230列車 殴られたい?
8月21日。今僕たちは四日市にいた。
「暑い・・・。ナガシィなにか飲み物ない。」
「持ってないけど・・・。」
「神経おかしいでしょ・・・。なんで飲み物持ってないわけ・・・。熱中症になっちゃうよ。」
心配してくれるのはありがたい。でも、今僕が飲み物を持っていないのは仕方がない。浜松に変えるときに水筒を持っていき忘れたからだ。
「まぁ、もうちょっとの辛抱でエアコン完備のやつに乗れるから。」
「そうだけどさぁ・・・。ねぇ、なんでナガシィは「みえ」に乗った後に四日市で乗り換えて、そのあとの快速で亀山に行こうとしたわけ。亀山までダイレクトで行けるならそのまま行っちゃってよかったじゃん。」
顔が引きつりそうになった。キハ75の「快速みえ」に乗りたいと言ったのはどこのどいつだ。まぁ、僕も乗りたいと思っていたから、萌の面倒な計画にも賛成したのだけど・・・。考えてみれば、そのまま東海道本線で素直に言ったほうがよかったかもしれない。四日市は関西本線の駅。名古屋を起点に亀山、柘植、加茂、奈良、王寺、天王寺を通ってJR難波にいたる路線である。乗りつぶしマップをもらってからというもの萌はあそこに行きたい、これも乗りたいみたいなことを言い始めた。就活終るまでそれはちょっと待て・・・。
「ところでもう「南紀」来てよくない。」
萌が時計を見てそう言った。確かに。時間は9時34分。もう「南紀3号」接近のアナウンスは流れてもいい時間になっている。「南紀」の停車時間はこんな駅では30秒あれば十分だろう。しかし、いくら停車時間が30秒でもホームに入ってこないのでは話にならない。しばらくたつと「特急南紀3号」紀伊勝浦行きが2分遅れで入線。発車も2分遅れ。そのあとに入ってくる9時40分発快速亀山行きも2分延着。発車も2分延着で四日市を発車した。
列車は席のほとんどが埋まっている具合。次の南四日市まで行く間に車掌が車内を通って、進行方向前方の運転士がいる乗務員室まで車内を歩いてきた。やっていることはまるで遠州鉄道である。南四日市に到着する車掌はドアを開け、降車する客の切符を自分で回収する。やっていることはまさしく遠州鉄道だ。遠江急行は切符を駅員が回収している。その点で両社は違う。
亀山着は2分遅れのまま。接続で11時14分発の普通加茂行きに乗車する。この先関西本線は非電化になり、走る車両は当然ながらディーゼルカーになる。使用車両はキハ120系。去年大糸線に乗車したときにもお世話になった車両だ。JR西日本のローカル線用ディーゼルカーである。車内はロングシートで1両のディーゼルカーは半分ぐらい席が埋まっている状態だった。ここで着席しなかったら、柘植まで恐らく座ることができない。二人で隣り合って座れるところがあったので、そこに座った。列車は定刻で亀山をゆっくりスタートした。
「ナガシィ。なんで関西本線で大阪帰ろうって言ったの。」
(だから・・・。)
いい加減殴りたいと思った。でも、萌相手にそれをやるとあとで自分がとてつもない被害を被るからやめておこう・・・。クソッ・・・。萌を一発殴りたい。そう言ったのだってお前じゃないかと内心思いながら、
「誰だよ。東海道で帰るのは面白くないからって、プランたてさせたときにくすぐってきたのは・・・。」
「・・・だって。関西本線って幹線のわりにローカル色強いじゃん。」
「それ言ったらおしまいだろ。」
本当にその通りだ。時刻表で黒い線で描かれている線路も列車が多いという保障はどこにもない。この近くでいえば紀勢本線みたいに列車がほとんど設定されていない路線だってあるのだ。まぁ、まだ紀勢本線には特急が走っているからそれほど問題ではないかな・・・。大阪近隣で言ったら京都から出ている山陰本線がいい例である。それは時刻表を見ていただければわかることだ。
しばらくゆっくりゆっくり走ると関。駅は1両のディーゼルカーが止まるにはもったいないぐらい長い。昔は5両以上の列車が多数設定されていた証拠だろうか。とにかく1両では足りすぎている。関西本線の特徴はこういうところでもある。足りすぎているホームの長さはその昔、長大編成の列車がここを往来していたことを意味している。需要がなくなってきたり、国鉄の経営を少しでも改善するために、短編成かが行われる。施設のいらない部分を壊すのにもお金がかかるからそのままにしておく。その状態が現在だ。
関をまたゆっくり発車。このスローペースに揺られて、柘植。柘植では草津線の抹茶色に塗られた113系と亀山行きのキハ120系単行と出会い、その先にゆっくりゆっくりコマを進める。加茂に着いたら、乗り換え。ここから先はJR西日本が「アーバンネットワーク」と称する区間を走る快速列車「大和路快速」に乗り換え。
「ナガシィ。「大和路快速」で一気に大阪まで行っちゃえばいいじゃん。」
乗り換えるとすぐに萌はそう言った。
(だから・・・。)
もう我慢の限界である。
「それ全部萌が言ったんだろ。」
8両で止まっている「大和路快速」。僕たちがいる1号車(クハ221形)の中には僕たち以外誰もいない。迷惑だからいけないが、大きな声で萌にどなりつけた。
「・・・そうだけど。」
「プランの通り帰るからね。まだまだ大阪には入らないよ。」
この先もそのプランの通りに僕たちは行動した。「大和路快速」で久宝寺まで揺られる。久宝寺から4月にこっちに来た時とは逆におおさか東線で放出へ。放出から学研都市線を木津まで乗車。木津から奈良線の「みやこ路快速」に乗車して、京都。京都から新快速とも思ったが、ちょうど発車してしまったので、緩行線の207系でゆっくりと新大阪までコマを進めてきた。御堂筋線に乗り換えたが、車両が30000系ということはなく10A系に乗車。緑地公園で下車をして、ちょっと早い夕ご飯。
夕ご飯を終えて、部屋に行こうとすると、
「あっ。智ちゃん。」
高槻と会った。えっ。僕の呼称はいつの間に智ちゃんになったんだ・・・。まぁいいけど。
「久しぶり。帰って来たのか。」
「うん。」
「へぇ・・・。どう浜松。楽しかった。」
「それはもちろん。」
学校の前に座れそうな場所があるから、そこで高槻と話していると草津も加わった。
「へぇ。結構遊んできたな。」
「あっ。そう言えば草津。遠州鉄道の30系の26号引退すること決まったぞ。」
「えっ。あれ引退するの。惜しいなぁ・・・。今日本で一番古いMcとTcだろ。」
草津の言うMc、Tcというのは前者が「制御電動車」でモーターのついている車両。後者は「制御車」で運転士が乗る乗務員室がある車両でモーターが搭載されていない車両を言う。
「そうかぁ。引退するのかぁ・・・。」
「あっ。後際まで貫通幌がついてるのも分かったよ。その26号と25号が、連結面にあるのが雨どいだけで、際まで幌がついてた。」
「なるほど。雨どいまで隠したらN700系の全周幌かぁ・・・。」
というのはN700系新幹線のそれぞれの車両の連結面は全て騒音軽減のためおおわれているからである。
「うわぁ・・・。在来で全周幌かぁ・・・いらなくね。」
高槻がそう言った。
「そうだな。在来じゃあいらないね。東海でも313系に付けることは考えなかったし。」
「でも、ダンパはつけたな。」
「・・・そうだな。」
ちょっと話に詰まった。
「あっ。草津。新大阪に来る間に207の量産先行みたいなやつを見たんだけどさぁ。」
「えっ。F編成見たんだ。」
「あれっていまだに現役。」
「ああ。ふつうに営業入ってるよ。初期GTO。もう登場して20年以上経つね。」
「おお。さすがJ西。「古いものを大切に使いましょう計画」。」
「国鉄か。」
しばらくそう言う方面の会話をして、また会話に詰まった。
「そう言えば、お前らどういう帰り方してきたんだ。」
「えっ。関西線に乗って、そのあと東線のって、学研都市に乗って、奈良線で帰ってきた。」
「・・・ぐるっと一回りしたね。」
と草津。
「・・・へぇ、奈良県に1度も入らない奈良線でねぇ・・・。てことは103系見てきた。」
「ああ。うん。奈良線って未だに。」
「そうだよ。奈良線っておじいちゃんをまだ平気に使ってるよ。まっ、あいつらもいつまで生き残れるか。この頃危なくなってきたからなぁ。」
「そうだな。奈良線普通にも221系入れ始めてきたからな。」
こういう話をして、今日は解散。翌日から、僕と萌は学校に戻ってきた。駅でアルバイトをしている近畿とも久しぶりに会い、浜松であったことを近畿たちにも話した。でも、僕があったのは昨日のメンバープラス近畿と千葉だったため、そんなにはなせたわけではないが・・・。それでもだんだんと会っている人員は増えていった。瀬野、蓬莱、内山、水上、羽犬塚。後のメンツはまだまだ合っていない。こっちにちょっと遅れて戻って来た木ノ本、留萌にもあったし、九州の長崎に帰っていた暁とも会った。後は学校が始まれば会うことかぁ・・・。




