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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Distress Episode
259/779

259列車 切符

 4月10日。今までほとんどのエントリーシートが思うように進んでいなかった。それは4月6日の東海の結果である。それが知れるのはいつだろうか。学校が始まるのは明日。今までエントリーシートの作成などで会っているから、明日から学校が始まるっていう実感があまりない。だが、春休みから学校が始まるようになると会わなくなる人もいる。会わなくなった人は近畿(きんき)だ。近畿(きんき)六甲摩耶(ろっこうまや)ケーブルから内定をもらい、早期就業で働くことになっているため、休みの日以外は学校には来ない。それ以外あまり動きはない。

 水曜日の今日はまたエントリーシートの作成。今は新幹線メンテナンス東海のエントリーシートを作成している。今はエントリーシートに張り付ける写真を考えているのだ。東海を作り始めてから、こっちを考える余地がなかったからなぁ。いい加減考えないといけない。

(うーん・・・。どうしようかなぁ・・・。)

考えてはいるけど、どういう写真がいいのかっていうのが分からない。なんでもいいとは書いてあるけど、なんでもいいっていうのは選択範囲が広すぎる。

「ナガシィ。」

(もえ)に話しかけられた。

「何。」

「先生からメール着てるんだけど。ナガシィはメール着てる。」

「えっ・・・。」

スマートフォンを見てみるとメールを受信している青いランプが光っている。スマートフォンのロックを解き、メールを見てみると先生からだった。内容は教務室に来てくださいということだった。

 スマートフォンをズボンのポケットの中にしまってから、教務室に向かった。教務室の中に先生がいるかどうか覗いてみると、先生が僕たちが来たことに気付いた。

「あっ。永島(ながしま)君。(もえ)ちゃん。ちょっと入ってくれる。」

「失礼いたします。」

「失礼いたします。」

(もえ)が先に教務室に入り、僕が後に入った。

「えー、東海から選考結果が来ました。(もえ)ちゃん、通貨です。それで、永島(ながしま)君。永島(ながしま)君は結果が振るわなかったんだけど。」

「・・・。」

「結果は残念だったけど、永島(ながしま)君は頑張った。それはよく分かる。」

先生は間髪入れずに続けた。

「そうだよ。ナガシィ。面接官との相性が悪かっただけだって。」

(もえ)はそう言ってくれた。でも、あんまり聞こえがいい気はしなかった。今回の結果って、自分の面接がダメだった気しかしないからだ。

「でも、永島(ながしま)君。東海落ちたからって今はへこんでられないじゃん。」

「それは十分わかってます。」

「うん。分かってるなら、気持ち切り替えて、続けてください。」

「はい。失礼いたします。」

「それで、(もえ)ちゃん。今度も面接があるのよ。それで・・・。」

難波(なんば)さんのそういう声が聞こえていたけど、もう聞く気はなかった。

(クソッ・・・。)

 ある程度エントリーシートを完成させてから、家に帰った。

(はぁ・・・。白黒はっきりしたのはいいけど・・・。(もえ)すごいなぁ・・・。)

天井を見た。

(はぁ・・・。なんであの時あんなこと言ったのかなぁ・・・。バカだね・・・。この・・・。)

「ピンポーン、ピンポーン。」

誰か来たんだ。誰だろう。

「ナガシィ。」

「なんだ・・・。(もえ)か。」

「なんだって・・・。」

(もえ)はそう言いながら、部屋の中に入って来た。中にはいるとベッドの上に座った。

「大丈夫。」

「大丈夫だって。それより、(もえ)、頑張ってね。」

「うん。でも・・・。」

「だから、済んだことはもう済んだんだし。もういいから。(もえ)ががんばってくれればそれでいいから。」

「頑張って来るけどさぁ・・・。ナガシィは大丈夫なの。なんかこのごろ変だよ。東海の結果がくるまでの間も。顔怖かったし。」

「そうかなぁ・・・。」

「そうだよ。ナガシィ、このごろ本当に怖いって。目がギョロッとしてて。私でも怖いからね。」

「別に怖がらせてるわけじゃないんだけど。」

「それは分かってるって。」

そういうと(もえ)は僕の肩に手を置いて、

「ねぇ、怒ってる。」

「別に。」

そっけなく答えた。でも、(もえ)にとってもこれはふつう。

「別にって。怒ってるでしょ。

「・・・。」

「まぁ、誰に怒りたいのかは知らないけど、怒りたいなら怒ったほうがいいよ。人に分かるように向けるべきじゃないと思うから。」

「・・・。」

「ちょっとは笑いなさいよ。」

(もえ)はそういうと僕の両脇に手を持ってくると、いつものことで、

「はっ・・・。」

ダメ、脇はダメ。

「ちょっ。」

「少しは笑える。」

「えっ・・・はん。」

「ウフフ。カワイイ。」

「カワイイじゃないって・・・。」

そういうことどうでもいいんですけど・・・。

 4月11日。今日から授業になっている。2年生から新たにスーツ日に木曜日が加わった。これで週2日がスーツ日。それ以外は私服でいい日だが、就職活動の関係でこれない日は当然スーツ。就職活動が終わるまではクールビズも許されない状態になる。つまり、夏をいかに涼しく過ごしたいと思うときは早いところで決めてこなければならない。まぁ、そんなことのために就活をすぐに終わらせるということではないが・・・。

 授業の中でも新しいものが顔をのぞかせている。鉄道のアナウンスを専門的に学ぶ授業とか、車掌の座学とか、生涯をお持ちの方に対する対応の実習とか。これはいわゆるサービス介助士の実習と同じだね。それがより鉄道に特化したのだ。他にも学校はこういうことをするらしい。この日の4限目の時間を利用して、7月7日に行う仕事体験の準備をするそうだ。学校っていうのは本当に勝手なものだなぁ・・・。そこは呆れる。しかも、豊中市が後援するという話まで持ちあがっている。本当に勝手だ。僕の知ったことではない。やりたい奴だけでやればいいじゃんと思うが、やるのは鉄道学科だけでらしい。訳が分からない。それなのに、学校の中にあるホテル学科やエアライン学科は手伝ってすらくれないらしい。さらに訳が分からない。やる理由もわからない。やる意味ある・・・。僕はお祭りはイベント、特に自分がやらされてるっていう感覚がするものが一番嫌いだ。やらなくていいのに・・・。恐らく、こういうこと一番乗る気じゃないし、やる気もない。

 さぁ、そんな学校の勝手に付きあってからは、コミュニケーションを行う授業。今度は人を褒めたおすらしい。そういうことをするのは正直恥ずかしいんだけど・・・。でも、こういうことってなかなか見つからないんだなぁ・・・。それが終わると今度は普通にインタビュー対策の授業。面接の練習だ。しかし、このごろ面接を受けたばっかだし、しばらくの間面接試験がないので、今自分は関係ない状態だ。

 4月12日。金曜日今日始まる時間は11時20分から。すごく遅い時間から授業がスタートする。それから一番最後の授業まで続いている。一番最後の授業は就職活動のための授業なので、その時間はエントリーシートとかをずっと書いている状態である。それが終わったら土日となる。

 4月13日。

「ナガシィ。」

「何。」

交通事業(こうつうじぎょう)の企業説明会どうやっていくつもり。」

「ああ。交通事業(こうつうじぎょう)交通事業(こうつうじぎょう)近鉄(きんてつ)で行こうかなぁって思ってる。」

近鉄(きんてつ)。」

「うん。急行とかでゆっくり行こうって思ってるけど。」

「ふぅん。「アーバンライナー」じゃ行かないの。」

「戻ってくるときに使おうかなぁって思ってる。でも、もしかしたら、新幹線かもね。時間かかるし。」

「そう。じゃあ、東急(とうきゅう)の説明会は何で行くつもり。バス。」

「バスって。バスじゃ行かないよ。バスじゃあ、眠れないしね。」

「新幹線で行くのは分かったけど、何時の新幹線で行くつもりなのよ。東京(とうきょう)で私鉄とか乗るの。」

「うんまぁ・・・。京王(けいおう)京急(けいきゅう)乗ろうかなぁって思ってる。」

「そう・・・。」

「ていうか、(もえ)はこんなところで遊んでていいの。面接って月曜日なんでしょ。」

「うん・・・。」

網は小さな声でそう言うと、手を後ろから回して、僕を後ろから抱いた。

「ナガシィ・・・。なんか、焦ってない。」

「えっ・・・。」

「東海の試験の後本当に変だよ。大丈夫。」

「大丈夫だって。」

「ナガシィってそれしか言わないよねぇ・・・。大丈夫って聞いても。大丈夫じゃないなら、大丈夫じゃないって言ってくれないと・・・。私もどうにもできないから。なんか、ごめんね。ナガシィが行ける分取っちゃって。」

「だから、それはもうどうでもいいんだって・・・。」

「敵意剥き出しでしょ。今は私にでも。」

「・・・。」

「ナガシィ。また戻っちゃうよ。」

「えっ。戻るって何に。」

(・・・私が見ていられないナガシィに。)

(もえ)は何も答えなかった。僕が一体何に戻るというのだろうか。自分で分かっていない自分に戻るのだろうか。

 4月15日。(もえ)は東海の最終面接に行った。そこまで行ったのは草津(くさつ)蓬莱(ほうらい)の3人だったというのはその時知った。

(・・・クッ。)


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