238列車 思いつき
11月。この月の14日。学校はほかの学科がたくさん遠足に出かけるので、その日は学校が休校となる。そんな日がある月だった。
「・・・。」
僕は一人時刻表とにらめっこしていた。いま開いているページはJR時刻表の東北新幹線のページである。
「えーと。E2系の「はやて」・・・。「はやて」・・・。」
指を目で追いながら、僕は時刻表にE5系という表示のない新青森行きの「はやて」を探していた。すると新青森行きの「はやて11号」、「はやて17号」、「はやて27号」、「はやて39号」。東京行きの「はやて26号」、「はやて28号」、「はやて38号」しか残っていない・・・。他はすべてE5系で運行される「はやて」になっている。今、東北新幹線にE5系が何本投入されているかはわからないけど、E2系「はやて」の数がE5系の投入率を物語っていた。これで、来年の春にはE2系「はやて」が危なくなる。
(まだE2系が元気なうちに新青森にでも行ってみたいなぁ・・・。)
時刻表に目を通しているとどうしても速達「はやて」に乗りたくなってくる。しかし、時間が問題だ。停車駅が上野、大宮、仙台、盛岡、八戸しか停車しない速達「はやて」で一番最初に東京を発車するのは8時28分発の「はやて17号」。しかし、この「はやて」に乗るためには新大阪をいくら早く出ても間に合わない。それほど乗り換えに時間がないのだ。だったら。この「はやて」には自動的に乗れないことになる。次に出る「はやて」はE5系を使った「はやて19号」。停車駅は「はやて17号」にいわて沼宮内、二戸、七戸十和田が加わっている。この後の「はやて」は12時56分東京発の「はやて27号」まですべてE5系の表示・・・。
(こんなのまってたら、日がくれちゃうよ・・・。)
今度は東北新幹線上りダイヤを見てみた。さっきの「はやて19号」が新青森に到着するのは12時33分。到着直前に数少ないE2系「はやて26号」が新青森を発っている。この次は同じくE2系「はやて28号」。その「はやて28号」は八戸、盛岡、仙台、大宮、上野の速達タイプ・・・。東京到着は17時08分・・・。
「ナガシィ。」
萌のそういう声が聞こえた。
「また、120円でどこかに行こうって思ってたんじゃないの。」
「う・・・うん。確かに。さっきまでは思ってたよ。」
「さっきまで・・・。」
萌が聞き返してきた。
「なぁ、今回はさぁ、お金は僕が持つから、どっか遠くにでも行ってみない。」
「遠くってどこへ。」
「・・・し・・・新青森・・・。」
「へぇ・・・。新青森かぁ・・・って新青森。」
(・・・そりゃそうなるよねぇ・・・。)
と思いながらも、僕は新青森行きを詰めた。本当に新青森まで日帰りで行くことは可能になっているんだ。日本もだんだん新幹線で近くなってきはじめちゃってるなぁ・・・。
11月7日。今日は英会話の授業が終了するともう授業がない。前期に管理者の授業を受けていた人たちも、授業がない。というわけで、学科内全員がここで授業終了だ。今日は授業が終わってもすぐに帰らず、校舎の中に残っていた。近畿が誘ってきたからだった。今は1階の自動販売機の前においてある机で、近畿が宿題を終わらせているのを見ていた。その場所には萌もいて、デュエモをやっている。
「はぁ。お前らそんなところ行くの。」
近畿は目を点にして聞き返してきた。まぁ、当然の反応だろう。草津に言っても、高槻に言っても、同じような反応が返ってくるだけだろう。
「かぁ。すごいなぁお前。」
「いやぁ。思い始めたら、本当に止まらなくて・・・。」
「本当。ナガシィったらそういうところどうにかならないかなぁ・・・。」
「い・・・いいじゃん別に・・・。お前だって行けるのが嬉しいんでしょ。」
「・・・。」
「あっ。じゃあさぁ、新青森行ったらE5系撮ってきてくれない。」
「ああ。乗る「はやて」がE5系だからなぁ・・・。」
しばらく話していると栗東もそこに加わって、しばらくの間そこにいた。僕たちがいる前は予備校に通じるでは入口になっていて、そのシャッターが閉まってすぐに僕たちは外に出た。外に出て、すぐ解散したわけでもない。ちょっとした手ほどきを栗東から受けていた。
「ピロロ、ピロロ、ピロロ、ローン。・・・ファァァァ。フォォォォォン。」
栗東の持つスマートフォンからこういう音が流れてくる。警笛当てクイズである。
「智ちゃん、萌ちゃん。これ何。」
「えーと・・・。」
僕は近畿が部屋に泊まりに来た時見せてもらった動画を思い出した。大阪市営地下鉄の車両は新しい車両と更新車の警笛が低く、未更新車や古い車両の警笛が高いという傾向にある。今の警笛は低かったし、まだクイズは始まったばかりだから・・・。
「10Aでしょ。」
「正解。」
「よく警笛だけで分かるわねぇ・・・。」
「ピンローン、ピンローン、ピローン、ローン。・・・・・・ファン。」
さっきの電子音と違って明らかに空気笛感マックスの音である。
「10系未更新・・・1104F・・・。」
「これ分からんかったらなぁ・・・。」
この次の警笛は御堂筋線21系。これは走行音で判断。次の御堂筋線30000系はブレーキ解除音で判断。次の北大阪急行8000系はブレーキ解除音だけで判断した。警笛クイズなんだから、警笛だけで判断しろよという声もあるかもしれないが、そんな細かいところは気にしない。この先、谷町線30系(ステンレス車)、谷町線30系(アルミ車)、谷町線30系3544F、谷町線22系、谷町線22系22615F、谷町線22系50番台、谷町線22系22662F、谷町線22系更新車、谷町線30000系、四つ橋線23系、中央線20系、中央線24系、近畿日本鉄道7000系、近畿日本鉄道7020系、千日前線25系、千日前線25系更新車、堺筋線66系前期車、堺筋線66系後期車、阪急電鉄3300系、阪急電鉄3300系更新車、阪急電鉄5300系、阪急電鉄7300系、阪急電鉄7300系更新車、阪急電鉄8300系、長堀鶴見緑地線70系前期車、長堀鶴見緑地線70系後期車、長堀鶴見緑地線70系更新車、今里筋線80系の順番で警笛だけを流されたが、分からないもののほうが多い。特に堺筋線は最初どこを流しているのかわからなかった。
さて、そんなことをしていたら、時間が結構経った。僕たちが荷物を担いで、立ち上がると、
「あっ。智ちゃん。今日ちょっとお前の部屋遊びに行っていい。」
と言ってきた。
「えっ。あんまり遅くまでいたら・・・。」
「大丈夫だって、大和路線の最終の王寺行きに乗れれば帰れるわけだし。」
「・・・。」
「ふぅん。じゃあな。」
栗東とはそれで別れた。
さて、部屋に入るとなにをするか。まずは緑地公園で勝ってきたマックスを食べることである。僕たちは普段生活している部屋に3人で入った。さすがに3人入るとこの部屋の狭さがわかる・・・。それが終わると今度はパソコンを開いて、ネタ動画あさり。近畿が知っているネタ動画を見て笑っていた。
しばらくたつと近畿が眠気に負けて寝入り、僕と萌だけが起きているようになった。僕たちもしばらくはパソコンをしていたけど・・・。ちらっっとパソコンの画面右下の時刻を見た。
「近畿・・・。」
僕は近畿の身体を少しゆすった。それだけでは起きそうになかったので、もう一度ゆすってみた。するとゆっくりゆっくり近畿は目を開けた。
「もうすぐ御堂筋の終電出ちゃうぞ。」
「・・・んっ・・・。智ちゃん。今何時。」
近畿は目をこすりながらそう言った。
「23時30分なる。」
「・・・。」
萌は僕のベッドの上から近畿を覗き込んでいる。近畿は僕のすぐ右で体を4分の1回転させると、
「ごめん。智ちゃん。朝まででいいから泊めてくれ。」
「・・・分かったよ。」
「・・・なぁ、御堂筋の緑地公園始発って何時何分。」
「5時11分。」
「・・・そうか・・・。5時11分かぁ・・・。」
近畿はあくびをして、また目を閉じた。
さすがにヤバいということで、日付を越えそうになる直前に僕のベッドの上で二人で寝た。
何分ぐらい経っただろう・・・。
「智ぉちゃん。」
近畿が口を開いた。寝ていたわけではないのだろうか・・・。
「ちょっと。床寒いなぁ・・・。」
近畿は分かりきったようなことを言った。
「ああ。さっきエアコンのタイマー切れて、止まったからなぁ・・・。」
「マジすか・・・。どうりで寒いわけだ・・・。ところで、萌ちゃんは。」
「えっ。萌。いるよ。ここで寝てる。」
「よく寝るな。男二人いるこの部屋で。下手したら、ヤバいことされるかもしれないのに・・・。」
「まぁ、それは俺がさせないけどねぇ・・・。」
「分かってるって。冗談。大体俺にも彼女はいるわけだし。」
「・・・。」
「ナガシィ・・・。走ると転ぶってばぁ・・・。」
その言葉に驚いた。普段萌の寝顔は見ることはないわけだし・・・。ていうか、今萌はいったいどういう夢を見ているんだろう。
「心配されてるぞ。」
「転ぶって。俺は萌の中じゃあ本当にドジなんだな・・・。」
不満そうな声で言う。
「いいんじゃないの。別に。」
「・・・。ドジじゃないつもりなんだけどなぁ・・・。」
(・・・じゃあ、昨日は何だったんだよ・・・。)
そのあとは別に会話も続かず、僕たちは思い思いに布団をかぶって、寝入った。
結局起きたのは8日の3時56分だった。これ以上寝ていると5時に近畿を送り出せないと思って、起きた。ゴツーン。起きた瞬間何かにぶつかった。
「イターイ・・・。」
眠っている目をこすって、見てみるとぶつかった相手は萌だった。
「もう・・・。ナガシィ。痛いなぁ・・・。」
「・・・。」
僕は口の前で人差し指を一本たてた。
4時50分。近畿が起きたので、部屋の明かりをつける。全員昨日の服装のままである。5時になると近畿は部屋を出て、遅い家路についた。数時間後。僕たちはまた会うのだ。




