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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
237/779

237列車 シュール

 加茂(かも)から発車するキハ120系ディーゼルカー1両の列車はお客さんでいっぱいだった。僕たちは進行方向前寄りで固まるしか無かった。進行方向後ろよりに配置されているクロスシートの近くにはたくさんの乗客が集中しており、とてもじゃないが、車内を満足に移動できるスペースはない。

「まぁ、(とも)ちゃん。発車したら、寄りかかっていい。」

栗東(りっとう)がそう聞いてきた。

「なんで。こいつはそんなに加速よくないから、寄りかからなくても大して変わらないよ。」

僕はここに乗車したときのことを言った。キハ120はそんなに加速が良くなかった。ゆっくりゆっくりと走りだして、ゆっくりゆっくりと道中をゆく。

「いやぁな。分からないじゃん。発車と同時に3Gぐらいかかるかもしれないじゃん。」

「どんな重力がかかってるんだよ。ていうか、どういう加速をしてるんだよ。」

 10時39分。加茂(かも)発車。電車なら発車と同時に後ろのほうへ倒される。これは電車の加速能力がいいことを言っている。キハ120も進行方向後ろ側の足に体重がかかってくるのだが、電車ほどではない。

「遅い。こんな加速・・・。面白くないなぁ・・・。」

「気動車だからなぁ。仕方ないって言えば仕方ない。」

草津(くさつ)がそう言った。

 次の駅は笠置(かさぎ)。この駅でクロスシートに方で固まっていた乗客が全員降りた。ここまでの団体客だったらしい。さて、ようやっと後ろへ移動できるようになったため、女性陣はちょうどあいたクロスシートに。男性陣は前のほうにあるロングシートに。座らない人はクロスシートの近くか運転台の近くで立っていた。しかし、立っていた男性陣も僕と(もえ)伊賀上野(いがうえの)に着いた時には席に腰掛けた。僕と(もえ)栗東(りっとう)が座っていたクロスシートが開いたので、そこに。女性陣が座っていた近くでずっと立っていた内山(うちやま)は僕たちが座ったクロスシートに腰掛けた。

「なんかすごい田舎に来ちゃったなぁ・・・。」

内山(うちやま)が一言。

浜松(はままつ)のほうもこんな感じ。」

浜松(はままつ)は町中はにぎわってるよ。でも、浜松(はままつ)市って縦に長いから、山の中に行っちゃうとこんなところもあるね。」

今周りには田んぼが多く広がっている。

「へぇ。」

「まぁ、そこはあんまり驚かないけどさぁ。問題はここも大阪(おおさか)の大都市近郊区間の内ってところだよなぁ・・・。こんなところ普通ならそうならないのに・・・。」

「そうだな。ふつうならそうならないね。」

気が付くと高槻(たかつき)が近くにいた。

「でも、栗東(りっとう)。今まで通ってきた駅って、全部1両の気動車が停車する割には大きすぎたと思わない。」

「そうだな・・・。ほとんどの駅が入れ替えできるようになってたしなぁ。・・・てことは昔はもっと列車多かった・・・。」

「いや。ここは昔から旅客はすたれてたよ。でも、貨物列車とか奈良(なら)に行く急行とかがひっきりなしに走ってたからなぁ。それで全部の駅が待避可能ってだけ。そして、そういうことがあったから大都市近郊区間になってるんじゃないのか。」

高槻(たかつき)の見解であった。

 柘植(つげ)に到着すると加茂(かも)から乗ってきたキハ120系300番台から下車。亀山(かめやま)からきているキハ120系0番台の到着を待って、発車していった。ここでしばらく時間があったので、昼ご飯を食べる人がほとんどであった。次に乗る草津線(くさつせん)の列車は113系の抹茶色の地域色。昼ご飯を食べ終わった人から、だんだんとその列車を眺めるようになっていった。

「おっ。これうちのところと同じようだなぁ・・・。」

「何が。」

瀬野(せの)の言葉に蓬莱(ほうらい)が反応する。

「これさぁ。ここを押すとドアが開くんだよ。」

「へぇ。」

その言葉で試にと言うことだろう。蓬莱(ほうらい)はそのボタンを押した。するとさっきと同じようにドアが開いた。

「閉めるときはどうすればいいの。」

蓬莱(ほうらい)は言いながら、外側についているドア横のボタンを押していた。

「閉めるボタンが内側にしかないから、閉める押して、すぐに出る。」

「へぇ。面白い。」

「・・・面白いねぇ。」

「アハハ。実習室にある模型のドアみたいに遊んでるよ。」

「まぁ、面白いことには変わりないじゃん。」

「お前らまで遊んでるなよ。」

 草津線(くさつせん)に乗って草津(くさつ)までやってくると栗東(りっとう)が話しかけてきた。

(とも)ちゃん。さっきさぁ、怪しい建物見つけたんだけど。」

「怪しい建物・・・。」

聞き返した。いったい何を見つけたというのだろうか。ていうか、草津線(くさつせん)沿線にそんな建物あったか・・・。

「3つほど見つけたなぁ。一つがホテル太陽っていうのでな。建物の上になんか変な銅像みたいなのが立ってて、恰好がどうだったかなぁ・・・。」

「アメリカの自由の女神みたいな格好してた。」

それに内山が付け加えた。

「ホントに面白くてさぁ。笑っちゃった。」

「はぁ・・・。」

全然面白さが通じてこないのだけど・・・。他にももうひとつ面白いホテルとかを見つけたらしい。それは名前が少しばかり怪しいかったらしい・・・。

この先は新快速(しんかいそく)に乗車だ。新快速(しんかいそく)近江塩津(おうみしおつ)まで行く。13時20分発の新快速(しんかいそく)近江塩津(おうみしおつ)行きは225系4両と223系4両の8両編成であった。僕たちが乗ったのは225系のほう。と言うわけで、僕の初めての225系0番台の乗車経験となった。225系は静かに安定して走り続けるのだけど、僕にとっては223系の電動車のようにもうちょっとモーター音が聞こえてもいいのではないかと思っていた。14時35分。終点の近江塩津(おうみしおつ)に到着した。

 女性陣はそのホームにあっけにとられていた。

「何このホーム狭ッ。」

「そして、長ッ。」

「これだけホームが長いとこんなに長い列車も来るってことじゃないの。」

「来ないよ。」

それには木ノ本(きのもと)が答えていた。

「えっ。こないのにこんなに長いの。無駄じゃん。」

「・・・。」

さて、すぐに湖西線(こせいせん)経由の新快速(しんかいそく)網干(あぼし)行きが入って来た。ここで223系1000番台。これのV編成は5編成しかないので、225系のY編成にあたるのと同じぐらい難しいことだ。乗り込んだのは2号車(モハ223形)である。この車両の進行方向後ろよりの補助席に掛けようと補助席を出したとき、

「んっ。なんだこれ。」

黒いものが一緒に出てきた。形からして・・・。それはすぐに車掌に届け出た。それは財布で1万円以上の金銭と免許証。さらにはゆうちょのキャッシュカードまで入っているというありさまであった。うーん。見つけたのが僕でよかったのかなぁ・・・。まぁ、免許証が入っているということは持ち主が向こうから現れるのは時間の問題。そもそも。名乗り出なかったとしても、自分のものにする気はなかった。

(本当にあるんだなぁ・・・。今週の授業で聞いたばっかりだよ・・・。)

と思いながら、4号車(クモハ223形)から2号車(モハ222形)に戻った。ああいう落し物はお客様が長時間座っているとき、ズボンの後ろポケットにものを入れているという感覚がだんだんと薄れてくるから、そうなるということらしい。だとすれば、あの財布の持ち主も長時間補助席に座っていて、後ろポケットに財布を入れているという感覚がなくなって来たってことだろう・・・。でも、財布が見つかって正直びっくりした。

 近江今津(おうみいまづ)で前寄りに8両編成を増結。これで姫路(ひめじ)か終点の網干(あぼし)まで12両編成のまま走って行く。前に連結する車両はテールライトの漢字から車両が判断できたため、ホームに入る前に2号車に戻った。前に連結された車両は223系2000番台であった。まぁ、225系だと発車の時の振動がこっちにやってくるわけだ。223系同士ならそれがないから相性のいい編成だ。

 湖西線(こせいせん)を南下して、京都(きょうと)。次が高槻(たかつき)だ。高槻(たかつき)に停車すると僕たちの乗る10号車(モハ222形)は階段のある場所の下のスペースが一番近い場所に停車する。そこにも面白い光景が待っていた。

(とも)ちゃん。こっち見てみい。」

栗東(りっとう)がそう言うので、ホームを見てみた。するとそこは雨どいのようなパイプが走っている場所だった。2本パイプが走っていて、そのパイプの間にお菓子の「ポテトチップ」の筒が見事に直立してはまっていた。

「スゲェなぁ・・・。何このシュールな光景。」

「はめた人すごいなぁ。これであれだよ。全員ポテト食べたらここにはめてくんだろうぜ。」

「それはそれで嫌だなぁ・・・。」

高槻(たかつき)を発車して、大阪(おおさか)。ここに到着すると終点が近づいてきたことを実感する。大阪(おおさか)を一度通り過ぎて、尼崎(あまがさき)に到着。後はJR東西線(ジェイアールとうざいせん)大阪城北詰(おおさかじょうきたづめ)に行けばいい。尼崎に到着した新快速(しんかいそく)を下車し、JR東西線(ジェイアールとうざいせん)学研都市線(がっけんとしせん)直通の207系0番台の編成に乗車する。後はこれで大阪城北詰(おおさかじょうきたづめ)まで揺られていればいいだけである。

 16時56分。すべてが終了した。これで120円の一筆書きも終了である。一筆書きが終了したことを難波(なんば)さんに報告して、後は順次解散である。女性陣とは大阪城北詰(おおさかじょうきたづめ)駅で別れ、僕たちは梅田(うめだ)駅まで一緒に行動した。梅田(うめだ)に着いた僕たちは流れ解散で僕たちはしばらく梅田(うめだ)のホームにいた。立て続けにやってくる御堂筋線(みどうすじせん)の10系(抵抗制御方式)、10A系(IGBT素子VVVFインバーター制御)、21系(GTO素子VVVFインバーター制御)、北大阪急行(きたおおさかきゅうこう)8000系。いっこうに30000系だけが姿を現すことはなかった。今日は動いてないのかもしれない・・・。結局千里中央(せんりちゅうおう)行きの北大阪急行8000系第4編成に乗って緑地公園(りょくちこうえん)まで戻った。

 10月29日。

「えーと。永島(ながしま)君の出席状況なら・・・。」

今は個人面談中である。これで内定を撮った時どちらに比重を置くかなどの話を聞いているのである。

「はい。今の状態だったら十分東海に推薦できます。」

「・・・。」

(もえ)は・・・。あいつはどうだったんだろう・・・。)

頭の中をよぎる。

 面談が終了するとスーツ姿の僕は学校を後にした。日が短くなっているせいであたりは暗くなっている。

「慢心するなってことだよね。」

僕は言い聞かせるようにして、学校を背に歩いていった。


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