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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
222/779

222列車 67個49秒

 7月21日。クレペリン検査の対策が始まってもう一週間になる。あれから僕はそんなに書くスピードが速くなったという実感がわかないでいた。一番最初に進歩しすぎたのかもしれない。

「8、2、5、1、2、7、4、3、1、9、4、5、0、2、1、0、5、3、0、1、4、1、2、5、2、0、3、6・・・。」

難波(なんば)さんが言っていくスピードにはだんだんとついていけるようになった。難波(なんば)さんは僕たちが言っていくスピードにだんだんついてこれなくなったって言っているけど、本当に僕たちはそれぐらいスピードアップしているのだろうか。この一週間難波(なんば)さんに騙されたつもりでやって来たけど、ここは騙されて正解だと思う。

(えっ・・・。)

難波(なんば)さんが言っている途中で躓いた。こうなったらすぐに僕は引き離されてしまった。今日はコンディションが悪い。早い人には全然ついていけていない。これを初めて結構なスピードアップをした留萌(るもい)にも今日はついていけず、最初からついていけていない栗東(りっとう)にもついていけず。今日は散々な結果に終わった。

「・・・。」

 これからもらうクレペリン検査の対策用紙は全部で2枚。一人が担当する列は1列から2列に増えた。栗東(りっとう)のところは周回遅れ近かった。僕が2列目の真ん中ぐらいまで行ったところで栗東(りっとう)は全て言い切っている。こんなスピードでいっていたら、栗東(りっとう)はすぐに2列目に入ることができるだろう。そのためには1分以内で115以上の単純な足し算をしなければならないことになる。僕はまだまだ栗東(りっとう)には追いつけそうもない・・・。

「ナガシィ。今日も勉強して句の。」

横から(もえ)が聞いてきた。

「えっ。うん。」

「18切符は前かったんだよねぇ。」

「そうだけど。どうかした。」

「ううん。でも、私と使ったら残り1回余ることになるからそれどうするのかなぁと思って。」

「ああ。それだったら、浩次(こうじ)おじさんが使いたいって言ってたから、こっちに戻ってきてからか、向こうに行ってる間に浩次(こうじ)おじさんが使うと思う。」

「あっ。そうなの。」

「うん。」

僕はそういうとイヤホンを取り出した。すぐに勉強する気にはならない。腕が痛いのだ。さすがに50分以上鉛筆を持ったまま書き続けてきたのだ。さすがにきつい。少し休憩してから、勉強に移ることにした。

「・・・。」

周りは楽しくワイワイ話している。もうちょっとすれば近畿(きんき)も来るだろう。と思いながら、音楽を聞いていた。また少し経つと、帰る人たちが帰り始め、残ったのはいつものメンバーというようになった。それと入れ替わりに近畿(きんき)が学校に来た。

 午前中はさっきも言った通り何もやる気が起きない。またしばらくたつとお昼の時間となって、僕たちは昼を食べることにした。しかし、今昼を食べに行こうとすると混んでいるため、僕と草津(くさつ)は時間をずらした。僕たちはその時間を電車の話をして盛り上がった。草津(くさつ)はここら辺の電車は広く知っているため、僕の知識では追い付けないというのが実状だった。近鉄(きんてつ)22000系とか言われても、何が何だかわからない。あっ。22000系は例に出しただけで、僕はこれがなんなのか知っている。近鉄特急(きんてつとっきゅう)ACE(エース)として有名だ。

南海電鉄(なんかい)すごいなぁ。」

「すごいだろ。もうすぐ50年くらい経つっていう車両がいまだ現役。しかも、主力を退いてないし、廃車が一つも発生してないから驚きだ。そいつら、今でも特急で南海本線(なんかいほんせん)を時速100キロで走ってるんだぜ。」

「いや、遠州鉄道(えんてつ)はまだ吊り掛けが残ってるけど、もうそいつらはとっくに一線のいて、今は朝ラッシュだけの運用だぜ。」

南海電鉄(なんかい)抵抗制御(ていこう)がまだ主力だぜ。・・・でも、そっちの51号だって界磁チョッパにしてるじゃねぇか。1本だけ吊り掛けは違うぜ。」

ちょっと待て。なんで草津(くさつ)はそれを知っている。草津(くさつ)から出た言葉に驚きを隠せなかった。草津(くさつ)のほうはそれってあたりまえじゃないという顔をしている。まぁ、浜松(はままつ)に住んでいる鉄道を知っている人なら常識中の常識。僕はそれで受け流すことにした。じゃあ、草津(くさつ)には少し掘り込んだ話をしても大丈夫だろうと思った。僕は遠州鉄道(えんてつ)の車両の統一性のなさを言った。例えば1000形の第1編成(1001号)はシングルパンタグラフなのに対し、第2編成(1002号)以降は菱形パンタグラフを装備していることなどを言った。

「なんじゃそりゃ。統一性なさすぎだろ。」

草津(くさつ)もそう言っていた。

「あと、これもあったなぁ。1000形の第6編成(1006号)は車いすの人が乗れるスペースがほかの編成と逆の位置にあるんだよねぇ。」

「はっ。しかも、何で第6。「POLESTAR(ポルスタ)」か。」

うっ。うるさいと定評のある北大阪急行(きたおおさかきゅうこう)8000系第6編成かぁ。僕は乗ったことがないけど、前食事会の時に乗った第1編成だけでも、そのうるささに負けた。なお、「POLESTAR(ポールスター)」を「POLESTAR(ポルスタ)」と呼ぶのは草津(くさつ)高槻(たかつき)近畿(きんき)。他の人もそう呼んでいるかもしれないが、僕が知っているのはこの3人だけだ。

「うん。こっちも何で第6なのかなぁって思う。」

遠州鉄道(えんてつ)の第6も、北大阪急行(きたきゅう)の第6もおかしいんだな・・・。」

「・・・。」

そんな話で盛り上がった。すぐに昼ご飯に移って、午後の勉強をして、僕たちは帰った。

 次の日もまたクレペリンだ。練習量は2枚。それをやってのけると終わった。今日はオープンキャンパスがあるということだったので、僕たちはすぐに退散した。午後勉強組も今日は残らず、終わったらソッコウで全員帰った。

 午後。

「ねぇ、(もえ)。ちょっとだけ計ってほしいんだけど。」

僕はそう言った。

「分かったよ。クレペリンでしょ。」

「うん。1列全部とくのにどれぐらい時間がかかってるか知りたいんだ。」

「・・・。ナガシィ難波(なんば)さんからもうⒶ行ってるって言われたんでしょ。だったら、もう1分以内に解いてるってことに・・・。」

「何秒かかってるか知りたいんだって。」

「・・・分かったよ。じゃあ、計るからね。」

「ちょっと待って。」

僕はそういうと今日つかったクレペリン検査の用紙を取り出した。これで本当に僕はこれを1分以内で解いていることになるのだろうか・・・。

「よしっ。お願い。」

「ヨーイ・・・。スタート。」

(もえ)がそう言うのと同時に書きはじめた。頭の中で答えを言いながら、僕はクレペリンの計算を解いていく。このペースはクレペリン対策を始メタ時から大幅にスピードアップしている。それでⒶ評定に入っているというのはいまだに信じていない。どれぐらいで計算しているのか。それをはっきりさせてやろうと思った。

「はい。」

僕は右端まで行くとそう言った。その声で(もえ)がストップウォッチを止める。

「何秒かかった。」

聞いてみた。1分はかかってるだろうと思った。途中で躓いたのだ。それは僕の苦手な9が絡む計算ではなく9が絡む計算のすぐ後に出てきた8が絡む計算だった。僕は8が絡む計算も苦手なのだろうか・・・。

「49秒。」

「えっ・・・。」

耳がおかしくなったのではないかと思った。

「えっ。何秒だって。」

「49秒。信じられないわけ。」

そう言って(もえ)がストップウォッチも見せた。確かに。針は49秒を指している。1分49秒ではない。それはすぐに分かった。

「・・・。つ・・・次。」

「ヨーイ。スタート。」

その声で今度はさっき49秒かかった列のすぐ下の列をやった。

「はい。」

「46秒。」

「・・・。」

2回目も40秒代後半。数がおかしいのではないかと思った。自分が計算した数を数えてみた。左端から、右端まですべて計算すると67個。

「つ・・・次。」

今度はアト➙の段に行った。上から順番にタイムは49秒、50秒、51秒、48秒、45秒、47秒、48秒、50秒、45秒、50秒、52秒、46秒、50秒、53秒、48秒、50秒、53秒。すべての列において67の計算を1分以内で終えていることが証明されたのだ。

「・・・。」

(俺。こんなに早くなったのかよ。特に53秒かかったところは躓きすぎて1分越えたと思ってたのに・・・。1分・・・長くなったなぁ・・・。)

これが今の僕の正直な感想だった。

 これで早くなったというものが実感になった。しかし、信じることができない。今までの自分の実力ではここまで計算することはできなかった。前1分タイムを測ってもらった時計算できた数は66。それからまた更に速度が向上している。

(最初は1列1分だったのが・・・。)

僕は計算をしてみた。今のペースで計算した場合どれぐらい計算できるのか。平均タイムは48.9秒ほど。四捨五入して49秒。これでいくつ計算できるのか計算したところ1分間では78の計算を行うことができるという回答だった。

「・・・。」

(クソッ・・・。もうちょっとで80代に突入するじゃないか・・・。)

「早くなったね。」

「えっ。うん。・・・そう言う(もえ)はどれぐらいで計算できるんだよ。」

「私。私は一番で来たところで50秒かかってた。一番できなかったところは58秒。もうちょっとで1分だった。」

「・・・そう・・・。」

(じゃあ何。昨日(もえ)にもついていけなかった俺ってバカ・・・。)

それはどうでもいいかぁ。ここまで速くなったんだ。これから先は難波(なんば)さんが言う方法で、僕はもっと上を目指せばいいだろう。そのためにもオーダーメイドのクレペリン用紙を自分で作るのだ。そうすれば今よりももっと早く計算をすることができるようになるだろう。


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