324列車 駅構内
3日目は自由行動となった。と言っても、自由なのは2時ぐらいまでである。それから快速「エアポート」に乗り、新千歳空港まで行かなければならないからそれは仕方のないことである。まぁ、あの飛行機に乗る面倒な搭乗手続きがなければ、もうちょっと自由行動をとれる時間は多いのだろう。
それを言っても搭乗手続きがなくなるわけではないから、まずは自由な時間をゆっくりと過ごそう。
「それで、「北斗星」をとっておきたいの。」
僕は萌にそう聞いた。
「そうよ。私は「北斗星」を本とナガシィのとってきた写真でしか見てないの。廃止になる前に本物を見ておきたいじゃない。」
萌はそう返してきた。確かに、「北斗星」の生血はもうすぐ消えることがJR東日本から示唆されている。使っている車両の24系は延命工事をしてあるとはいえ、「北斗星」デビューからすでに25年近い歳月が過ぎているのは事実である。そして、それに追い打ちをかけるように北海道新幹線の工事が青函トンネル内で行われている。夜行列車と言う体質上、工事をしている最中に列車がやってくるというのはあまりよろしい状態ではない。相手は先頭に機関車を連結する寝台車。当たれば・・・言うのはやめよう。
「それにしても運がないなぁ・・・。せっかく北海道まで来たのに「カシオペア」は上野の方に行ってるし・・・。」
「・・・。」
まぁ、それは仕方がない。「カシオペア」に投入されているE26系寝台客車が1編成しかない以上、「カシオペア」は臨時列車としてしか走ることしかできないからなぁ・・・。
「でもまだ時間あるよ。」
僕は時計をちらっと見た。そのために手袋をとると、ひんやりとした空気が皮膚に突き刺さる。
「まだ1時間以上あるよ。」
「北斗星」の到着は11時15分。今の時間は10時を少し過ぎた程度だ。
「あれ、「北斗星」ってそんな遅い時間だっけ。」
「遅い時間ですけど。下に特急の到着時間とか書いてある時刻表あるし、見てくる。」
「ううん。いい。そっか、北海道新幹線の開業の為に時間が後ろにずれ込んでるんだ・・・。」
それ以外考えられない。
「で何して時間つぶすのさ。「北斗星」が来るのはまだまだ先。その間ホームにいるのはいいけど、ここは寒すぎだよ。」
「そうね。下行こうか。」
その点で意見が一致した。下で時間を潰すことになった。ベンチに腰掛け、北海道に来て撮った写真を見てみる。相変わらず人を対象にとる写真は増えていない。
「北海道に来ることなんてまずないから、北海道用の車両をとれるのは大きいよね。」
萌が言った。
僕も写真を見ながら思っていることだ。北海道の車両はほとんどがここでしか見れないもの。国鉄時代に投入された車両でも、本州の物とは一線を画している。もちろん、JRになってからはそれぞれで独自の車両を設計製造しているため言うまでもないが・・・。
「まぁ、これもいつか消えるんだけどね・・・。北海道にいくらお金がないと言っても、いつか置き換わるから。」
「消える前に来れてよかったじゃん。」
「うん。」
「ねぇ。」
萌はそういい、僕に顔を近づけてきた。
「今度は鉄道で旅しちゃお。」
「そうだね。今回は車の運転して浸かれたよ。」
出来ればどこかに行くなら疲れずに行きたいものだからね。
「北海道まで新幹線とか乗り継いでくるの。時間かかるわね。滋賀からだと、始発の「のぞみ200号」で出ても、札幌のつくのは夕方か夜だよ。」
「そうだね。」
実際のところ京都7時06分発の「のぞみ104号」で東京に9時23分着。そこから東北新幹線の「はやぶさ11号」に乗り換え、終点新青森到着は12時35分。新青森から函館までを結んでいる特急「スーパー白鳥11号」に乗り換え、函館に14時58分着。函館から終点札幌までは特急「スーパー北斗11号」に乗車し、札幌18時43分着となっている(2014年11月19日時点(もっとも接続の良い列車で))。
「北海道は時間がないと飛行機以外選択肢がないね。」
「だねぇ・・・。」
「他に鉄道でそんなに時間がかからずに行ける所と言ったら・・・。」
「萌。僕はそれもいいと思うけど、皆が働いているところにこっそり押しかけるのもいいと思うんだ。」
「うわぁ。ナガシィそれ人がやるのは嫌なのに、自分がやるのはいいんだ。」
「えっ・・・。」
言われてみればそうだ・・・。
「いや、こっそり行くから会うとも限らないじゃん。」
「限らないけど、会ったらどうするのさ。」
「えっ、別にあってもどうってことは無いけど。」
「と・に・か・く。自分が嫌なことを他人にするな。」
「はい・・・。」
こういう話をしていれば、経つ時間と言うものは本当に短いものである。あっという間に11時を過ぎた。
「そろそろ上に戻ってみようか。」
そう言いホームに上がった。「北斗星」の到着する3番線にはもうすでにチラホラと鉄道ファンが来ている。それほどの人気列車であるということを示すようなものであろう。
直前までポケットの中に手を入れて、手を暖める。
これをとってからはもう関空に戻る飛行機を待つ時間にほとんどが当てられるようになる。そして、滋賀に戻れば、再びゆっくりと回り続ける時間が再スタートするのだ。




