表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
239/779

239列車 見せたくて

 11月14日。僕たちは東京(とうきょう)にいた。

「うわぁ。相変わらず気持ち悪いなぁ・・・。」

(もえ)が一言E5系を見ていった。E2系の鼻を長くしただけのような恰好をしているE5系はほかの新幹線とは違いすぎて目立つ。まぁ、まとっている色によって目立つということもあるのだけど・・・。

「これに乗らなきゃいけないの。」

「しょうがないじゃん。でも、帰りはE2系(イーツーけい)だからね。」

「もし、運用変更でE2系(イーツーけい)じゃなかったらどうするの。」

「・・・いや、そもそも運用変更でもE2系(イーツーけい)からE5系(イーゴけい)に変わることはないと思うけど・・・。」

E5系の先頭を携帯カメラに収めてから、僕たちは乗る号車である6号車に向かった。このE5系は「はやぶさ」ではなく、「はやて」。E3系「こまち」を連結した16両編成で、前寄りの6両。16号車から11号車が「こまち」。10号車から1号車が「はやて」である。

 僕たちは6号車14番A席とB席。業界用語でいえば「アメリカ」と「ボストン」だ。「はやて」の中はスーツ姿のサラリーマンでいっぱいになった。大概は仙台(せんだい)までで、そのほとんどが仙台(せんだい)で降りた。この先盛岡(もりおか)八戸(はちのへ)新青森(しんあおもり)まで行く旅客はそれほど多くないようだ。

 盛岡(もりおか)に到着する直前。僕たちは席を立った。目的は当然「あれ」である。

「ねぇ、ナガシィは「つばさ」の連結解放は見たことあるんだよねぇ。」

(もえ)が僕の後ろから聞いた。今ここは9号車のドアである。10号車の先のドアまで来たいところだけどドアの部分に「グランクラスご利用の方以外の入室はご遠慮ください」と書いてあったので、そこまではいかないことにしよう。

「あるよ。ていうか、(もえ)東北新幹線(とうほくしんかんせん)乗るの初めてなんだよねぇ。」

「ナガシィだって初めてじゃん。」

「・・・。」

ふと外を見ると「はやて」は一番西側の線路を走っていた。ここに入って、「こまち」を先に行かせて、後で「はやて」が新青森(しんあおもり)に向かう。ATCに従ってゆっくり走り、盛岡(もりおか)に定時着。

「ドアが開きます。」

これはJR東日本の特急車両のよくあることだ。ドアが開く前に一度電子の声がそう言う。ドアが内側に押されたかと思うと横にスライドして、ドアが開いた。早速僕たちは10号車と11号車が連結している部分に行った。

「えっ。信号・・・。」

(もえ)がまずそう声をあげた。

「ああ。あれか。ここからATCじゃないからな。福島にもあったよ。」

「あっ。そうか・・・。」

(もえ)は納得したようだった。

「14番線、停車中の列車は11時24分発。「こまち19号」、秋田(あきた)行きです。「こまち号」は前より11号車から16号車です。お乗り間違いのないようご注意ください。「こまち号」間もなくの発車です。ご利用のお客様、ご乗車になってお待ちください。」

駅のアナウンスが流れる。多分もうE3系とE5系は電気的にはつながっていないはずだ。後は「こまち19号」が発車するだけで、分かれることになる。

「14番線から、「こまち19号」、秋田(あきた)行きが、発車します。」

「「こまち19号」秋田(あきた)行き発車いたします。ドアが閉まります。ご注意ください。」

甲高い電子音がして、E3系の白い車体に赤く光っていたランプが消える。ドアが閉まったのだ。

「キィィィィィィィィィィ。」

E3系側からインバーターの音がし始める。すると連結が外れて、E3系は6両単独で、盛岡(もりおか)を出発していった。僕たちはその時色違いの携帯電話をE3系に向けていた。そう。「あれ」を撮影するためだ。

 走り出して数秒経つとそれまで開いていた大きな口が閉まり始める。E3系は走りながら大きな口を閉めて、盛岡(もりおか)を発っていった。これと当時にE5系の大きく開いた口もふさがるのだが、見ることはできない。それは、E3系に集中しているからだ。撮れた写真はE3系1000番台の「つばさ」を撮った時と同じぐらいのタイミングだった。連結器が閉まる蓋にちょっとだけ顔をのぞかせている写真だった。もっと蓋がスムーズに閉まるようになっているとこのタイミングは結構難しいだろう。

 さて、E5系の車内に戻って、この先に行く。「はやて19号」はこの先各駅停車になる。発車してすぐにIGRの電車が盛岡(もりおか)に向かって走って行くのを見た。

 眠りそうになりながら、12時33分。終点の新青森(しんあおもり)に到着した。

「寒っ。」

(もえ)が自分からすればカワイイ声をあげた。ホームドアがある新青森(しんあおもり)のホームはホームドアがある分狭く感じる。また(もえ)を連れて10号車に行き、ヘッドライトをつけているE5系の写真を撮った。そう言えば、東京(とうきょう)で撮ったE5系は携帯の中に全体を収めるだけでも苦労した。鼻が長すぎるんだよ・・・。

「ふぅ・・・。ヒャッ。」

一息つくと冷たい手がほっぺたに襲ってきた。

「ナガシィあったかい。」

(もえ)はそう言いながら、冷たい手を僕の首元までなでながら、下げてくる。

「冷たいから離して。」

「ねぇ、次のるE2系(イーツーけい)って何かなぁ・・・。」

(もえ)の問いに僕は一番西側のホームに止まっているE2系を見た。あれの可能性が高い。

「ちょっと待ってて。」

そう言って(もえ)の冷たい手から離れようとしたけど、そうはさせてくれないんだ・・・。確認すると13時42分発の「はやて28号」だった。ここから確認できることは窓が2列単位になっているのでE2系1000番台だということだけ。それ以外は何もわからない。そのあと編成番号を見たがJ68となっていた。E2系は行先表示が東京(とうきょう)となっていて、いつでも東京(とうきょう)に向けて発車できる準備が整っているが、ホームドアは閉まったままだし、客室用扉もすべて閉まっているから、まだ旅客扱いはしてないみたいだ。

「時間あるから、どこか行こうか。」

(もえ)を促して、外に出た。切符は無効印を押してもらい、取っておくことにする。

 外に出てみるとこれが新幹線のある駅かと思うぐらい何もない駅だった。遠くにショッピングモール的なものは見えるのだけど、そこまで行かないと無いのかと思う。さすがに地震とか結構いろいろあったからかなぁ・・・。

 結局新青森(しんあおもり)に合ったお土産屋さんとかが密集しているところにあったお店でお寿司を買って食べ、789系を道から見上げる形で撮り、13時20分に入線した「リゾートしらかみ1号」のHB-E300系を撮り、新青森(しんあおもり)のホームに上がった。ホームにはE2系以外3本列車が止まっていたが、そのすべてがE5系。鼻の長い奴がいっぱい止まっていた。

 13時42分発の「はやて28号」は盛岡(もりおか)新青森(しんあおもり)間は八戸(はちのへ)しか停車しない。盛岡(もりおか)に到着すると「はやて28号」は「こまち28号」を従えて、東京(とうきょう)に向かう。その連結作業を見るために再び盛岡(もりおか)で降りた。しかも、今度は乗った号車が2号車だったので、見に行くには最悪に等しかった。

 14時38分。連結する相手である「こまち28号」が入線。大きい口をガバッと開けているその顔を撮影して、8号車から乗り込み、2号車の指定席に向かった。席に着くと(もえ)が口を開いた。

「今日はありがとう。」

「えっ。」

「もうちょっとでE3系(イースリーけい)もなくなっちゃうじゃん。それに「はやて」にも乗せてくれて。ありがとうってこと。」

「・・・。別に。」

僕はそういうと流れていく外を見た。

「ねぇ。今度は秋田新幹線(あきたしんかんせん)に乗ろうよ。」

「・・・これで結構お金使っちゃったから、すぐは無理。」

「分かってるって。またいつか。」

「・・・。」

「はぁ。楽しかったよ。「こまち」の連結解放も見れたことだし・・・。」

「見せたかったの。」

「んっ。」

聞こえなかったのかなぁ・・・。

「見せたかったんだって。(もえ)にも。」

何か身体がほてっているのは気のせいだろうか。

「だって、鉄研に入ってから、ここに(もえ)もいたらなぁって思うことがよく会ってさぁ。博多(はかた)行った時に「レールスター」に乗った時も、青森(あおもり)行くのに「はくつる」に乗った時も、富山(とやま)行った帰りに「はくたか」に乗った時も。毎回萌(もえ)も連れてきたかったなぁって思うことがあってさぁ・・・。なんか僕ばっかりずるいような気がして・・・。」

「えっ。それで暇なら行こうって言ってくれたわけ。」

「・・・。」

ちょっとの間沈黙があっただろう。すると(もえ)はクスッと笑った。

「えっ。」

「らしいな。」

(もえ)は一言そういっただけだった。

「ありがとう。今日は本当に楽しかったから。だから・・・。」

「・・・ちょっ。だから冷たいってばぁ。」

何。僕って結局(もえ)にはいじられる立場なわけ・・・。

 東京(とうきょう)到着すると「はやて」の切符に無効印を押してもらい、東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)に乗り換える。ここからは「のぞみ」で一気に大阪まで帰る。

「・・・ナガシィ。」

(もえ)が僕の肩をつかんで呼び止めた。

「何。」

「何編成。」

(もえ)は8号車よりについている7号車の車番を見せて、僕にそう問いてきた。車番は787-3002となっていた。N700系3000番台はJR西日本の持ち物。その証拠に787の左隣にあるJRマークは青くなっている。

「N編成じゃん。」

「今度どこに乗るわけ。」

「えーと。4号車の10番「デンマーク」と「イングランド」。」

今出てきたのも業界用語。「デンマーク」はD席。「イングランド」はE席のことである。今までC席のことが出てきていないがC席は「チャイナ」だ。

「早く行こう。」

「・・・分かってるって。」

(もえ)は僕の手を握り、僕を引っ張る形で4号車まで連れて行った。今日はご機嫌なのか不機嫌なのか・・・。ちょっとわからなかった。でも、ご機嫌だろう・・・。

(この手はいつまで握れるのかなぁ・・・。)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ