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婚約破棄をしなかった馬鹿王子の生活

作者: 山田 勝
掲載日:2026/05/17

 私の婚約者がおかしくなった。

 熱病から治った後、エーストが入れ替わったようだ。歩くときの重心が高い。扇の使い方が変だ。


 それはよい。


 そして、何よりも軽くなった。

 頭は良いかもしれない。不思議な知識があるかもしれない。


 しかし、話す内容は恋愛の話ばかりだ。


 とても国家を背負う侯爵令嬢だとは思えなかったよ。

 もしかして、化外の民に乗っ取られたのかと思い。



「だから、私は逃げだしたよ。こうしてここで冒険者をしているのだ。かれこれ三年前の話だ」



 ここは辺境の酒場、同じテーブルになった奴らに俺の不思議な話をした。



 すると、西の国出身の男が話し始めた。こいつは商人か?



「そういや、隣国の王子が・・・留学が急遽取りやめになって、本国に帰ったと、ちょうど、その時期ではございませんか?」


「隣国の王子、ルーズベルトの事か・・・帰る理由はないはずだが・・」


「あたしゃ、ちょうど三年前に王都の冒険者ギルドにいましたが、その時、侯爵家の養子が急遽、ご実家に返されたと噂になったわ・・・」


「ああ、侯爵令嬢フラリスと俺との婚約がなくなって、フラリスが家を継ぐから、実家に帰されたのだろう。悪いことをしたか?」


 次々に話が出てきた。

 たわいもない話だ。


「大公殿下が急に学園の卒業式に出席したとか?」

「宗主国の皇子が何故か嫁取りに現れたとか・・・だけど、この国では見つからなかったようだ」




「フ~ン。何故だろうか・・・まるで三年前に大物貴公子たちが王都に現れているようだな」



 その時、酒場の扉がガン!と開いた。



「はあ、はあ、見つけた!ゲルハルト・・」

「フラリス・・・・何故、ここに?」



 ドレスを着ているが、ボロボロだ。まるで喪服のように地味だ。



「早く婚約破棄をしなさいよね!」

「・・・何を言っている。手紙を届けるように言っておいたぞ。婚約は解消すると」


「婚約破棄でなければ意味がないのよ。このゲームはね!フラグがあるの!」


「もしかして、お前、俺が出奔してから誰とも婚約を結んでいないのかよ?」


「そうよ。一応、貴方との婚約は続いているのよ!その間に第二王子も騎士団長の息子も・・・隣国の王子も皆結婚したわ!まだ、隠れキャラが残っているのかも・・」



 意味が分からない。

 だが、相変わらずだ。とても軽い・・・



 だから、俺は・・・素直に聞いた。

「そうか、フラリスとの婚約を破棄する。これでよいか?」

「ええ、そうよ!」



 そのまま去りやがった。


 だが、これ以降フラリスの話は聞かない。

 王族との縁もないようだ。


 後にどこかの子爵家に嫁入りをしたと聞いた。

 侯爵家はまた別の養子を迎えたそうだ。


「しかし、ゲームとは何だ?」


 時々、未来の事が分かる者が来るそうだ。そのことを隣にいる女魔道師に聞いて見た。



「ゲオハルト、もしかして、奴らは神ではないですか?この世界を作った一族」


「まさか・・・・でも、もし、そうだとしたら、一時の恋愛遊戯を楽しむために俺らは作られたのか?」


「どんなあり得ない話でも消去法で残った事実が真実よ」


「はあ、さすが、この辺で一番の女魔道師は違うね。でも、妙に納得できる。この世界は不完全だ。不完全な物が適当に作ったから悪がはこびっているのかもな」



「そんな事よりも稼ぎましょう。あなた」

「はいよ」


 実際はただの夢見がちの女の戯言だったのかもしれない。

 しかし、俺が危険を感じて逃げたのは確かだ。


 故に今、女魔道師と知り合えた。

 それでよい。日々、精一杯に生きるだけだ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
王子が婚約破棄しないで逃げちゃったからシナリオが全部狂ったのかwwwwww いい気味ですな
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