370列車 尋問
「光、ちょっといいかしら。」
お母さんにそう言われ、ウチはテーブルの席に着いた。しばらくするとお父さんもお母さんの隣に座った。後ろからは智萌がこっちを覗いている。
「まず、これは一体何。」
テーブルの上にスマホとCNFTが置かれた。
「あっ・・・。」
智萌の言う通りお母さんも感づいていたのだろうか。お父さんは机に置かれたものを見ても驚きはしない。お母さんから話がいっているのだろう。それはそう解釈できた。
「ちゃんと話してもらえないかしら。でないとこれは返せないわよ。」
「・・・。」
「光、お父さんたちは別に怒ってないから。正直に話してくれないかな。・・・拾ったわけじゃないよね。」
綺麗なスマホを見ればそれは分かるか・・・。
「貰いものなの。」
「亜美って子。」
「えっ。」
お母さんの問いにウチはびっくりした。
「そうなのね。」
それにはもう頷くしかない。ウチの知らない所で結構ばれているみたいである。
「お母さんたちはどこまで知ってるの。」
「そうだね。今知っているのは光がこれをLINEで話してた亜美って子からもらったってことだけだね。それ以上の事はほとんど何も知らない。」
それにはお父さんが答えた。そのあとこう続けた。
「光、お父さんたちわね光の事が心配だから言ってるの。それは分かってよね。」
「・・・分かってる。でも、ウチなにも・・・。」
「そう信じてる。だから、話せるよね。」
どう話せばいいだろう。この事を今まで話したことはない。いや、ウチの夢は話したことがあっても、それに絡む他人の話になるのだ。そして、本人はそのことがウチの親に知れることを望んでいない。どうしよう・・・。心配する親の視線を痛く感じる。正直に話すと、ウチはこの話をほとんど言えないことになる。それでは余計・・・。
「・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・。」
もう隠せない。
「それはその、亜美から秘密にしといてって言われてるの。」
「もうばれちゃったわよ。」
シーンと静まり返る。時計のカチカチっていう小さい音だけが妙に大きく聞こえる。
「ティントゥン。」
静かな部屋にお母さんの手の中にあったスマホからLINEの通知音がした。
「・・・もう直接聞こう。」
お母さんはそう言いLINEの電話を亜美宛てに鳴らしたのだった。
ラインを送った後すぐに既読になったのを確認。だが、そのあと驚いたのは光ちゃんから着信があったことだ。普段は電話じゃないのに・・・。そう思いつつ出た。
「あっ、光ちゃん。」
「もしもし、私は光の母親です。」
「はっ・・・。」
それに絶句した。嘘、光ちゃんと私の関係がばれた。いや、恋愛とかそんなのをやっている中じゃないし、光ちゃんを悪いことに巻き込もうとしているわけでもない。普通ならばれても何ら問題ない関係であるが、ちょっとこれはマズイ。
「光ちゃんは近くにいますか。」
「いるわよ。ちょっとこのスマホの事で聞きたいことが有ったから聞いてたんだけど、なかなか話してくれないの。貴方だったら話せるかしら。」
(光ちゃん・・・とうとうばれちゃったんだ。まぁ、親に隠しとおせる自信ないとは言ってたけど・・・。)
「分かりました。住所だけ教えてもらえますか。そっちに行きます。もちろん、個人情報を漏洩したりするつもりはありません。直ぐに破棄させますからご安心ください。」
(・・・この子って小学生な・・・わけないよね・・・。)
話しているとそんな感想が出てくる。といっても、住所は教えなかった。最寄駅だけ教え、そこに迎えに行くということで話をつけた。相手はそれで分かったといって電話をきった。
「利理亜。」
「はい。」
「おばさんにちょっと守山まで出かけて来るって言っといてくれないかな。」
ちょっと早足でそう瑞西に次げた。
「畏まりました。して、お帰りは。」
「夕方までには帰れるはず。そのころになったらまたあれ用意しといてくれない。」
「畏まりました。それではお気を付けて。」
「うん。」




