『正直な親子とプレスマンの精』
あるところに、正直な親子三人が、寺の門前に泊まっていた。父親が、銭を持って和尚様のところに行き、何か話を教えてください、何でもいいので、と頼むと、和尚は、
そろりそろりと来たわいな
とだけ教えてくれた。
次に、母親が、銭を持って和尚様のところへ行き、同じように頼むと、和尚は、
そのままそこに立っていろ
とだけ教えてくれた。
最後に、息子が、同じようにして頼むと、和尚は、
逃がすな追いかけ捕まえろ
とだけ教えてくれた。親子は、三人して、教わった言葉を、それぞれ繰り返しつぶやきながら暮らしていると、ある夜、プレスマンの精が、この親子の家に迷い込んだ。何やら物音が聞こえたような気がしたので、父親は、
そろりそろりと来たわいな
とつぶやくと、プレスマンの精は、人間に姿が見えるのかと驚いて、びくっとして足を止めた。もちろん、プレスマンに足などないので、これは比喩表現である。次いで、母親が、
そのままそこに立っていろ
とつぶやくと、プレスマンの精は、ぶるぶる震えて、中の芯がぼきぼきに折れた。最後に息子が、
逃がすな追いかけ捕まえろ
とつぶやくと、プレスマンは観念して、その場で倒れた。
正直な親子は、プレスマンの精を手に入れて、生涯プレスマンには困らなかったという。
教訓:プレスマンの精のおかげか、正直者の親子は、プレスマンに困った人というものを、生涯見なかったという。




