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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
229/779

229列車 生存報告と1から6

 8月18日。僕たちはまた一つの屋根の下に集結していた。今日は地元のお祭り。(もえ)磯部(いそべ)たちと一緒にお祭りに出かけて行ったけど、僕は中学校に上がって以来地元のお祭りに入ったことがない。だが、6月にやる花火大会には行っている。僕はふつうにお祭りが嫌いだ。特に嫌なのが北石(きたいし)みたいに自分の後輩に会うことと同級生に会うことだった。まぁ、同級生でも磯部(いそべ)たちや今迄に話したことのある人ぐらいだったら別にあっても構わないのだけど・・・。

(とも)。お前こっちに来てから高校生の時の同級生とは会ったのか。」

「会ったよ。ていうか今日だけど。」

「あっ。今日行ったんだ。」

駿(しゅん)兄ちゃんがそう言ったのは今日浜松(はままつ)の町中で乗物フェスタというものがひらかれたからだった。どういうものだったかというと・・・、

「おい。」

僕は外にいた一人を見つけてつついた。その人はこちらを向いて驚いたような顔で僕を見た。

「あっ。ナガシィ先輩。久しぶりです。」

「よーす。」

ナガシィ先輩っていうこの呼称でだれかどうかは分かったかなぁ。相手は柊木(ひいらぎ)だ。

「あっ。永島(ながしま)先輩。お久しぶりです。」

「よーす。」

己斐(こい)も話しかけてきたので挨拶を返す。ふと展示場を見てみれば、他に瀬戸学院の人たちもいる。この場にいるのは醒ヶ井(さめがい)善知鳥(うとう)先輩、綾瀬(あやせ)先輩・・・。えっ。永原(ながはら)・・・。高校生は柊木(ひいらぎ)北石(きたいし)諫早(いさはや)空河(そらかわ)朝熊(あさま)己斐(こい)、中学生は大嵐(おおぞれ)がいるだけ。まぁ、これだけでも回るから問題はないだろう。だが、僕が今一番意外に思っているのは永原(ながはら)がこの場にいることだった。

永原(ながはら)。」

声を掛けた。

「あっ。体験運転はこちらが・・・ってナガシィ君。」

「・・・よーす。僕は体験運転はやらないよ。」

「久しぶり。こっち帰ってきてたの。」

「ああ。今日はこっちで展示があるって言ってたから、醒ヶ井(さめがい)に半強制連行って感じで来たんだけどねぇ・・・。」

「えっ。いつ大阪(おおさか)から戻ってきたわけ。」

「8月1日・・・。」

「あっ。そんな前だったんだ。一声かけてくれてもよかったのに。」

「あのねぇ・・・。永原(ながはら)のアド知らないって・・・。」

(正直会いたくなかった・・・。)

すぐ後はなんかお互いあまり話すことが見つからなくて、そのままでいた。こちらに今走らせている313系「セントラル(ゼニトラレル)ライナー」が来た時永原(ながはら)は何かに気付いたみたいだった。

「あの。綾瀬(あやせ)先輩。脱線しています。」

見てみると確かに脱線している。これを直すのは永原(ながはら)よりも僕のほうが時間がかからないだろうというのが本音だけど、今僕はここに半分観客としてきている。

「ねぇ、ナガシィ君。ちょっと脱線直して。あたしよく分からないんだけど・・・。」

「・・・分かったよ。」

脱線している2号車(モハ313形8500番台)を線路に戻したら、

「アヤケン先輩。オッケイです。行ってください。」

そう言ってまた立ち上がると僕の後ろで見ていた永原(ながはら)が、

「さすが鉄研。やること早いねぇ。」

「・・・家でもいじってるからあれぐらい簡単に直せるよ。新幹線は除くけどねぇ・・・。」

「・・・ねぇ、ナガシィ君言い忘れてたけど、ここにあたしがいるってことはほかの人には絶対に言わないでね。」

「えっ。でも、長浜(ながはま)には言ったんでしょ。」

なんでこう言ったのか自分でも半分分からなくなった。恐らく自動車学校に行っていた時に長浜(ながはま)永原(ながはら)のことを好きと言っていたからこういったのかもしれない・・・。

「そこ忘れようねぇ・・・。」

(本当なんだ・・・。)

永原(ながはら)と話してから部活動のみんなとも離した。今年は高校生が大湊(おおなみ)っていう子が一人。中学生は柊木(ひいらぎ)の妹のこまちっていう子が一人入部したそうだ。存続はしばらく大丈夫かな・・・。安曇川(あどがわ)先生とも山科(やましな)先生ともあったし、戻ってきたという生存報告は全員にできたかなぁ。こんなこともあって家に戻ってきた。家に戻ってくると親戚が集合していた。全員ではないけど・・・。

 夕食を食べて、またちょっと話して、そして、今は僕と駿(しゅん)兄ちゃん、(じゅん)兄ちゃんで離れにいる。(じゅん)兄ちゃんの一真(かずま)も一緒にだ。

「ほら。お兄さんたちが電車走らせてくれるぞ。」

「あんまり期待しないほうがいいと思うぜ。(じゅん)兄。」

「・・・遊ぶ気か。」

(じゅん)兄ちゃんがそう言うと離れのドアが開いた。

「おい。(じゅん)あんたの嫁が帰ろうって言ってるぞ。」

「えっ。分かった。」

「それと駿(しゅん)(とも)君もこっち来る。いつまでも離れにこもってない。高島のおばあちゃん帰るんだから。」

(ゆき)姉ちゃんにそう言われて、離れから出た。母さんが送っていくというので、それの見送りだ。車を動き出して、夜の道路へと走って行く。それを眺めていた。

「ねぇ。あすこ。花火あげてる。」

(ゆき)姉ちゃんのその声で全員の目がそちらに向いた。確かに。花火が上がっている。僕たちがいるところからほぼ真南の位置で上げている。ここからだと木の陰になって全部を見ることができない。

「あっちでもあげてるぞ。」

今度は駿(しゅん)兄ちゃん。指差したのは西の空。こちらも花火が上がっている。ちょうど一発上がったのが見えた。

「あっ。結構向こうでも上がってる。」

今度は僕。駿(しゅん)兄ちゃんが見たものとはもっと向こうに小さく花火が上がっているのを見つけた。

「ここからじゃあ分かりにくいなぁ・・・。ちょっと堤防のあの坂まで上がってみるか。」

お父さんの提案で、すぐ近くにある堤防に上る道へ行くことにした。

 夜の道を全員で広がって歩いているため、車にはメチャクチャ迷惑だろう。しかし、ほぼそんなこと関係ない。まず、車が来ないのだ。しかし、広がって歩いている道路は対向車線のある一般的な道路。車が来たら迷惑なことには変わりはない。

 堤防に通じる道だから、そのまま直進。坂の結構上のほうまで来た。ここから見ると指差した花火をすべて見ることができた。(ゆき)姉ちゃんがさした場所の花火は木の陰であることは変わりはなかったが、僕と駿(しゅん)兄ちゃんが見たものは障害物なくきれいに見える。

「あっ。ちょっとずれたところでもあげてるねぇ。」

これはお父さんが見つけた。今日は花火大会のラッシュなのだろうか。なんかいたるところで花火を上げている気がする。

 全員で花火を鑑賞しているとこっちで上がった、こっちで上がったという声で顔を動かさなくてはならない。何とも忙しい花火見物ではあるが、それは仕方がない。

「えっ。・・・ちょっとあっちの気の向こうでも上がってるじゃん。」

また見つけたこれで5か所目だ。木の陰っていうのはこの坂の真南にある大きな木だ。そちらを見ると9割ぐらい木に隠れた花火が上がっているのを確認した。(ゆき)姉ちゃんはその花火を見るために堤防の本線に近づいていく。僕たちもそちらの方向に行った。目印としては大きな木は役に立つけど、花火見物の時は邪魔になる。切り落としてもいいんじゃないかなぁ・・・。

 堤防の本線の最高速度は時速50キロ。つまり、僕たちがいるすぐ後ろを車は高速で通過していく。免許を取るときに歩行者擁護ということを教わっているから、さすがにその速度で僕たちの後ろを通過していくのはやめてね。

「・・・うーん。あの車ライト小さくしてくれないかなぁ。」

(ゆき)姉ちゃんはそうつぶやいた。確かに。こちらに向かってくる車のライトが目に突き刺さって嫌だ。あれはロービームなのだろうか。一見するとハイビームではないかと思う。ハイビームでいいのは歩行者や前方から来る車。走っている車がいない時である。この点では歩行者がいるから、ロービームにするのが基本ですよ。僕たちはそういう車が来るたびにライトが目に入ってこないように手で覆いながら、南の花火を見た。時折、下から車も上がってくる。

「うわぁ・・・。前の車邪魔よ。」

「邪魔っていう前に俺たちのほうが邪魔だと思うけどねぇ・・・。」

「そうだね・・・。こんなに大勢でこんなところに固まって何か見てたら、今日なんかあったっていう話になるもんなぁ。」

そう言っていると前の車がどいて、視界が開けた。すると今度はライトの強い車の攻撃。何とも運が悪い。

「あの車ライト小さくしろよ。」

「まぶしいって動作してたらライト小さくしてくれるんじゃないか。」

「ああ。それいいかも。」

(ゆき)姉ちゃんたちがそう話している間。僕はちょっとだけ北西の空を見ていた。すると北西でも花火が上がる。

「あっちでも花火が上がった。」

「えっ。マジ。でもこっちだね。」

「・・・。」

すぐに南の空で上がる花火に移行する。花火にばかり見とれていたが、だんだんと笛の音や太鼓の音が加わったことに気が付いた。地元のお祭りは屋台を引き回すからだ。今(もえ)はその屋台のところにいるのかなぁ・・・。それとももう帰って来たかなぁ・・・。

 南の花火はクライマックスに入った。花火が立て続けに上がるスターマインだ。光の後にやってくる地響きのような音が加わる。

「あっ。あれ大きいんじゃない。」

(ゆき)姉ちゃんが指差した花火は高く夜空に上がって、大きく花開いた。

「おお・・・。」

そして、時間が経つとさっきの花火が花開いた時に上げた音が僕たちのところに届いた。

「はぁ・・・。終わった。」

そういうと今度は全員で坂を下り始めた。時間は21時を回ったところである。今年初めて見た花火は今日だけで何発になっただろう・・・。


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