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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
215/779

215列車 鳥肌

 6月22日。別にこの日に決まって特別な授業があるわけではない。しかし、今日はちょっとだけ面白いことがある。サービス接遇検定の面接練習なのだ。今回は受ける人と受けていない人に分かれるのだが、授業上それは関係なしに行われる。今回の面接には(もえ)だって申し込んでいない。

「さて、では今から接遇の面接の練習を始めたいと思います。」

というのは授業担当の六甲(ろっこう)先生。

「それでは順番に始めていきたいと思います。」

まず最初の6人。接遇の面接試験は3人の受験者と3人の面接官で行われるそうである。そのために、生徒から3人が面接をやり、試験官役として3人が選出された。

 それで一通り試験をやった。全員難しそうにしていたのは最後の承認になるところ。そこは先生曰はく楽しくしゃべることらしく、黙りこくるのが一番ダメだそうだ。

「さて、では次・・・。」

六甲(ろっこう)さんはそう言いながら、時計を見た。時間はもうすぐ終わろうとしている。

「あっ。ではこの時間はここで終わりたいと思います。それではまた8限目にお会いしましょう。立ってください。」

それで授業は終了した。

 さて、この時間から後は空き時間を1時間はさみ、難波(なんば)さんの新幹線入門の授業。そして、(よど)さんが担当するIT実習。そのIT実習で名刺を作った。いつもより、ちょっと時間を押して、何とか完成させ、また六甲(ろっこう)さんが担当する接遇の授業だ。

 この授業の間に僕のところまで順番が回ってきた。今回は面接を受ける受験者として。ただ、体ががちがちでほぼいうことを聞かない状態に陥っていた。何とか終わらせて、自分の席に戻った。

「はぁ・・・。」

「ナガシィ。お疲れ。」

(もえ)が話しかけてきた。

「ナガシィガチがちだったよ。普段しゃべるのは得意なのにね。」

「・・・うるさいなぁ。」

(もえ)も順番が回って来たけど、(もえ)は面接官として。しかも、課題を受験者に見せるだけなので、とても簡単なことである。それをちょっとこの野郎と思いながら、他の人がやる試験内容を見ていた。

 授業が終了する10分ぐらい前になった。僕たちがやったものを含め2順だけだったが、それで授業は終了となり、今度は受験者のみの面接となると言っていた。

「あのう。面接官として残っていいでしょうか。」

六甲(ろっこう)さんにそう聞いてみた。

「いえ。残って面接官だけでもやってくれるっていうのはありがたいんですけど、この先は面接を受ける人たちだけでやりたいと思っているので・・・。」

六甲(ろっこう)さんからしてみれば、何かに加担するというのはやめてくれという反応だ。だったら、

「じゃあ、見てるだけでもいいですか。」

「・・・なら、女性が面接をするときだけは退室してくださいね。」

ということになった。そのために僕と(もえ)水上(みなかみ)。そして今治(いまばり)が残った。他に残っている草津(くさつ)近畿(きんき)羽犬塚(はいぬづか)平百合(ひらゆり)千葉(ちば)内山(うちやま)瀬野(せの)蓬莱(ほうらい)は面接を受ける組である。

「あっ。後ろの方々は・・・。」

六甲(ろっこう)さんは残っているのが気になったらしく、そう聞いてきた。

「見る組です。」

今治(いまばり)がそう答えたので、見る側に回っている僕たちはそれに続けてみるグミですと答えた。

「・・・あっ。じゃあ最後のここでお客様役の面接官をやってもらいますか。」

(よしっ。)

僕は心の中でガッツポーズをした。やってみたいフレーズがあるのだ。面接を受ける人の順番は羽犬塚(はいぬづか)近畿(きんき)草津(くさつ)の順。面接官の順番は今治(いまばり)、僕、水上(みなかみ)。そして、女性だけでやるときは(もえ)が担当することとなった。

(うっ。近畿(きんき)許してね・・・。)

 羽犬塚(はいぬづか)の面接練習が終わり、近畿(きんき)の番となった。そして、1段階2段階を難なくクリアして、僕のほうに回ってきた。そして、間もなく商談成立というところで変化球を加えてみた。

「3点で、合計500円に・・・でございます。」

「500円。」

思わず聞き返した。もちろんこれは演技である。そして、これを見ていた人全員からどっと笑いが起きた。

「高いなぁ。産地直送なんでしょ。直送だったらもうちょっとまけれるでしょ。」

近畿(きんき)はそれに少々困っていたが、商品の良さを説明するということで、かわしてくれたので、ここで試験終了。担当は僕から水上(みなかみ)に変わり、草津(くさつ)の面接が始めった。

 男子の面接が一通り終わったので、僕たちは一度部屋から出て、(もえ)たちの練習が終了するのを待った。

「おい。永島(ながしま)。何だって。500円が高い。」

近畿(きんき)は僕の首元に手を置いて、睨む目で見ている。

「ほら、先生あーいうパターンもあるって言ってたじゃん。」

「いや、そりゃ言ってたけどさぁ・・・。にしても、お前があすこまで変貌するとの思わなかったなぁ・・・。」

草津(くさつ)が意外そうに言った。

「いや、あれ言うの決まってたし・・・。」

「決まってたしじゃねぇだろ・・・。」

近畿(きんき)は文句が言い足りないみたいだ。

 それから(もえ)たちの面接が終わるのを待って、面接ができる状態にした机をすべて元に戻し、それで解散となった。

「あっ。ちょっとトイレ行ってきたいんだけど・・・。」

内山(うちやま)が言いづらいように言った。そのため4階のトイレに行くことになった。なお4階には女子トイレしかない。それはこの学校の男女比を物語っているようなものだろう。

 4階は廊下の電気をすべて消していた。廊下は両サイドが教室のため、奥はとても暗い。内山(うちやま)がお化けでも出るんじゃないかと言ったら、寒気しかしなくなった。こういうものが苦手なのである。

「はぁ。」

「ナガシィ、怖いんでしょ。」

(もえ)はその気を察したみたいだった。

「何言ってんだよ。お前だって弱いくせに。」

「へぇ・・・。本当に出るかもね・・・。」

瀬野(せの)が怖い声で言ってきた。

「やめろ、やめろ、やめろ。」

「本当に弱いんだな・・・。お化け怖いなんて本当に女の子だな。」

「うん。だからやめて・・・。」

「まぁ、これでナガシィが怖がりだっていうのがまた証明されたよねぇ。・・・ナガシィってさぁ、鉄道がらみならそんなに怖くないみたいなんだけど、一つだけすごく怖いのがあってさぁ。一度テレビで「急行きたぐに」が北陸トンネルの中で火災になって、それを救出するっていうのをやってたんだけど、その「きたぐに」が敦賀(つるが)を発車する汽笛だけ頭の中に残ってるみたいでさぁ・・・。」

「あっ。もう、(もえ)までやめろ。思い出しちゃうじゃないか。」

「ね。」

「・・・トラウマなんだね。それ。」

近畿(きんき)はそれを黙って見ていた。

 しばらくして、内山(うちやま)がトイレから出てきた。

「ごめんね。待たせちゃって。」

「いや、いいよ。行こうか。」

「あれ。内山(うちやま)さんの後ろにいる人って誰。」

近畿(きんき)がおもむろにそう言った。背中が凍りついた。本当に誰かいるのか。いや、そんなはずはない。今ここには近畿(きんき)(もえ)瀬野(せの)内山(うちやま)、僕しかいない。恐る恐る後ろを見てみた。内山(うちやま)の後ろには誰もいない。

近畿(きんき)・・・。」

泣きそうな声でいうと近畿(きんき)は笑って、

「冗談だって。これで貸し借りは0な。」

「・・・冗談でもマジでやめて。本当にいるかと思ったじゃん。」

(そこまで怖いのか・・・。)

近畿(きんき)なぁ、カワイイ(とも)ちゃんにそう言う攻撃はダメだって。」

「そうだよ。(とも)ちゃんがかわいそうだよ。」

(そんなことで擁護してくれてもなぁ・・・。)

「ナガシィ。」

(もえ)に呼ばれた。どこにいるのかと探してみたが、僕の目線にはいないことはすぐに分かった。

「大丈夫。」

下から(もえ)の顔が見えてきた。しかも、懐中電灯で自分の顔をしたから照らしている。一気に血の気が引いた。

「へっ・・・。」

「も・・・(もえ)ちゃん。」

「エヘへ。・・・ブイ。」

(もえ)はLEDで光懐中電灯をかばんの中にしまうとVサインを作った。

(とも)ちゃんをいじめるのは近畿(きんき)君よりも(もえ)ちゃんのほうがエキスパートだね。」

「・・・うん。」

「はぁ・・・もう・・・みんなして、やめてよ・・・。」

「さぁ、帰ろう。」

(もえ)は僕の手を握ると歩いていこうと促した。それに引っ張られる形で学校の外まで出てきた。学校を出てから、すぐに内山(うちやま)さんが帰り、残ったのは久しぶりにこのメンバーとなった。

「にしても、お前があれしてくるとも思わなかったし、今回一つだけ教訓があると思うんだ。」

近畿(きんき)がそう口を開いた。

「教訓って。」

「いや、あの500円になりますっていうあの「なります」だよ。普段聞きなれてるから、あの時になんか遣っちゃうんだよねぇ。俺だって使いそうになったし、永島(ながしま)なんかモロに使ってただろ。」

「確かに。普段聞きなれてるって恐ろしいよなぁ。」

「ていうかそれは俺も悪かった。面接する前に「なります、ボン」のネタふり過ぎたからなぁ・・・。」

「それはいいって。気にしてないよ。」

「・・・。」

しばらくその位置で話して、少し経つと学校のシャッターが閉まる音が聞こえた。それから、近畿(きんき)梅田(うめだ)にあるサウンズファンにいくと言い別れ、瀬野(せの)としばらくの間話していた。

「本当に怖いんだね。思い出さないほうがいいよ。」

「えっ。うん。」

普段抱かれるのは(もえ)だけど、今日は瀬野(せの)になった。当然(もえ)だってその場にいる。

眞実(まみ)ちゃん。充電。」

「充電だけど・・・本当に(とも)ちゃんいじめたりいじったりするの好きだね。」

「だって、面白いんだもん。ねぇ、ナガシィ。」

「同意を求めるな。」

僕はそう言うと(もえ)から目をそらした。

「・・・。はぁ、話すだけでも鳥肌が立つ。」

「よし、よし。」

「ね。駅を発車するときにヒィィって音が・・・。」

(もえ)ちゃん・・・。」

瀬野(せの)が苦笑いをしながら、僕をなで続けてくれた。


今回からの登場人物

笹子観光外国語専門学校講師

六甲(ろっこう)真子(まこ) 誕生日 1972年2月12日 血液型 B型 身長 160cm

(よど)有希(ゆき)  誕生日 1979年6月2日 血液型 A型 身長 159cm


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