Time keeper
時間管制官という仕事は、勝手に私のところへやってくる。時間の誤差というのは様々な場所で見受けられるからだ。
とは言え、本日は別件。ある人物の調査で法務局のほうへお邪魔している。なに、難しいことじゃない。その人物についての情報を得るためだ。彼はどうやら検事総長のお孫さんらしいのだが、どうやら故障中。今は日本でのんびり……と言ってはなんだが、どうやら暇を持て余しているらしい。私に来た情報では、彼が一番法曹で暇だとのことだ。
でも、彼は自分が検事総長の孫ということをどうやら知らないらしい。ここは彼のプライバシーを尊重して、口外しないほうがよいかもしれない。こういうことは、自分自身で知るべきことだと私は思うから。
さて……。法務局の時間は九時過ぎ。おかしい。私はいつも定時行動を心がけている。そんな私が、いささか遅刻するなんて。いや、『いつも定時行動』と自惚れてはいけない。私だって人間だ。ミスはある。しかし、腕時計と懐中時計を確認すると、どちらも九時前だ。念の為スマホのデジタル時計も確認するが、やはり八時五十八分。まだ二分早い。
「すみません、こちらの時計、少々時間が早い気がするのですが」
「ああ、これ。何故か直らないんですよ」
受付の人に聞いてみるが、ここまでの誤差はよろしくない。私は腕時計と懐中時計に目をやってから、列の最前に並ぶ。後ろには人々が溜まってきていて迷惑この上ない。だが、ここは譲れない。それが『時間管制官』だからだ。
腕時計が九時を指した。懐中時計は八時五十九分。いい頃合いだ。
「おはようございます。川口賢一氏の所在を探しているのですが」
懐中時計が、九時を指した。




