地鎮Day
『どうする? 昭和100年問題』
『兄者はどう思ってるのだ?』
陰陽師の血筋を引く兄妹は困っていた。深夜のメールでのやり取り。正直ゆっくり眠りたかったところだが、今は非常事態。しかも面倒なことに水道管を使っての電波・霊波・言霊の膨張で、目が冴えてしまった。
『ってか、お前のほうでなんとかできない?』
『むしろそちらのほうでなんとかしていただきたいのだが?』
昭和100年問題ーー細かいことはよくわからないのだが、とりあえず2000年問題と同じことが起こるらしいことは事前に察知していた。
『Rabbitは何か言ってた?』
『いや、今回は何も聞いていない。だけども少々地鳴りがするようで、そちらへ連絡しているのだが』
『ふむ……』
『何か化学的見地はないだろうか?』
『お前にそれを言ってわかるの? 専門は言霊でしょ』
『む……』
そう言いながら、兄の方はスケジュール帳をペラペラとめくる。
『とりあえず理系のことと言えば、国立天文台のデータ移行や行政関係のシステム移管、グリニッジの時間調整とかはしてる。むしろお前は何してるんだよ』
『きくらげ生やした』
『仕事して?』
『衛星落下の報告は?』
『今のところは聞いてないけど』
『ならばいい』
「お嬢! いらっしゃいますか!?」
妹の執事が血相を変えて部屋へと入ってくる。
「何事だ?」
「至急、地鎮をしてほしいとの政府からの依頼です!」
「どういうことだ?」
「今年は……巳年です! というか、あなた方兄妹何かなさいましたか?」
「え? 特には……」
巳年。ヘビの年。つまり凶年。しかしながらヘビも使い様。白いヘビは弁財天のお供なのだ。
『兄者、みどりの日を越してからは巳年だそうだが、私ら何かしたか?』
『巳年? そういやそうだけど、よくわからん。特に何もしてはいないけど』
『とりあえず、こちらで新年の地鎮をするから音波関係のサポートしてもらえるか?』
『こっちは論文の精査で忙しいんだぞ?』
『じゃかしい。こちらだって忙しいし、いつも指示をしているのは私のほうだろうが、この体たらく』
『忙しいって無職でしょ?』
「あの……お嬢、スマホは車の中でもできるので、移動しますよ?」
「面倒くせぇ」
「そうおっしゃらず」
執事に半ば強引に連れ出されようとする前に、メッセージ。
『兄者のほうもなんとかしていただきたい』
『面倒くせぇ』
『私もだからな?』
ふたりは半ばヤケクソだった。




