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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Sasago Vocational College Episode:1
214/779

214列車 台風と立場逆転

 6月19日。大阪(おおさか)には台風4号が近づいていた。僕と(もえ)はそれぞれの部屋にいたけど、途中から(もえ)が僕の部屋に押し掛けてきた。まぁ、今日朝からの休校はないと思っていたので、時間が来たら、二人ともスーツに着替えた。鉄道基礎をやっている教室は実習室。実習室はいま2年生がつかっている。そのため、まだ入れない。近くに自動販売機とかが置いてある場所に固まっていた。

 2年生の授業が終了するのと岩かわりに、僕たちは教室に入った。僕と(もえ)はなんか固定みたいで、いつも隣同士になっている。荷物を置いてから、実習室にある電車を模した実習設備のほうに行った。

「ナガシィ。これかぶって。」

(もえ)に言われてかぶされたものは女性用の制帽。

「・・・いや、(とも)ちゃんがそれかぶっても全く違和感ないんだって。ふつう男の子でそれは似合わないはずなんだけどね。」

瀬野(せの)がそう言った。自分でどうなっているか見れないから、どれぐらいに合っているのかはわからないけど、基本僕に帽子は似合うらしい。普段かぶってきている(もえ)からもらった帽子は何のためにかぶっているかというとあんまり人に顔を見せたくないからだ。これは自分が女の子よりの顔をしているからという理由ではない。純粋に顔を見せたくないのだ。だから、帽子はいつも深くかぶっている。

(とも)ちゃんカワイイ。」

続けて内山(うちやま)の声。

「似合ってるよねぇ・・・。」

今度は蓬莱(ほうらい)の声。

「・・・このごろ永島(ながしま)が女に見えてしょうがないんだけど・・・。」

木ノ本(きのもと)の声。

「えっ。高校の時っていつもこんな感じじゃなかったのか。」

瀬野(せの)が聞き返した。

「いや、高校の時はもっとしっかり男だってわかったんだよねぇ。結構オタクなところあったから。それが何。今こっちに来たら、そんなにオタク度高くないし、よくよく見たら、顔女だし、声女だし、髪型女にできるし、(もえ)ちゃんとアクセサリーとっかえ可能だし・・・。なんか男っていう感じじゃなくなったんだよねぇ・・・。」

これには留萌(るもい)が答えた。

「なっ。お・・・お前らまで・・・。」

「だから、そういう声がさぁ・・・。」

「お前ほどギャップの激しい男もいないと思うぞ。」

「でも、スーツ着てたら、まだ男だってわかるんだけどね・・・。」

木ノ本(きのもと)がそう言った。僕的には何の慰めにもなっていないけど・・・。

「なぁ、永島(ながしま)。ちょっとあれやって。あれ。」

平百合(ひらゆり)にそう呼ばれた。あれをやってとはおそらくこういうことだ。僕はアナウンス用のマイクを握り、音声が客室のほうに流れるよう、スイッチを入れた。

「ご乗車ありがとうございます。今日もJR西日本をご利用いただきまして、まことにありがとうございます。この列車は「特急サンダーバード1号」富山(とやま)行きです。途中の停車駅は新大阪(しんおおさか)東淀川(ひがしよどがわ)吹田(すいた)の順に終点富山(とやま)まで各駅に止まってまいります。・・・次は新大阪(しんおおさか)新大阪(しんおおさか)です。新大阪(しんおおさか)を出ますと、次は東淀川(ひがしよどがわ)に止まります。」

「クハハハハ。どこも特急じゃねぇ。そんな特急あるかよ。」

「じゃあ、次な。」

これはいっている自分でも笑えてくる。

「今日もJR西日本をご利用いただきまして、ありがとうございます。この列車は各駅停車、京都(きょうと)です。途中京都(きょうと)までの停車駅は神戸(こうべ)三ノ宮(さんのみや)大阪(おおさか)です。途中舞子(まいこ)須磨(すま)には停車いたしませんので、ご注意ください。」

「うわぁ。迷惑な各駅停車。」

瀬野(せの)がつぶやいた。これは女子でも分かることだろう。各駅停車と言われたら、すべての駅に停車していくだろうと思うだろう。しかし、この列車は各駅に止まっていないにもかかわらず、各駅停車と名乗っている。これは実際あり得ないことだ。もちろん、先に行った特急が各駅に停車することも99パーセントあり得ないことだ。それはある区間限定で例外が存在するからである。

「うんじゃあ、これにしょうか。」

そう言うと、笑いをこらえながら、アナウンスに入る。

「今日も新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございます。この列車は「こだま、631号」名古屋(なごや)行きです。途中の停車駅は品川(しながわ)新横浜(しんよこはま)小田原(おだわら)熱海(あたみ)三島(みしま)新富士(しんふじ)静岡(しずおか)掛川(かけがわ)浜松(はままつ)豊橋(とよはし)、終点名古屋(なごや)です。」

「えっ。」

こういったのは留萌(るもい)木ノ本(きのもと)(もえ)

「こらぁ。どこが「こだま」だ。」

「あれ、今なんか通過(とば)した。」

平百合(ひらゆり)が聞いてきた。平百合(ひらゆり)にはちょっとわからなかったみたいだ。

「そんなもん簡単だろ。」

高槻(たかつき)が口をはさんだ。

高槻(たかつき)がこたえると面白くないだろ。」

答えを言おうとする高槻(たかつき)を制してから、僕が答えを言った。

「うん。通過(とば)したよ。三河安城(みかわあんじょう)を。」

「・・・なんだよその「こだま」。つうか「こだま」じゃねぇよ。やたら停車駅の多い「ひかり」じゃないか。」

「・・・じゃあ、今度は「のぞみ」作るかぁ・・・。」

「やめろ。」

平百合(ひらゆり)がそう言う。時計を見てみるともうすぐ授業が始まる。授業が始まるまではもうあと15秒ぐらいしかない。15秒の間にやろうとするのは困難だ。自分の席に戻って、授業の準備をした。今からやる摂津(せっつ)さんの授業のスタートは左手で右手を隠した状態で前で組む、接客業ならではのスタイルで男子もスタートする。態勢をとることはきつくないのだけど、笑顔を作るのが少しきつい。どちらかというと僕はしゃべっているときのほうが笑顔ができていると感じている。

 さて、それが終わって摂津(せっつ)さんの授業がスタートする。やっている内容はこのごろ暗い話になって事故のこととなった。鉄道としてはとても重要な事故だ。桜木町事故(さくらぎちょうじこ)三河島事故(みかわしまじこ)だ。どちらも死者を100人以上出した鉄道事故である。恐らく皆さんの記憶からすれば、福知山線脱線事故(ふくちやませんだっせんじこ)のほうが理解しやすいかもしれない。なお、どのような事故かというと桜木町事故(さくらぎちょうじこ)は列車火災。三河島事故(みかわしまじこ)は信号無視から始まる列車多重追突である。

 そんな暗い話は前回の授業で脱出して、今回からはまた明るい話題も入って来た。昭和39年には東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)が開業するなど輝かしい歴史もある。

 この授業が終了。次の時間も摂津(せっつ)さんの授業でやる場所はここ。移動する必要はない。また実習設備のほうで今度はさっき作れなかった「のぞみ」を作ってやろうとした。

「ご乗車ありがとうございます。今日も新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございます。この列車は「のぞみ1号」博多(はかた)行きです。途中の停車駅は小田原(おだわら)熱海(あたみ)三島(みしま)新富士(しんふじ)静岡(しずおか)掛川(かけがわ)浜松(はままつ)豊橋(とよはし)三河安城(みかわあんじょう)岐阜羽島(ぎふはしま)米原(まいばら)西明石(にしあかし)相生(あいおい)新倉敷(しんくらしき)新尾道(しんおのみち)三原(みはら)東広島(ひがしひろしま)新岩国(しんいわくに)徳山(とくやま)厚狭(あさ)新下関(しんしものせき)、終点博多(はかた)です。」

「「ひかり」以下だ。お前。「のぞみ」迷惑すぎる。」

留萌(るもい)が言った。

「だって、主要駅だけ通過(とば)して、どうでもいい駅に停車してるんだもん。」

「だからと言って、新大阪(しんおおさか)まで通過(とば)すな。」

「「名古屋(なごや)飛ばし」もやめろ。」

平百合(ひらゆり)木ノ本(きのもと)の順で文句が帰ってきた。その文句を受け付けていると、今度は学校の校内アナウンスが流れた。

「・・・台風が接近しているため、電車が動いているうちに速やかに下校してください。」

鉄道学科ではない他の学科の生徒が「ヨッシャー」と言っているのが聞こえてきた。よっぽどうれしいのかな・・・。

 すぐに摂津(せっつ)さんが戻ってきて、全員にすぐに帰るように促していた。僕の方だってすぐに帰ることにした。こんな雨でスーツではたまったものではない。部屋に変えると今度は(もえ)がまた僕の部屋に押し掛けてきた。

「ナガシィ。あたしは対抗して、東北でめいわくな列車作ってみたよ。」

いったい何を作ったのだろうか・・・。

「「あおば」新青森(しんあおもり)行き。」

「はっ。」

思わずそう言ってしまった。今東北新幹線(とうほくしんかんせん)に「あおば」という愛称は存在しない。「あおば」は東北新幹線(とうほくしんかんせん)開業当時に存在した、東京(とうきょう)から仙台(せんだい)までの各駅停車の愛称だからだ。今は「やまびこ」、「なすの」にとってかわられている。

「もちろん停車駅は上野(うえの)大宮(おおみや)仙台(せんだい)盛岡(もりおか)八戸(はちのへ)だけね。」

「クッ。「あおば」じゃないよ。「はやて」だよ。」

それでは今出てきた「はやて」の説明に入ろう。「はやて」は現在の東北新幹線(とうほくしんかんせん)速達列車の一つである。「はやて」の途中停車駅は原則、上野(うえの)大宮(おおみや)仙台(せんだい)盛岡(もりおか)八戸(はちのへ)である。そして、列車によりいわて沼宮内(ぬまくない)二戸(にのへ)七戸十和田(しちのへとわだ)に停車する。(朝夕には仙台(せんだい)からの各駅停車も設定されている。)さっき(もえ)が言った「あおば」は停車駅だけ見れば「はやて」である。

「はぁ、だったら「はやぶさ」各駅にするかぁ・・・。」

「フフ。そっちは「なすの」じゃん。」

「あっ。さっきの「あおば」はもちろん200系のオリジナルだからね。」

(どんだけ時代さかのぼれば気がすむんだよ・・・。)

 しばらくの間こんな話で盛り上がった。と言っても半分知らなければ盛り上がれないかもしれない。そのあと床屋できった髪もある程度伸びてきたので、それは(もえ)のおもちゃになった。そんなに僕はおもちゃにしやすいのだろうか・・・。そうは思ったけど、今日はやりたいことがあったから、僕はパソコンを開いて、インターネットでゲームをしていた。何か侵略するゲームだったりすると、僕の場合容赦しないというのが癖。戦力が最大になってから出ないと攻撃を仕掛けないというのがある。それをしてからパソコンを閉じた。これ以上やると視力がさらに低下する。まぁ、夏に帰った時に眼鏡は十中八九変わると思うしいいかぁ・・・。ではダメかぁ・・・。

 近畿地方は台風の暴風域に入っていたのだけど、暴風域とも思えない風と雨。雨に至ったらほとんど降っていなかった。それに腹を立てて(もえ)が、僕をくすぐるのは言うまでもないことだった。


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