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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
219/779

219列車 差

 7月10日。夏休みが始まって2日目だ。今どこにいるのかというと学校にいる。なぜ学校にいるかと言うと自主勉強のためだ。今勉強しておかないと絶対テストでいい点数は取れない。難波(なんば)さんが言うとおり最後の夏。ここに本気で取り組もうと思った。

 その本気に付き合ってくれるのは近畿(きんき)だ。鉄道実習室にいるのは僕と近畿(きんき)だけ。他のメンツは何をしているかというと上で補習授業を受けていたりしている。しかし、大半は来て勉強すらしていない。

「なぁ、永島(ながしま)。」

近畿(きんき)が話しかけてきた。

「今日草津(くさつ)たちはどうしてるんだ。」

草津(くさつ)。多分上で補習でも受けてるんじゃないかなぁ。」

「補修かぁ・・・。じゃあ、午後になったらここ来るかなぁ。」

「来るんじゃないの・・・。」

「そうかぁ・・・。にしてもさぁ、草津(くさつ)瀬野(せの)さんと水上(みなかみ)以外ほとんど学校来て勉強してないよなぁ。」

と言った。本当はここの実習室に顔を出していないだけで来ているのかもしれないけど、昨日と今日でここの実習室に来たのは草津(くさつ)瀬野(せの)内山(うちやま)水上(みなかみ)千葉(ちば)高槻(たかつき)ぐらい。他の人はどうしているのかはわからない。そして、昨日勉強に少しだけ付き合ってくれた高槻(たかつき)も今日は来ていない。

「そうだよなぁ・・・。まぁ、家で勉強してるのかもしれないけど。」

「家かぁ。よく家で勉強に集中できるよなぁ・・・。」

(集中かぁ・・・。)

ふと(もえ)のことが頭をよぎった。だが、すぐに首を振った。(もえ)のことはこの間は忘れよう。

永島(ながしま)。話変わるけど、難波(なんば)さんの夏プリどこまで進んだ。」

「えっ。もうあと一ケタ。・・・何ページ残ってたっけ。」

ヒトケタなのは覚えているのだけど、何ページ終わっているのかは完全に把握しきれていない。取り出して確認してみた。

「えーと・・・。あと8ページ。」

「あと8。早っ。」

「まぁ、夏休みはいる前からやってたし。今週中に一通り終わらせる目標でやってたから。」

「・・・。」

「まぁ、終わるかどうかわからないんだけどねぇ。特に平野と盆地で手こずっててさぁ・・・。」

「それ絶対坂口(さかぐち)さんに見せてって言われるよなぁ・・・。」

「言われるだろうねぇ・・・。」

そう言いながら夏プリを普段持ってきているカバンの中にしまった。

 一方、

(はぁ。昨日も今日もどこ行ってるんだろう・・・。)

そう思いながら、本屋の鉄道ジャーナルを立ち読みしていた。今年は東北新幹線(とうほくしんかんせん)が開業して30周年の記念の年。雑誌の中身も東北新幹線(とうほくしんかんせん)の特集が組み込まれていた。読んでいると肩をポンとたたかれた。見てみると木ノ本(きのもと)の顔があった。

「よーす。何してるの。」

「・・・。」

それからすぐ近くにあるマックスに移動した。

「いやぁ、こうして食べるのって久しぶりだねぇ。」

「そうだね。」

「どうしたの。普段は永島(ながしま)と一緒なのにさぁ・・・。」

「ナガシィ。きのうも今日もどこか行っちゃってて部屋にいないんだよねぇ。」

「いない。まぁ、駅に行ったわけじゃないよねぇ・・・。てなったらどこかチャリで。」

「ナガシィのチャリはちゃんとおいてあります。」

「あっ。じゃあ、何してるんだろう。大阪市営(おおさかしえい)でも乗り行ったのかなぁ・・・。」

市営(しえい)なんて1日あれば乗り切れちゃうでしょ。それに市営(しえい)に乗ろうとかって思ってたら、絶対にナガシィは私のこと誘うと思う。一人はつまんないと思うから。」

「・・・。」

しばらくの間ハンバーガーを頬張って、

「じゃあ勉強でもしてるんじゃないかなぁ・・・。」

「えっ。ナガシィが勉強。あり得ないって。ナガシィ直前にならないと頭に入らない人だよ。そういうのがこんな時期からテスト勉強なんてするかなぁ・・・。」

「いや、そういう意味で勉強してるんじゃなくて、電気代を笹子(ささご)に払わせるために学校に勉強しに行ってるとか。」

「・・・確かに。難波(なんば)さんそう言ってたけどさぁ・・・。でもそれって結構無理やりすぎない。」

「無理やりじゃないでしょ。あり得なくない。ここにいる人って全員仲間だけど、敵じゃん。敵を蹴落とすためならどんなことでもしようって考えない。」

(蹴落とすかぁ・・・。でもナガシィに限って・・・。)

木ノ本(きのもと)と話すとますます心配になった。学校の近くには来ているけど、後でそれとなく聞いてみようと思って今は部屋に帰ることにした。

 実習室では、

「なぁ、近畿(きんき)。」

「何。」

「午後・・・キツイなぁ・・・。」

「ああ。いくら水上(みなかみ)たちに勝ちたいからって言ってもきついなぁ・・・。これ腕に来るぞ・・・。」

さっきから僕たちは文字を書きっぱなしである。もう腕が痛くて痛くてしょうがない。

「ちょっと休憩するか。」

近畿(きんき)がそう持ちかけた。

「だな。いくらなんでも続かない・・・。」

そういうと僕は持っていたシャープを机の上に投げ出した。そして、背伸びする。

「にしても、お前ルーズリーフいっぱいに熟語書いてるじゃん。疲れないか。」

近畿(きんき)がのぞいてきた。

「ああ。高校1年の時はこれが3ページまとめて出したのがあった。1ページだけでも死ぬのにさぁ。」

「お前結構頭いいし、それ出してたのか。」

「ううん。全然一度も出したことない。」

そう言ってから僕は隣の机の椅子を引き出した。そして、僕が座っている椅子に少しだけ引き寄せてから、横になった。

「イテッ。」

骨の場所に椅子のポールの部分があたった。

「で寝るのかよ。」

「ちょっとお休み。」

そう言って、椅子の上で寝返りをうったら、ちょっとの間そのままでいた。近畿(きんき)は僕がそうしている間イヤホンを取り出して、音楽を聞き始めた。

 何分この状態が続いただろう。ドアが開いた。近畿(きんき)はその音で目が覚めたけど、僕はこのとき完全に眠ってしまっていたから、それに気づくことはない。

「あれ。(とも)ちゃん大丈夫。」

「ああ。ちょっとたたき起こしてやれよ。」

いや、たたき起こされる前に目が覚めた。目を開いてみるとそこにいるのは瀬野(せの)だった。補修が終わったのだろう。

「おはよう。(とも)ちゃん。」

「オハァ・・・。」

眠そうな声で答えた。

「とにかくお前どこから出るんだその声。」

「声帯・・・。」

「・・・草津(くさつ)たちってくる。」

「ああ。そのうち来るよ。」

瀬野(せの)がそう答えると同時にまたドアが開いた。さすがにこのときには体を起こした。確かに、瀬野(せの)の言ったとおり草津(くさつ)水上(みなかみ)内山(うちやま)が実習室に入って来た。

「なんだ。今日も彼女とは別行動かよ。」

草津(くさつ)・・・。」

草津(くさつ)はそういうとすぐに僕の後ろの席に行った。そして、勉強道具を広げる。広げたのは難波(なんば)さんの夏プリだった。

「あっ。草津(くさつ)はそれどこまで終わったんだ。」

「えっ。あと2ページ。」

「あと2。」

草津(くさつ)君も(とも)ちゃんも早すぎだろ。もうすでに残りがヒトケタってなんだよ。」

「じゃあ、草津(くさつ)は平野と盆地やったの。」

「ああ。でも2番と3番がどっちかわからなくてさぁ。多分これは詰まった。」

「だよなぁ。あれって結構微妙なところ指してるからさぁ。地図で言ったら2番は広尾(ひろお)とか帯広(おびひろ)のあたりで、3番は池田(いけだ)あたりだもんなぁ。」

「フッ。こういう時、駅名便利だな。」

草津(くさつ)はそう言ってから、残ったページをやり始めた。

「でも、広尾(ひろお)っていう程したじゃないから、中札内(なかさつない)あたりじゃないか。」

やりながら草津(くさつ)はそう言った。

 さっきから飛び出している地名は帯広(おびひろ)で分かったと思うが全て北海道だ。その問題は全国の平野や盆地などの名称をこたえる問題で、2番は広尾線(ひろおせん)あたりに。3番は池田(いけだ)など。帯広(おびひろ)のちょっと東に位置している。そこの平野の名称を応えろというものだ。そして、草津(くさつ)が駅名が便利と言ったのは、駅名を知っていて、なおかつその場所を知っていれば、ここにあるからこれだということを言うことができるからだ。

「・・・。」

「なぁ、終わってるなら平野と盆地のところだけでも見せてくれない。」

水上(みなかみ)がそう言ってきた。

「さすがにそれは却下。自分で解けよな。」

「いや、これマジ分からんから。」

「・・・ザ・平野。」

 そのあと僕たちは目立った勉強をしたわけではない。草津(くさつ)も夏プリが終了したら、僕たちの話に加わっていた。そのまま5時ぐらいまでずっと話していた。そろそろ退散するかということになったため、それから戸締りをして、部屋から退散した。鍵を難波(なんば)さんに返してから、僕は部屋に戻った。

 部屋に戻ると(もえ)が入って来た。

「ナガシィ。きのうも今日もいったいどこに行ってたわけ。朝早くからこんな時間まで。」

「ああ。学校に行ってた。」

「学校。なんで学校なんか行ってるのよ。」

「えっ。エアコン代を笹子(ささご)に払わせるために。」

(理由ひどいなぁ・・・。)

「まぁ、それはその名目での勉強だけどねぇ・・・。」

「・・・。」

言葉を失った。そして、前に聞かされたあの言葉が脳裏をよぎった。

(・・・そんな。絶対にそんなことなんてさせない。でも・・・悔しいよ。気持ちでもナガシィに負けてるなんて・・・。)

(もえ)を・・・。いや、草津(くさつ)水上(みなかみ)も。この夏で蹴落としてやる・・・。)

(もえ)を見てまた新たに決心がついた。


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