252列車 罰ゲームは萌の胸!?
3月6日。19時。僕たちは先輩たちと一緒に大阪フェリーターミナルにいた。ここから湯布院へ旅行に行くためである。旅行の行程は19時50分発のフェリーで大阪からも時効まで行き、翌日3月7日は九州鉄道記念館を巡ってから、17時にホテルに到着するようにいく。3月8日は8時にチェックアウトしてから、15時45分の集合まで自由。「さくら560号」に乗車して戻ってくるというルートだ。
フェリーターミナルを出港した船は順調に大阪湾を航行し、明石海峡大橋の下へと差し掛かっていた。
「・・・。」
上に広がっている世界最長のつり橋に圧倒される。全長4000メートル近い明石海峡大橋は、道路をつるしているワイヤーがつながれた太いポールに取り付けられているライトによって、その形を見ることができる。
「わぁ。すごい・・・。そして。寒っ・・・。」
名張先輩たちがそう声をあげている。僕はその隣にマフラーをつけ、ジャンバーを羽織り、4枚重ね着している。でも、通り過ぎていく風は露出している肌にナイフのように刺さってくる。この格好をしてこれで、何分ぐらいになる。フェリーターミナルを出てから、結構時間が経っていて、ちょっと足がパンパンになっている。なんでこうなっているのかというと、座ると酔うからだ。僕には船の耐性がない。船の機関から伝わってくる小刻みに襲ってくる変な揺れと、波をかき分けて進むときの上下の動きが重なるだけで、酔いそうになる条件がそろっているのだ。しかも、座るだけでも不安になっているのに、それで寝ろだなんて・・・。これは何らかの嫌がらせかとも思う。
その頃、
「えっ。萌ちゃん胸小さい。」
私の胸を揉みながら、瀬野がそう言う。
「そうかなぁ・・・。私は大して気にしたことはないんだけどね。」
「いや、これは小さいって。萌ちゃんスタイルいいのに、こういうところで損してる感じするんだよ。」
揉んだまま言葉を続ける。正直に言うとちょっと恥ずかしい。だって、今。私は何も着てないんだもん。ていうか、鉄道学科の女子全員パンツかブラぐらい。なんで全員裸なのかって。それはお風呂に入るためだしね。
「損してるかぁ・・・。でも、萌ちゃんはあのナガシィ君繋ぎとめてるからねぇ・・・。その性格とかで。」
「アハハ・・・。」
「そうかぁ・・・。萌ちゃんにとって、胸はおまけみたいなものかぁ・・・。」
「おまけっていうな。」
「あっ。さすがに、おまけ扱いはひどかったか・・・。」
それで、瀬野は私の胸から手を離した。
「それにしてもさぁ。萌ちゃんって結構長い間、智ちゃんと一緒にいるんだよねぇ・・・。パイタッチとか触られたことある。」
「パイタッチはされたことないし、胸揉まれたこともないよ。」
「えっ。それはガチ・・・。」
「うん。」
「えぇ・・・。一度は経験あるのかと思ってた。」
何か予想外なことでも言ったかなぁ・・・。
「あっ。それは私も思ったぞ。」
と木ノ本が口を開く。
「だって、智ちゃんのことあんなに好きなのに。072とかやらないの。高校の時はいつも会えてたわけじゃないし、結構頻度高かったんじゃ。」
「うん・・・。それぐらいはしてたよ・・・。時折ね。」
「えっ。でも、智ちゃんとやったことはないんでしょ。」
「うん。」
「よくその処女歴持ってるなぁ・・・。ナガシィ君がエッチなことに目覚め始めたときにすでに経験あるかと思ってたのに・・・。」
留萌も話に入ってくる。
「あっ。でも、ナガシィだって、私の裸ぐらい見たいって思ってるはずだよ・・・。出来れば、その先にも進みたいんじゃないかなぁ・・・。」
「・・・。」
「ナガシィ君もじれったいなぁ・・・。彼女なんだから、もうやっちゃえばいいのに。」
と留萌が言うと、
「多分、私をやると何か仕返しされると思って、できないんじゃないの。」
「チキンかよ・・・。」
「そんな彼氏でいいのか。頼りないぞ。」
木ノ本が続ける。
「チキンでもなんでもいいよ。ナガシィはナガシィだから。」
「じゃあ、ちょっと聞くけどさぁ。パイタッチはなくても、見られたことはある。」
蓬莱が聞く。
「見られたこと。それはあるよ。」
「えっ・・・。」
「小学校の時にね・・・エヘ。」
「エヘって・・・。それ以来みられたことは。」
「うーん。ないかなぁ・・・。」
「えっ。じゃあ、パンツ見られたことは。」
留萌が聞く。
「パンツ見られたこと・・・。」
「って。そもそも萌ちゃんがスカート穿くことってスーツで以外ないかぁ・・・。」
「・・・言われてみれば、萌ちゃんって普段ズボンだな。」
納得した木ノ本が口を開く。
「なんなの。萌ちゃんさっきはあんなこと言っといて、本当は見られたくないんじゃない。ズボンで防衛してるって・・・。いつまでもズボン履いてたら、めくれないじゃないか・・・。めくって中の水玉模様見れないじゃん。チャックおろしても、見辛いじゃん。脱がさないとセッ○スできないじゃん。」
瀬野が言う。それに、今結構恥ずかしいこと言ったよねぇ・・・。瀬野には自分のパンツだって、ブラだって、裸だって見られてるから、下着の色は全部把握されてるし。下手したら、自分のスリーサイズも・・・。
「・・・私がナガシィにやられる気になれば、自分からでも、脱ぐわよ。」
「いやいや・・・。智ちゃんだって、自分で萌ちゃんのこと裸にしたいと思うぞ。自分から脱いで、智ちゃんの楽しみをとるようなこと・・・。」
と言ったところで、瀬野は私の肩に手を置いて、何も言わなくなった。いつものことだ。
服を着て、自分たちの部屋に戻る。戻ってから、船内で夕食をとるために、難波さんが泊まっている階にあるソファーの前に来ていると、涼しい時期の格好をしたナガシィが歩いてきた。ナガシィとちょっとの間話してから、蓬莱、内山さんとは別れ、ここにいるのは永島、坂口、瀬野になった。永島はそうなってから、壁にもたれてため息をついた。
「どうしたの。ナガシィ。」
「えっ。いや、船の中で寝れないフラグが立ってるから。」
「フラグかぁ・・・。あたしもたってるよ。寝ないフラグ。」
「えっ。眞実ちゃんも船に弱い。」
「ううん。あたしは瀬戸大橋としまなみ海道の橋くぐるところを見たいだけ。てなわけで、」
と言って、瀬野は僕の肩に手を置くと、
「萌ちゃんと一緒に道連れだ。」
と言った。何が道連れなのかって。それは徹夜のことだ。
「別にいいよ。どうせ船の中で寝れないだろうし・・・。だって僕。電車以外耐性ないもん。」
と言ってから、
「僕さぁ。バスはあの揺れとエンジンで寝れないじゃん。京浜急行行ったときだって、30分ぐらいしか寝れてないし。それに船は変に揺れてるから、座るのもあんまりよくないし・・・。飛行機は論外だし・・・。でも、電車だったら、どんな揺れ方しても、大丈夫なんだよねぇ。酔うことないし。」
「さんざんだねぇ・・・。一番安心できるから電車で寝ちゃうんだねぇ・・・。」
「うん・・・。」
「萌ちゃんは。船とかって大丈夫。」
「あたしも大丈夫じゃないと思うなぁ・・・。正直フェリーに乗るのはこれが初めてだし。」
「・・・お互いさんざんだなぁ・・・。」
そう話してから、甲板に出ることになった。さすがに外は寒いので、全員防寒装備を万全にして、外に出た。
それからというもの瀬戸大橋がくるまでの間に同じように瀬戸大橋を見に来た栗東と草津と犀潟に会い、瀬戸大橋をくぐるまで、甲板にいた。それからは一度船内に戻り、ゲームをすることとなった。やるのはポーカーだ。僕はポーカーのやり方を知らないから、栗東と草津にやり方を教えてもらった。やり方を教えてもらってからはまた数時間前にいたソファーのところにいた。
「なぁなぁ。罰ゲームでもつけてみない。」
瀬野がそう切り出した。
「罰ゲーム。」
「うん。例えば、負けたやつは百合に告白するとか。」
と言って、すぐに顔を伏せた。それには全員顔をどこかにそらした。別に平百合が嫌なやつというわけではないのだが、あまり協力的ではない平百合にあんまりいい気を抱いていないからだ。
「その罰ゲームは冗談抜きでやめよう。」
僕は瀬野の背中を擦る。
「そうだなぁ・・・。じゃあ、1番のやつに下のやつがチロルチョコをおごるっていうのは。」
「・・・それなら、まだいいね。」
「1番上を決めるからには1番下も決めておかなきゃね・・・。」
瀬野はそう言ってから、少し考えるポーズをする。
「じゃあ、1番下はここで全裸になる・・・。」
「ちょっと待って・・・。」
これには男子全員で「待った」をかける。
「さすがにそれは冗談キツイ。」
「えっ。どうして。あたしか萌ちゃんが1番したなら、ここにいる人全員あたしか萌ちゃんのストリップショー見れるのに・・・。」
「ダメだって・・・。」
僕はそういう。こんなところで萌の裸を草津、栗東、犀潟に見せることは反対。見るんだったら僕一人で独占したいよ。
「それに、もし萌ちゃんがビリになっちゃったとしたら、智ちゃんにとっても嫌じゃないか。彼女の裸を別の男子に見られるんだから。萌ちゃんだって嫌でしょ。智ちゃん以外に自分の裸を見られるのは。」
草津は僕の心の中を代弁してくれるようだ。
「そうねぇ・・・。ナガシィだったら、別にどこ見てもいいんだけどねぇ・・・。」
「おっ。だって智ちゃんよかったなぁ・・・。」
(よかったって・・・。)
まぁ、よかったのかなぁ。自分なら、どこ見てもいいっていうのなら・・・。つまり、萌の胸とか、パンツとか。そういうの自由に見てもいいってこと・・・。まさかとは思うけど、萌。自分の身体も僕の好きなようにしていいなんて言わないよねぇ・・・。言われるのもちょっと戸惑うけど、なんか・・・ねぇ・・・。やっぱり、僕男の子だね。
「・・・じゃあ、ビリになる人が誰でも、萌ちゃんのおっぱいを智ちゃんが揉む。これでよくない。」
「えっ。」
二人して目が点になる。
「いいなぁ・・・。女の子の胸揉めるって。」
草津が冷かす様な目で見る。
「羨ま・・・。お前彼女いるとか死ね・・・。こっちは次元越えなきゃいないんだぞ。」
栗東が続ける。
「いや、ここで萌ちゃんの胸を智ちゃんが揉んでも・・・なぁ・・・。」
犀潟が周りを見回していった。今時間は1時を過ぎているが、このソファーの場所が僕らだけというわけではない。
「待って。誰がこの場所で胸揉むって言った。自分の寝室あるじゃん。そこで揉んでもらうんだって。そうすれば、あたしたちに見られることないじゃん。萌ちゃんのおっぱい見るのは智ちゃんだけになって、智ちゃんだって周りの目を気にせずに萌ちゃんをイカせれるだろ。」
「いや、そういう問題じゃなくて。」
と僕が言おうとしたところ、それを萌が言った。
「えっ。やっぱり本当は自分の裸見られたくないんだろ。あっ。そうだ。智ちゃんに萌ちゃんのいい情報教えてやろうか。」
瀬野は何かをたくらむ顔になる。
「萌ちゃんな。今日水・・・。」
とそこまで行ったところで、萌があわてて瀬野の口を塞いだ。
「言わなくてもいいじゃん。」
萌が瀬野の口から手を離すと、
「今日水玉パンツ穿いてるぞ。」
と少々大きな声で言った。他の人たちはここで寝ていたりする人がいたから、そこまで視線を集中されなくて済んだか・・・。でも、萌のパンツの色を聞かされること自体久しぶりだ・・・。
「あっ。そうなんだ・・・。」
「あっ。そうなんだじゃないでしょ。もう、眞実ちゃん恥ずかしいこと言わないでよ。それも、草津君たちの前で。」
「じゃあ、智ちゃんの前ならOKだった。」
「・・・。」
「なぁ。萌ちゃん。あたしと一緒にお風呂入った時から、こういうことになること予想しといたほうがよかったぞ。だって、あたしはブラまで知ってるんだからなぁ。」
・・・お風呂に入った時には必ず脱がなきゃいけないからなぁ・・・。女の子の独自のエッチな情報網ってことでいいのかなぁ・・・。
結局。ポーカーの罰ゲームがどうなったのかというと、ゲームの中でビリの人がカードをシャッフルし、それ以外の人がトップの人にチロルチョコをおごるということだった。さっきの萌の胸を揉むっていうのは・・・。萌の胸は揉みたいし、触りたいけど・・・。萌は僕に裸を見られても、いいって思ってるのかなぁ・・・。




