197列車 ツッコミ神ゲー
4月19日。昨日で授業は一通り終わり、今日から本格的に内容がスタートしていく。社会科とかの授業は何となくわかる。他の授業もどんなことを言っているのがぐらいは分かる。それはこれまで知ってきた鉄道の知識が少しは役に立っているのだろう。しかし、それが裏目に出る教科だって少なくない。今この時期はそういうのが多い時間。僕にとっては我慢の時間である。それを感じているのは僕だけではないけど・・・。
空き時間になると僕たちは7階にある学生ホールのほうへ上がった。ここでお昼と食べている。外にも机があるけど、外の机は熱を持って温かくなっているし、このごろの日差しが強い。ずっと外にいるにはお勧めしないのだ。
「昨日久しぶりに電車でGO!にはまってさぁ・・・。」
お昼を食べ終わった高槻が切りだした。
(電車でGO!かぁ・・・。)
僕だってそれはやったことがある。ふつうに高い得点をたたき出すことはできる。恐らく高槻もそれぐらいのレベルに入るだろう。
「あれって久しぶりにやるとノウハウ忘れない。」
「そうか。俺はそういうのは残ってるけど・・・。ていうかあれって基本的に目安があるから簡単じゃん。」
平百合が言った。
「まぁ、あれはふつうにやってればミスることないしな。」
長万部が続けた。
「電車でGO!やるとさぁ、いろんな乗客出てくるよなぁ。特にウザい奴が大半。」
「そりゃぁなぁ・・・。俺がウザいと思うのはやっぱり特急やってる最初に出てくるおばちゃん。「やっぱりグリーンはいいわねぇ。」とか。何回グリーン乗ってて、どれだけの金があるんだって言いたくなる。」
「それもそうだけどさぁ・・・。連結の時に変なところに止まったりすると「止まっちゃったよこの電車」とかってうるさいガキがいるからさぁ。止まっていたいならそのまんま止まったままでいてやるけどとかって思う。」
長万部が言った。
「・・・アハハ。確かにそいつウザい。」
「そんなことよりさぁ、あのガキすごいだろ。「ハウステンボス」・「みどり」やってると一つの列車の中で3回「いただきまーす。」だから。幕の内3回だぞ。そして異様に食べるペース早いし。」
平百合が言った。
「だからそれって好きなやつだけ食べて、他のは親が食べてるんだろ。」
「いや、それ考えられるけどさぁ、でも3回同じの食うってどうよ。もし幕の内の中にエビフライが2本入ってたとして、6本だぜ。・・・6本だったらまだ飽きないかぁ・・・。」
「・・・俺は思うにあれ全体がおかしいと思うね。」
高槻が口をはさんだ。
「だってさぁ、俺こういうの見たことあるんだけどさぁ、そのガキが「おばちゃんお茶」っていって、その次が「おばちゃんジュース」で最後が「お弁当はいかがですか」だぜ。会話成り立ってねぇよ。」
「・・・なんだよそれ。」
「だから言ってるじゃねぇか。「おばちゃんお茶」、「おばちゃんジュース」の後に「お弁当はいかがですか」。」
「おかしい。おかしい。それ絶対おかしい。」
平百合が笑いをこらえながら言う。
「それって別の車両っていう設定だろ。ガキがお茶とジュースを頼んだ後にアテンダントが別の車両にいって「お弁当はいかがですか」だって。」
「・・・すごい裏設定見た気がする。」
しばらく黙った。
「あと新幹線の電車でGO!をやってるとさぁ、フリーランっていうのが中にあるんだけど。」
「あっ。あるあるそれ。」
平百合が答えてくれた。
「あれさぁ、ふつうの運転でやるとフルノッチってなかなか使わないのに、フリーランの時はフルノッチでないと最高速でないからさぁ。・・・それにフリーランだからATCの制約ないじゃん。だから、徳山を300km/hで通過するんだよ。」
「徳山300km/h。脱線する脱線する。」
「でも脱線しないんだよね。後広島とか岡山に300でツッコんで、ホームを通り越そうとしても必ず83メートルで止まるんだよ。」
「なに秒速できっちり止まってるんだよ。」
「後、制動の時50メートルまでは何もないからそのあとの非常ブレーキ最強すぎ。新幹線最高速から減速したら必ず4000メートルぐらい走っちゃうから。そのところ23メートル・・・じゃない。33メートルでとめてるんだから。」
「それプラスVVVFの音してるからな。あれ絶対本物だったらモーター壊れるぞ。」
「壊れるの前に持たない。持たない。」
「本物だったら壊れるのにフリーランでそれを小倉でやるとちゃんとその先広島まで行けるし、広島でやっても岡山まで行けるし。おかしいだろ。で新大阪でそれをやると必ず83メートルで止まる。東海道新幹線入ってくれない。」
「なんの話してるんだ。」
後ろから草津が話しかけてきた。
「いや、電車でGO!がいろんな意味でおかしいだろって話。」
「おかしい以前の問題だろ。」
そう言うと草津も話に入って来た。
「あれさぁ、踏切事故があるやつあるじゃん。それ結構な速度でツッコんでくと車吹っ飛ぶからな。」
「ふ・・吹っ飛ぶ。」
「吹っ飛ぶ。ふつうだったら車の破片がそこらへん散乱するだけで終わるのに、ぶつかった瞬間に画面の外に車消えてくから。他にもぶつかったのにかかわらず、何もなかったようにふつうに走ってく車もいるから。」
「壊れてねぇの。」
「運転手と車がタフなんじゃね。本物は4WDでも無理だけどな。」
と言ってからまた何か思い出したようだ。
「あと物理無視してるっていえば、京浜東北の209運転してる時にわざとマスコンとブレーキを入りきりしてると時折おっさんが出てくるじゃん。」
「う・・・まさか。」
高槻にはこれが読めたらしい。
「そのまさかだよ。209ロングシートだぜ。ふつう横だぞ。なのにそのおっさん前のめりになってんだぜ。おかしいだろ。いつクロスかセミクロになったんだよ。」
「プロフェでやると急ブレーキかけて止まるとおっさんが新聞突き破って「でやぁ、新聞が」とかって言うけどさぁ、新しいの買えよって。」
「その前に俺の列車に乗るなっていいたいな。」
草津はそう言うとさらに続けた。
「そういうネタだったらクソガキのほうもいいね。「いただきまーす」って言ったすぐ後に非常入れて、「あっ、お弁当が」って言わせる。」
「草津ひでぇ。」
「クソガキ黙らせるにはうってつけだぜ。」
他にもいろんな話を聞いた。電車での中には駆け込み乗車や黄色い線の外側にいる乗客もあるらしい。その乗客の中に声の低い女が出るらしいが、はさまれたりするとさっきとは打って変わって、とても高い声で「キャー」と叫ぶそうだ。今度は新幹線。新幹線の乗客の中にサラリーマンが出てくるが「契約無事取れました。これから帰ります」の後に「えっ。何。もう一回言って」と何とも失礼な言葉を発する。プロフェッショナル2では停車駅になるとそれまで寝ていた人が目を覚まして、「あっ、降ります」・・・。途中からこの話に萌、木ノ本、留萌も加わり、とても賑やかになった。
「あと鶴見線をやって芝浦とかから発車するときは「酔っ払っちゃったよッ」とかって言ってるおっさんが次の新芝浦になると「母ちゃん、勘弁」って。たった一駅区間で何があったの。母ちゃん乗ってたのか。それとも母ちゃんに謝るための予行演習でもしてるのかって。土下座してまでやってんだぞ。」
草津もこの話をするには笑わずにはいられないようだ。笑いをこらえながら言っている。
「あるあるそれ。」
「あっ。さっきのサラリーマンネタで思い出したけど、これもあった。「もしもし。・・・あれ」って。」
「あっ。それもある。」
「さっきので「契約無事取れましただろ」。次が「えっ、何。もう一回言って」で上司に電話切られたんじゃね。」
平百合が笑いながらも分析する。
「電話切られた。あり得る。」
「そりゃ「えっ、何。もう一回言って」だからなぁ。上司に向かってタメ口はダメだから・・・。もし後輩だったとしても「話聞いてなかったんですか」って話になって場合によっては切られるかもよ。」
長万部が別のパターンで分析する。
「いや、もしかしたら、子供監禁されて、犯人からの電話で。」
僕がそう言うと、
「落ち着いてるなぁ。スーツ着て、「もしもし・・・あれ」。落ち着きすぎだろ。」
「落ち着いてるっていうより、その人にとって子供ってかわいくないんじゃない。」
留萌が続けた。
「うわっ。それ終わってる。」
「・・・はぁ。ヤバい。いろんな意味でヤバい。」
「電車でGO!ってある意味神ゲーだよなぁ。ふつうのゲームであそこまでツッコミ飛ばせるゲーム他にないぞ。」
「神は神でもツッコミ飛ばせるって意味の神ゲーかぁ。言えてる・・・。」
この話で2時間も笑いとおした。
教室に行くとさっきのことが内山には気になっていたらしい。
「ねぇ、孝史。さっき結構盛り上がってたけど何の話で盛り上がってたの。」
「あっ・・・なぁ。零それ思い出させないで。ヤバい。笑えてくる。」
「・・・。」
「電車でGO!の話。あれ結構笑えるから。」
「たかがゲームでこんなに笑えるわけ。孝史たちの神経おかしくない。」
「いや、おかしくないって。あれ笑えない人いない。ねぇ、ねぇ。永島。新幹線でブレーキかけ過ぎで止まった時の外人のあれ・・・。」
平百合は笑えながら言う。
「ああ。・・・「ノー」。」
「ク。ハハハ。ウケるー。ヤバい腹いてぇ・・・。」
内山は唖然とした表情で僕たちを見ていた。確かに、知らない人が見たら何にそんなに受けているんだと思うだろう。しかし、あれほど物理を無視したゲームも他に類を見ないと思う。そういう意味では鉄道ファンならではのツッコミが飛ばせる神ゲーだ。




