っていた筆箱が出てきた。
「ごめん。中百舌鳥さん。」
そう言い輝君が教室に入ってきた。下で待ってなかったのか・・・。
「はい。これでしょ。」
「うん。その・・・ありがとう。」
「・・・どういたしまして。」
「鍵開けてくれたんだし、返すのは僕がやっとくから。」
「いいの。」
「いいよ。」
そう言うと輝君は右手を差し出した。その手に教室の鍵を預ける。
「じゃあ、ごめん。」
そう言い、足早に教室を出た。なんでこんなに・・・。そんなことを考えながら階段を下りる。昇降口でさっさと上履きから靴に変え、さっさと校門の外まで歩いて行った。学校から離れて、10分くらい歩いた時、
「あっ・・・。今日部活だった・・・。」
もう戻るのは考える距離だった・・・。




