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それでも地球はまわってる  作者: 浅野エミイ


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町工場

 近所のコンビニに行ったとき、「あれ?」と思った。今やハイテク時代。レジだって変わる。今や無人レジも普及している。でも、うちの近くのコンビニは有人。なのに……うちの工場で作っているものをもう使ってくれていないのだ。


 テープ、もう貼ってくれないのか。


 コンビニで買ったことを証明するためのテープ。うちの工場はそのテープの土台を作っている。主に回転部分のところをいかに滑らかにするか。


 ……まぁ時代は変わるもんな。テープも貼られなくなり、需要がなくなったら工場もたたむかな……。ただでさえ後継者なんていないし。親父からこの仕事を受け継いだはいいけども。


 大体こんなテープの土台部分の需要って、本当にどこにあるんだ? 業務効率化とかDXとか声高らかに謳われている昨今だ。最早事務用品自体がオワコンになりつつある。事務用品にお金をかける余裕するらないのだ、最近の日本は。


 とりあえず、コンビニで買った新聞と、お茶を持って公園に行く。新聞を広げ、「ああ、そう言えば私も新聞を配達してもらうの、やめたんだった」なんて思う。私が新聞の定期購読をやめて、必要なときだけコンビニで買うのだって、テープを貼られなくなったことと同じなんだよな……。うちの工場も経営難だ。だから少しでも切り詰めるために、定期購読をやめたんだった。テープだって経費削減……。親父から受け継いだ仕事は、「経費削減」なんて簡単な言葉でなくなってしまうような容易い仕事だったのだろうか? テープの土台を作る町工場。そんな一般の人が何気なく使っているーーもう使われいていないことのほうが多いがーーみたいな、ニッチなものは淘汰されてしまうのだろうか。本当に、誰にも必要とされていない? 大きく息をついて、空を見上げる。鳩が飛んでいる。まだ鳥たちはのんきだ。


 気を取り直して新聞に目を落とす。どうでもいいニュース。町工場には関係のないニュースばかりだ。私は自分の仕事をただこなしているだけだ。この仕事が必要かどうかなんてこともよくわかっていない。でも「仕事がある」ということは、必要なのだろうとは思っている。


 そんな中、ある記事が目に飛び込んできた。


『ーーロケット、打ち上げ失敗。原因はベアリングか』


「ロケットねぇ……」


 宇宙開発だがなんだか知らないし、そんなことをしている場合じゃないだろう。宇宙がどうのより、自分たちの飯の食い扶持だし……。もっと日本は中小企業や町工場を救ってくれって話よ。


 そんなことを思いながら、読み終えた新聞をゴミ箱に捨てる。


 経営再建か……こんな町工場に、経営再建なんてできるのかねぇ……。


 赤ちゃんとお母さんたちが公園を占拠し始める。ぼちぼち独り身は撤退だ。一服してから仕事場に行くか。私はそう思いながらゆっくりと歩き出した。

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