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それでも地球はまわってる  作者: 浅野エミイ


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Luck

『今夜各国日没より日の出まで、『Project-LUCK』を開始する。各人『知られざるヒーロー』になる覚悟はできているか』


『もちろんだよ、東方の弾幕とどっちが難易度高いのか楽しみだぜ!』


 ジャパニーズ・ネイビーから配られたパソコンでのチャット。これから地球に光が注ぐ。俺たちは『知られざるヒーロー』なんかじゃない。きっと、『最高のエンターティナー』になることだろう。


――pm.8:30


「ねぇねぇ、今夜だね! 流れ星と花火。普通、一緒になんて見られないよ!」


 糸電話の先で、幼馴染の頼子が声を弾ませる。なぜこの時代に糸電話なのかって? 最近スマホは通信障害ばかり。ゲーム機もパソコンが使えなかったり、原因不明の停電が起きたりと、日常は安定していない。そこで、勉強以外にやることがなくなった私たちが考え付いたのが、糸電話。頼子の家と私の家はお向かいさん。ベランダにいれば、話はできる。だけど大声で会話するのは迷惑。だから。


「あ~……どんな景色になるんだろう? 一大天文ショーと花火の融合って、すごくない?」


「……そうだね」


 適当に相槌を打つ。私はどう返事をしたらよいか迷っていた。確かに『成功』すれば地球のみんなが楽しめる一大イベントになるだろう。ただ、失敗したらと考えるだけで、顔面蒼白になる。


「そういえば、お兄ちゃんいないの? 部屋の電気消えてるじゃん。あの人、引きこもりじゃなかったっけ?」


「あー……うん、ちょっと旅行?」


「え、引きこもりでも旅行するんだ?」


「そ、そりゃ、気分転換くらいはするから!」


 ああ、お兄ちゃん。本当に成功させてよ? あなたのゲームの強さが、地球の命運を握っているんだから。


――JST17:43。


『今のところ、他国は衛星迎撃成功、スペースデブリを収集した『オリオン流星群』たちも無事海や砂漠に落下している。次はJAPAN、君たちの番だ』


『オーライッ! 世界中のゲーマーに感謝する。テンション最高に上がるわ!』


 今各国で起きている流れ星は、宇宙のごみを吸い込んだ掃除機だ。それが砂漠や海に落ちてくる。地球の出した宇宙ごみは、こちらで処分しなくてはならない。磁場が狂って落ちてくる大きな衛星は、俺たちが迎撃する。細かいデブリを一気に大気圏で消滅させる。これが『Project-LUCK』の全貌だ。


 知らされているのは、地球連邦軍に臨時招集された各国のシューティングゲームマニアのみ。『軍』と言ってはいるが、これは戦争……宇宙からの攻撃ではない。長年積み重ねてきたツケをいつ払うか、という話になって出てきたのが、太陽フレアの脅威。その脅威をいかに防ぐか専門家らが考えた結果、『人工的に流れ星作り出し、打ち落とすしかない』というテキトーな結論になったわけだ。


『さぁ、花火を打ち上げようぜ!』


――pm21:10


 真っ暗になった部屋。天体ショーはずっと続いていた。次々と落ちてくる流れ星。たまに見えるドン! という火花。


「きれいだねー。ずっと見てても飽きない。これ、きっと一生に一度しか見られない光景だよ」


 頼子の楽し気な声とは裏腹に、私はこれらの流れ星が、いつ地上にぶつかるか心配だった。きっと、頼子みたいにこの心配を知らない人たちのほうが多いだろう。事情を知っている私たちの身にもなってほしいというのが本音だ。


 ……お兄ちゃん、ミスるなよ、マジで。


 ちらりと隣の真っ暗な部屋を、私は見た。


 ――JST6:05


『JAPAN、ミッションコンプリート。衛星の脅威はなくなった。お疲れ様。次は日付変更線をまたぐぞ』


『おう、Good Luck』


『ARIGATO』


 ……はぁ~、疲れた。なんとか作戦は成功した。隣で見ていた妹は感動してくれたかな? いや、親と妹はそんな状態じゃないかもな。まぁ、頼子ちゃんが喜んでいたようだから、地球を舞台にした世紀のエンターテインメントは成功だろう。


 あとは……。停電させておいた日本中の電源をオンにする。そしてまず、部屋のテレビをつけた。


『鉄道は大規模計画停電後、始発から運転再開の模様』


 そのアナウンスを聞いた俺は、一安心してベッドにもぐりこむ。旅行なんて嘘。俺はずっとこの部屋にいた。


 この部屋で、知らない同志たちと地球を守ったんだ。


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