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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
321/779

321列車 道央道

 翌日、僕たちはまた朝早くからホテルを出た。次の目的は「はまなす」ではない。既に時間は7時を回っている。「はまなす」は札幌(さっぽろ)にすでに到着しているうえに、回送されているだろう。今行ったところで札幌(さっぽろ)の構内に昨日青森をたった夜行急行がいることは無いのだ。

 今度の目的はまだ札幌(さっぽろ)近辺で走っている国鉄の通勤電車711系である。711系は耐寒耐雪構造を北海道方に強化した通勤電車でその顔は本州で走っている湘南色の113系などと似ている。しかし、中央上部に前照灯2灯が設置され、前面にある前照灯は全部で4灯となっているなど、前方の視認性向上が図られている。車内の構造も113系などとは似ても似つかないものになっている。扉は改造により3枚となったものもあるが、それは通勤電車では乗降に際し非常に不利な片開きドアであるほか、車内保温を目的としたデッキがあるなど、車内設備はとても通勤電車とは思えないものになっている。

 さて、使い勝手はというと今ではお荷物そのものである。扉の構造も相まって遅延を多発するのは言うまでもないが、加速がメチャクチャ悪いなど多くの駅に止まっては加速し、また止まっては加速しを繰り返す列車には投入し辛いものである。

 JR北海道はこの711系の淘汰に当たっている。それを完全淘汰するのが733系や735系といった731系をモデルにした通勤電車なのである。当然これらが出そろえば、711系は自然と消えるのである。

 朝ご飯の代わりに札幌(さっぽろ)のホームにある駅そば屋でうどんをすする。食べ終わって少しすれば、その国鉄車が姿を現した。

 ドアが開くとどっと乗客が降りて来た。片開きドアであるため少しおり辛そうにしていることが何となく分かる。実家の近くを走る遠州鉄道(えんてつ)でも30系系列の片開きドアを持つ26号が廃車されたが、あれも他の車両に比べ乗降に苦労するのは言うまでもなかった。

「S-111かぁ・・・。」

高槻(たかつき)はそう呟いてカメラを車両に向けた。

 列車は札幌(さっぽろ)止まりだ。全ての乗客が降り・・・てない。中を学生が一人小走りに走っていく。しかし、どの片開きドアもすでに閉まっている。

 中をまわっていた乗務員が機転を利かせて、学生を前の方に案内した。そして、すでに開いている乗務員室扉からその学生を降ろした。

「いいなぁ・・・。」

高槻(たかつき)はそんなことを呟いた。入れちゃいけないんじゃないかと思われる人もいるだろう。当然の事だが、乗務員室には部外者は立入禁止である。しかし、711系は3両編成で且つほかの車両との連結も考慮されている。中央部には貫通路となる構造になっているため、乗務員室は左側に集約されている。ものが当たって困るものは右側にはないはずだ。

「まぁ、そんなこともあるさ。」

「さて、711系も取ったし、次はよいよ旭川(あさひかわ)まで来るまで飛ばしていくんだろ。」

今治(いまばり)に確認するように言った。

「うん、駅前のレンタカーを借りて、そのまま発進だ。」

「よし、そんじゃ行こうぜ。」

「走ってる間はドライブレコーダーみたいに前方の風景とか取りながら行くから。」

「・・・。」

「ねぇ、ナガシィ、ここまで来て仕事してるような感じしない。」

「うん・・・。」

 まぁ、そんなことはさておき。レンタカーを借りて、札幌(さっぽろ)の街に繰り出した。旭川(あさひかわ)まで行くためには道央自動車道を通って行くのが最も早い。まぁ、高速道路だからね。

 札幌(さっぽろ)の市内を抜けて、インターチェンジまでひとっ走り。料金所で通行券を貰い、後は100キロで巡航する。少しだけ走ると野幌(のっぽろ)サービスエリアがあり、一旦そこで止まった。運転交代を兼ねてだ。ハンドルは野幌(のっぽろ)から僕が握ることとなった。

「低っ・・・。」

車高の低さに思わず声が出る。

「低いよねぇ。普段乗ってる○○が高いんだけどさぁ。」

「そりゃあ普段のは四駆になるからね。」

慣れっていうのは恐ろしいものである。確かに、車が壊れたときに仕事先にやってくるレンタカーを運転した時もやはり何か違和感がある。それと同じか・・・。

 さて、野幌(のっぽろ)での用が終わったら、僕はアクセルを踏み込んだ。サービスエリアから本線に入る加速車線に入ったところで、一気にアクセルを踏み込む。エンジンの音が大きくなり、スピードは一気に40から80キロ前後にまでなる。チラッと後ろを見るとちょうど車列が途切れている。チャンスと思いウィンカーを出して本線に合流した。本線合流後も加速を続け100キロにまで加速する。

「どう。」

「どうって気分いいよ。普段巡回からこんなスピード出さないし。」

そう言ってやった。巡回で高速を使いことはないので、こんな速度は出さない。出しても60キロが限度だ。

 レンタカーは100キロで走っているが、やはり高速。そのスピードを悠々と抜かしていく車がある。彼らは130キロぐらい出しているだろうか・・・。

 前に少々遅い車がある。ミラーをチラッと確認し、追い越し車線を後ろから誰も来ないことを確認する。確認してから追い越し車線に入りアクセルを踏み込んだ。スピードはさっきの100キロから105、110と上がっていく。メーターが115を少し超えたところで左の走行車線を走る車を抜き切り、左側のバックミラーに追い越した車両の全体を捉えるところまで来た。そろそろ頃合いだ。走行車線に戻った。

 と、一つ言っておくが、高速道路の追い越し車線を2キロ以上走るのはあんまりいいことではないことちゃんと自動車学校で習ったから知っているよねぇ・・・。

 まぁ、忘れている人の方が多いか、そんなのあったっけとまず最初から頭に入っていない人の方が多いだろう。

 話が逸れた。

 車は前方車両と大体歩調を合わせている。スピードは走行車線に戻ったことにより115キロから100キロに減速する。

 カーナビに表示されている到着予定時刻が目に入る。このまま走って行くと13時02分ぐらいに旭山動物園に到着することになっている。表示はそのすぐ後に13時01分に訂正された。今走っている時速などを総合してそう言う表示を出しているのだ。今のカーナビはそこまで進化しているようである。その上のパネルには温度などが表示されている。外気温は4度。車に表示されている温度と外の外気温の差は大体マイナス2度ぐらい。ということは今この近辺は2度しか気温がないということになる。

(よっぽど寒いんだな・・・。)

そんなことをふと思い、車線を変えてアクセルを踏み込んだ。一瞬ではあるが130キロまで加速した。これで「新快速出すぞ」とか言っても、通じるのはこの小さいコミュニティーだけだろう。


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