289列車 愛媛
接岸してから50分後。昨日船に乗った時に集まった2階へ集合。そのあと伊予西条まで移動するためのバスに乗り換える。と言っても最初の目的地である鉄道歴史パークは8時開館。バスでは30分とかからない位置にあるので、このままバスに乗っては何かと都合が悪いらしい。ロビーを出てから、エスカレーターとかこちらで速度がコントロールできないところは仕方がないとして、ほかのところはダラダラ歩けとの指示がある。でも、そんなに都合よくいくものじゃなく5分と掛からないうちにバスまでついてしまった。
今から乗るバスはトラベル学科が1日中使う。今日泊まるホテルまで来てくれるのだ。だから、去年はコインロッカーに預けるしかなかった荷物をバスに預けていられるのだ。着替えとかが入っている大きなバックを中に入れて、小説が入っている普段使っているバックはそのままにバスに乗り込む。僕はバスには大勢がないから、前のほう。まぁ、席は決まっているのだけどね。
バスに乗り込み落ち着いたら、添乗員役の人の挨拶が始まった。でも、こっちは眠くて仕方がない。一人目が見本を見せ、次の人の挨拶が終わってからの記憶は飛んだ。
目が覚めた時には歴史パークの近くまで来ていた。しばらくすると、バスは歴史パークの駐車場になっているところに入っていった。
「んっ・・・。」
「お目覚め。ナガシィ。」
隣に座っている萌が話しかけてきた。
「うん。どのぐらい寝てた。」
すぐにそれが気になった。寝てる時間によれば、眠っても眠いっていう状態が続く。
「20分ぐらい寝てたよ。」
「そう・・・。」
セーフだ。30分以上寝たら、深い眠りに入りかける。それ以上寝たら眠っても眠い状態になる。脳が眠るからだ。しかし、10分ぐらいだったら眠らないで済む。だから、目が覚めるとか。
伊予西条の歴史パークは本当に伊予西条駅の近くにある。鉄道歴史パークの南側にはホームがあり、そこから駅構内を覗けば、電車が止まっているのが見える。単行の7000系だろうか・・・。その駅が見えるところで、全員の集合写真を撮り、鉄道歴史パークの中に入った。
鉄道歴史パークはそう大きくない。中にはDF50という機関車と0系新幹線が1両おかれている。他に、入り口近くと0系の後ろ側に鉄道模型。機関車の前側にパンタグラフが置かれている。確かに。これから個々の滞在時間が30分ぐらいになっているのも納得する。1時間ぐらい潰せれるほうがここは珍しいかもしれない。
「佐久間レールパークにもこういうのあったよねぇ。」
萌がふとつぶやく。
「確かにあったね。灼熱地獄の奴が・・・。」
佐久間レールパークはもう閉園になってるが、そこにも0系新幹線の頭はあった。でも、頭だけだから、エアコンなんてものはないし、日中気温が上がる山の中に野ざらしという状態だったから、夏はあの中がすごく熱い。昔お兄ちゃんだかが、入って「アッツ」って言っていたのを聞いたこともある。
「久しぶりに乗ってみるかなぁ・・・。」
1年生がはけたところで0系の運転台に入ってみた。そうそう。こんな感じだ。運転台に上がるためには普段乗務員が出入りするところからさらに2段上がんなければならない。かなり高い位置に運転台はある。上に登ってみると、運転台から見えるのはその高さから見える景色である。0系には席が二つあって、左側は運転士が座る席。右側が助手の座る席だ。これは開業当時まだ主力だった蒸気機関車などの名残。そういうのは二人で動かすのが基本だからだ。左側の前にはいろんなランプがついている。中にはわからないのもあるけど、「戸閉」っていうのはちゃんと意味が分かる。ランプの上には横に一直線になるスピードメーター。260キロまで振ってあるが、実際に出したのは220キロが最高。だが、試験車なら256キロっていう記録がある。まぁ、それは0系の試作車になり、量産車ではないが・・・。中央から左寄りに電話。おそらくCTCとつながっていたものだ。右側にはたくさんつまみがついている。これでいろんなものを調整していたんだろう。
荷物を足の下の狭いところにおいて、座ってみる。下を見ながら、警笛のある位置を確認して、右足を底に軽く置く。右手をマスコンにかけ、左手でブレーキハンドルを持つ。
「これは、動くかなぁ・・・。」
左手を手前に引いてみた。動いた。
(佐久間のは動かなかったんだよなぁ・・・。)
なんで動かないってその当時は知らなかったけどなぁ・・・。なんかブレーキが動くだけでも新鮮な気がする。
「永島君似合ってるよ。」
と声がした。難波先生だ。
「はぁあ・・・。」
としか返事ができなかった。似合ってるんなら・・・。
(・・・まぁ、ちょっと出発させてみるか・・・。)
テレビでそう言うのはやっていた。昔はそういうのを覚えていたっけ。逆転機を前進に入れて、戸閉、ATC、時刻、ブレーキ完解を確認して、マスコンを1入れる。これで出発するんだったな。
そうこうしているうちに出発時間になった。
ここから1年生のほとんどはわかれてしまう。次に向かうのは糸山公園というところ。しまなみ海道が見えるそうだ。普段だったら来島海峡にかかる3つの吊り橋が見えるそうなのだが、霧のせいで一番手前にある吊り橋しか見えなかった。あの霧はまだ引きずっているみたいだ。その次の目的地は松山城。僕はこれに上るのは2度目だ。前に来たときは改修をしていて、外をきれいにみることはできなかった。今回はどうだろうと思っていたが、靄が町全体にかかって、きれいとはいかなかった。松山城から降りたら、班行動になる。僕たちの班は内子に行くということになっている。が、お昼を食べて、松山駅に行ったら、乗る予定の特急「宇和海」はもうすでに発車した後。結局、内子に行くことはあきらめざるを得なかった。
いかない代わりに何をしていたかというと、「坊っちゃん列車」に乗ったり、道後公園の中を歩いたりして時間をつぶした。
泊まるホテルに着いたのは17時20分を少し過ぎたぐらいだ。もうほかの班は到着していた。どうやら今度は僕たちが一番遅いみたいだ。全員が集まったのを添乗員が確認して、ホテルでの予定やいろいろな説明を聞き、自分たちの部屋に入った。1時間休んだら、宴会だということになっている。去年と同様、とても入りきる涼じゃないものが目の前に置かれているものだった。宴会ではカラオケとかダンスとかかくし芸をする人はかくし芸をして、各種表彰の発表があった。解散していいとなったら、僕はすぐに解散した。ここにダラダラといるつもりもない。
「いいの。こんなに早く切り上げちゃって。」
「いいよ。宴会は盛り上がっていいけど、あんまり盛り上がってくれるのもねぇ・・・。」
「久しぶりに会った千葉君とかと話さないの。」
「いいよ。特別に話すこともないしさぁ。」
「ふぅん。それよりどうするの。お風呂とか行くの。」
「今お風呂行ってもなぁ。部屋の人ほとんど戻ってこないし。草津とか戻ってきたら、お風呂行くよ。だから、すぐにはいかないかなぁ。それに小説の設定とか、先を読み進めたいからさぁ。」
「はいはい。ナガシィは本読むのが好きだねぇ。」
「別に好きってことじゃないけど。時間をつぶすには一番いいから、そうしてるだけだけどね。」
「・・・。」
萌に言ったとおり、しばらくの間は人は戻ってこなかったか、戻ってきてすぐにお風呂に行ってしまうかのどちらかだった。その間は部屋から出ることはせず、部屋の中でおとなしくしていた。それから今治がパソコンで作業を始めたので、僕もお風呂に行くことにした。
「ふぅ・・・。」
今日泊まるホテルは本館と別館がある。同じ時間で本館と別館のお風呂どちらにも入ることができるから、みんな本館のほうへ行っているのだろうか。2年生の姿も1年生の姿もない。
「まぁ、ゆっくりできるからいいかぁ・・・。」
方まで使った。久しぶりな気がするなぁ・・・。あの狭い部屋の風呂じゃあ肩までつかるなんて到底できない。お風呂はやっぱりこういうものがいいさ・・・。
「・・・入り方間違えたかもなぁ。」
と独り言を言った。本館もあるから、いずれ本館も入ろうと思ったが、別館から先に入ってしまった。順番的に入り方を間違えたかぁ・・・。本館も入りに行くか。ということで本館に移動。本館には草津、高槻、近畿たちがいた。他にも犀潟がいる。でも、僕と入れ替わりになった。
お風呂に入って上がり、脱衣場で浴衣を着る。
「永島。」
「んっ。」
話しかけてきたのは近畿だ。
「あれ。別館には戻らなかったの。」
「ああ。ピルルンがマッサージされて、いい気持ちになってるからなぁ。帰るに帰れなくてさぁ・・・。」
ピルルンっていうのはトラベル学科の担任、延暦敏樹先生のブログの中での名前だ。何が何でこういう愛称になったかは知らないけど・・・。
「へぇ・・・。」
ということは、温泉から出たところにある休憩所で全員休んでるってことかぁ・・・。
「ところで、何さ。」
角にある体重計に目が行く。
「別に何ってわけじゃないけど。」
「ふぅん。」
体重計のある場所に歩いて行く。何キロだろう。僕は体重50キロない人だ。就活をしてた時よりはしっかり食べてるから、もう自分でも驚くような体重にはなっていないと思うけど・・・。乗ってみると47キロだ。
「はっ・・・。お前ちゃんと食べてるか。」
近畿は心配していってくれた。
「食べてるよ。」
食べない時もあるけどな・・・。
近畿の言うとおり、延暦先生と、草津、高槻が休憩所にいた。少しだけ草津たちと話してから、別館に戻る。そして、もう一度別館のお風呂に入る。これで、本館から別館の間外を歩いた時の体温低下はチャラだ。
「・・・。」
全員と行く旅行は今回が最後かなぁ・・・。まぁ、そのあとも一人でどっかにはいくか・・・。
少し周りを気にする。今は言っているのは露天風呂。外気は冷たいが、お湯は熱いというぐらいあったかい。
「はーっ・・・。」
急速潜行。




