法廷戦術
月の法律だの何だのと慌ただしいようではあるが、僕自身は案外ゆったりと過ごしている。むしろ引きこもりだったが日々の勉強時間が増えた感じだ。そんな中、またインターフォンを鳴らしまくっている輩がいる。月の法律を丸投げしてきた彼だった。
「なんですか」
「いえ、今日は近くまで来たもので。スコーンを買ってきたのですが?」
エサで釣る気か。僕は前回と違ってドアを閉めようとした。が。
「ーー本場イギリスのアフタヌーンティーを淹れますよ」
そう言った彼の鋭い眼差しに今日も勝てず、仕方なく部屋へと通す。
「本場イギリスのアフタヌーンティーがティーバッグですか」
「まあまあ」
鍋で湯を沸かし、マグカップにはアールグレイのティーバッグ。急きょ出した白い皿にはスコーンとクロテッドクリームが乗せられている。
彼は湯が沸くとマグカップに注ぐ。
「……普通マグカップは湯で温めてから使うのでは」
「早く本題に入りたいことはあるでしょう?」
……何か言いくるめられた感じだ。
温かい紅茶を口づけると、さっそく彼は聞いてきた。
「未知のウイルスが流行った場合、ワクチンに不備があって後遺症が残ったりしたら、製薬会社はどう責任を取るのでしょうね」
「僕だったら」
スコーンにクロテッドクリームを付けながら話す。
「特許の取消を製薬会社名でしますね。それがけじめでは?」
目の前の彼はきょとんとした表情で僕を見てからくすりと笑った。
「……月の法律を任せただけではありましたね」
クロテッドクリームはスコーンとマッチし、最高にうまかったことは事実だった。




