330列車 「サンダーバード」
1月も下旬に差し掛かったころ。僕たちは「サンダーバード」に揺られていた。
「「サンダーバード」って結構人乗るんだね。」
僕は「サンダーバード」の車内を見て改めてそう思った。JR西日本の在来フラッグシップであるだけのことはある乗車率である。乗車している「サンダーバード1号」富山行きは683系4000番台の9両編成で運転されている。自由席には完全に座り切らないほどの人がすでに乗っている。ビジネス特急を言う性格を併せ持っているためか、その中にはスーツ姿の乗客も目立っている。
「やっぱり言った通りじゃない。「サンダーバード1号」とか座れるわけないでしょって言ったじゃん。」
萌は顔全体で不満を露わにしている。
「こんなに混むとは思わなかったんだもん。」
「ちょっとは混むと思いなよ。昼間あれだけガラガラの「こだま」でさえ朝混むんだから。」
それはちょっと・・・。
「大体、何で特急乗ってデッキにいなきゃいけないのよ。これだったら無理してでも指定席とるべきだったんじゃない。」
デッキとは客室ではない所。ようは乗降口のあるところを言う。特急列車に乗ったら一度は耳にしたことがあるであろう、「携帯電話はデッキにて」の場所である。一つ捕捉するが、デッキは新幹線、特急の様に明確に客室と乗降口等が仕切られているものにしかない。だから、通勤電車にはデッキはまず存在しない。まぁ、721系とか言うJR北海道の例外は存在するが・・・。
「でも、いいんじゃないの。これは敦賀に止まるし、それに金沢とかあっちの方まで自由席が開かないわけじゃないと思うし。」
「はぁ、湖西線とプラスアルファは我慢かぁ・・・。」
「うん、我慢しよ。」
外の風景はコンクリートの高架橋がだんだんと上に外れ始めた。「サンダーバード」は山科を通過してから、あまりスピードを出さない。それは東海道本線から湖西線に針路を変更する際にかかる制限によるものである。やがて、体を右に引っ張ろうとする力がかかり、車窓には右側に線路が見えてくるようになる。今右側に見えている線路が東海道本線だ。あれを走っていくと草津、米原方面に行くことが出来る。一方、「サンダーバード」が走っているこの線路は湖西線である。湖西線は琵琶湖の西側を走っている線路で金沢、富山方面に向かって行く「サンダーバード」は全てこの路線を通る。特急が湖西線を通るのは高速運転が可能で且つ線形が非常にいいからである。だが、それに反してまだスピードは上がらない。今度はさっき上に外れていった高架橋の線路と合流するためだ。
それと合流するとようやっとスピードを上げ始めた。
トンネルを抜けてすぐ、駅を通過。大津京だ。
「もうちょっと走ったら琵琶湖見えるよね。」
「あっ、どうだろう。僕新快速乗るときは前しか見てないから。」
「そうよね。景色は前の物しか見ないもんね。」
「別に前しか見えないわけじゃないよ。」
「東海と東日本とかはでしょ。あれはドアの後ろに席がないし、有っても225みたいに前見えないもんね。」
「・・・。」
まぁ、言っていることは大体あっている。東海の通勤電車はJ西の223系の様に補助いすがついているわけじゃあ無い。そのため、前を見ること=必然的に立つことになる。当然そんなことを擦れば後で痛い目に合うのですることは無い。東日本の場合はただ単に座れないからである。そりゃ、昼間に4つドア15両編成の電車が10分に1回くらいのペースで走っても車内に立ち客が発生するようではねぇ・・・。
って、そんなことはどうでもいい。
列車は湖西線内を快走し、一気に福井県の敦賀に来る。此処で降りる乗客が扉まで来ると車内が少しだけ空いた。ちょうど2列並んで空いた席があったため、そこに座った。敦賀を1分も経たないうちに発車し、北陸方面へと足を進めていく。敦賀を発車してすぐに通るトンネルは北陸トンネルだ。これを抜けていくと、周りの景色は更に雰囲気を増していく。
トンネルを抜けちょっと走ったところで、線路近くに建物がある。それを一瞬で通り過ぎた。
「ナガシィ、今のって・・・。」
「うん、駅だね。」
「えっ、あれで駅・・・。小さ・・・。」
東海道本線などの太平洋ベルトにある駅を見慣れている人からしてみれば、あの一瞬で通り過ぎる建物が駅だなんて思う人はいないだろう。全国探せば、そんなものはいくらでもあるが、そこの人にとってはあれでも立派な駅何だなぁ・・・。
「サンダーバード」は疾走し続けた。




