261列車 まだまだ波乱は続きそうです
4月も半ば。ここから新入生のキャンパスも本格的に始まっていくことであろう。それはもちろん、サークル活動の活発化も意味しているのだが・・・。
「ねっ。だから、二人にはこの格好になってもらいたいのだよ。」
いつも元気な善知鳥先輩はあたしたちに雑誌の1ページを見せていた。その善知鳥先輩の言うなって欲しい格好っていうのは水着姿である。
「あの。なんで水着なんですか。」
「水着でたくさんの男子を。」
「あたしたちは男子を呼び込むためにいるんじゃありませんよ。」
「ふぅん。どうせ、このサークルにはあたしが勧誘しない限り男子しか来ないんだから。」
「善知鳥先輩の上には女子いませんよねぇ。それに、神足先輩たちの学年にも女子はいませんよねぇ。その時は勧誘しなかったんですか。」
「あたしの貧乳水着を見たって誰も喜ばないって。」
「・・・。」
「とにかくやりませんからね。」
「えーっ。アズタンやってよ。」
「やりませんよ。誰がそんな恥ずかしい格好しなくちゃいけないんですか。」
「なんで、そんなに拒否るかなぁ・・・。あっ。もしかして、アズタン、彼氏でもいるのか。」
「えっ・・・。なんでそうなるんですか。」
「他に何か理由ある。自分の水着姿は彼氏以外には見せられないって・・・。彼氏がいるいない、そんなこと関係ないって。ただの勧誘に使うだけだから。写真をネットにアップしたりとかしないから。」
しかねないんだけどね。善知鳥先輩は・・・。
「あたしもしませんからね。」
「えっ。モエタンもやってくれないの。」
「まだ寒いのに。そんな恰好したら、凍えちゃいますよ。」
「大丈夫だって。どこまで行っても凍えるだけなんでしょ。死にはしないから。」
「凍えるだけでもいろいろ問題ですけど・・・。」
「おい。善知鳥・・・。」
呆れ果てた声は綾瀬先輩だった。
「おっ。アヤケン。」
「お前は女子がいたらいたで、そういうことに使おうとするんだなぁ・・・。」
「別にいいじゃない。このオタク部にどういう女子が入ってくるんだか、面白いじゃん。」
「別に。女子が入らなくても、こっちに不都合はないって。黒崎さんに、永原さんもやめたくなったらやめてもいいんだぜ。」
「ふぅん。アヤケンはそこん所甘いなぁ。やめたら・・・。」
「変なこと吹き込むのはやめろ。あんたは・・・。」
「・・・。」
「じゃあ、アヤケンがこれするか。」
「しないから。どうせくだらないこと言ってるんでしょ・・・。まぁ、一人は心配ないから。」
「えっ。」
「何、何。もうひとり来たの。女子か。女子だよねぇ。」
善知鳥先輩の目がキラキラしている。
「女子じゃないって。」
「ガッカリ・・・。なんで女子じゃないの。」
「だから、なんで女子の入部期待するの。」
「あの、お呼びじゃなかったですか。」
その声でようやっと気づいた。ドアのところから顔をのぞかせている。綾瀬先輩が中に入ってきてから、ずっと中の様子をうかがっていたそうだ。
「なんでずっとそこにいるの。入れば。」
「だって、中から「水着がどう」とかって聞こえてきたら、入りづらくなるでしょ。男には入りずらい話っていう感じで。」
「まぁ、ずかずか入っていい話とは思わないけどね。でも、入ってもいいって。聞かなきゃいいだけだから。」
「いやでも、聞こえてくるんですよ。」
うん。その嫌でも、聞こえてくる話をあたしたちは目の前でされてるんだよ。
「ところでなんていうの。」
「欅平です。」
何とも難しい漢字を使った苗字であるか・・・。
「ケヤッキーね。」
善知鳥先輩早すぎだよ。もう、新入生のあだ名考えちゃったし・・・。
「よしっ。アズタン。女子の勧誘に行ってこようか。」
「えっ。なんであたしなんですか。」
「えっ。理由なんてないけど。」
「・・・。」
そんな感じであたしは外に連れ出された。これでどうしろっていうの。あたしはプレートを持たされて、そんなに人目に付かないところに立っていた。善知鳥先輩はというと、去年みたいに問答無用で女子に声かけまくっている。ところで、何であたし選ばれたんだろう。そんなに連れて行きやすかったのかなぁ・・・。
「あの。」
「わっ・・・。」
ずっと善知鳥先輩のほうを射ていたので、いきなり声を掛けられて、びっくりした。
「あの、交通サークルの人ですか。」
「えっ・・・。あっ。そ・・・そうだけど。」
「あの。交通サークルってコスプレできるって本当ですか。」
「えっ・・・。」
いや、コスプレできるって。交通サークル=コスプレ部っていう方程式がこの人の頭の中に展開しているんだけど。
「いや、コスプレはないから。」
「えっ。じゃあ、去年の学園祭のときに見たあの制服着てる人たちはいったいなんだったんですか。」
「ああ。それ、あたしたちじゃない。」
いつの間にか善知鳥先輩も来てるし・・・。
「ですよね。制服のコスプレって、この学校で行ったら交通サークルぐらいですよね。」
「何。君。入りたいのか。」
善知鳥先輩の目が光ってるよ・・・。
「はい。」
「よしっ。じゃあ、部室連れてくから、ついてきて。」
「はい。」
「あの。ちょっと、君。ご・・・誤解だから。完全に誤解してるから。」
その子に向かって叫んでみたけど、聞こえてないみたい・・・。
(ハァ・・・。)
「あの。すいません。」
「えっ。」
また、さっきみたいな個。もう、なんでそういう個しか集まらないのかなぁ・・・。って思ったけど、今度はそうではなさそうだ。鳥峨家よりも身長の高い男子がいかにも話しかけづらそうに立っていた。
「交通サークルに何か誤解してることって、なんかありますか。」
「へっ・・・。」
もう、わけわかんない・・・。
勧誘っていうか、元から入りたい出来たその人を連れて、部室に戻ってきた。部室の前にはさっきの欅平君と綾瀬先輩が廊下に立たされている状態になっていた。
「あの、どうして・・・。」
「黒崎さん。1年たったんだ。察しよう。」
「あっ・・・。そういうことなんですね。」
「そっ。そういうこと。」
何が部室の中で起こっているって。もう、分かってるよね。さっきの女子が中でコスプレタイムになっていることは明らかである。
「アヤケーン。」
中から善知鳥先輩の嬉しそうな声が聞こえてきた。綾瀬先輩は手で目元を隠すと、
「ウッ・・・。今見ちゃいけない、見ちゃいけない。黒崎さん、行って。」
「えっ・・・。」
「君のほうが今中見ても問題ないから。」
「えっ。どういうことですか。」
「ちょっとひどいですぅ・・・。まだ、あたし上着てないですよ。このまま男子に入ってこられたら、ブラ見られちゃうじゃないですか。」
「少しくらいいいじゃない。」
中から聞こえてくる声で、よく分かる。
「あっ。そういうことなんですね。」
「そう。女子の下着見て、一番安全なのは黒崎でしょ。」
「まぁ。そうですけど・・・。・・・よくよく考えれば、あたしも去年同じことやられましたねぇ・・・。」
「ねぇ、アヤケン。」
中からまた善知鳥先輩の声が聞こえてきた。
「瑠奈ちゃんのブラ結構可愛いよ。ねぇ、見ないの。瑠奈ちゃんのブラはいま限定で見れるよ。」
「いや、いや。今、蘭さんのブラ見てもなぁ・・・。っていうか、まだ昼だ。」
「ところで、アズタンいる。」
「いないって言ってください。」
「いないよ。」
「いるね。」
「いないって言ってるじゃん。」
「いや。そういうこと言うなら、なおさらいるじゃん。」
善知鳥先輩はガラッとドアを開けて、外に出てきた。
「ほら、やっぱりいた。」
逃げる暇もなく、あたしは捕まって、部屋の中に強制的に入れられた。ふと顔をあげるとさっきの子が下着姿になってる・・・。これって確か去年も・・・。
「ねぇ、アズタン。アズタンは今日ちゃんとパンツ穿いてるかなぁ・・・。」
「なんでそういうこと聞くんですか・・・。」
「まぁ、ちょっとぐらいいいじゃないの。」
善知鳥先輩はそういうと来ているワイシャツのボタンに手をかけ始めた。
「ちょっと。セクハラですよぉ・・・。」
「アハハ・・・。梓お疲れ。」
「お疲れじゃないよ。何でこういうことされるのはあたしなの。」
「えっ。アズタンってこういうことしやすいように見えるからねぇ・・・。」
「あの・・・。」
善知鳥先輩がなければ、こういうことはなかったんだけどなぁ・・・。
「さぁて、ワイシャツを脱がされる準備はできているかなぁ、アズタン。」
「ちょっ・・・。ちょっと待ってください。」
「何。まだ準備できてない。」
「準備じゃなくて、あたし、どうして脱がされなきゃいけないんですか。」
「えっ。だから、さっき言ったでしょ。こういうことしやすいんだって。」
「どういう意味ですか。」
「そういう意味だよ。瑠奈ちゃんに自分の貧乳みせつ・・・。」
そこまで善知鳥先輩の口から聞こえたところで、あたしは善知鳥先輩のお腹に向かって、こぶしを入れた。
「ウッ。」
「ハァ・・・。」
一息ついて、自分の服を見てみる。善知鳥先輩って本当にこういうことふつうにしてくるなぁ。ワイシャツのボタンは胸の上が二つ外されて、ちょっとブラが見えている。
「・・・アズタン。」
「・・・。」
「もう、素直じゃないなぁ。」
「素直じゃないじゃあ、ありませんよ。」
後は以下略・・・。
あとあと、今年進入してきた人たちから自己紹介があった。入部したのは女子一人と男子二人。蘭さん、欅平君、戸坂君だそうだ。
今回からの登場人物
蘭瑠奈 誕生日 1994年11月25日 血液型 B型 身長 153cm
欅平順章 誕生日 1994年11月16日 血液型 A型 身長 163cm
戸坂洋樹 誕生日 1994年12月20日 血液型 B型 身長 170cm




