オッドアイズ(短編にて練習作品)
長編で書こうと思っていた作品です。
作者の実力不足で一向に書ける気がしないので、試しに短編で書いてみました。
異能バトルものなのに、あまりバトルシーンがないという……。
ま、まあ、冒頭部分みたいなものですから(汗)。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 窓の外を見て下さいよ! 彗星ですよ!」
妹に声をかけられ、窓際に行ってみる。すると、赤黒い禍々しさを放つ彗星が尾を引いていた。
「あれは……彗星か? ニュースでは何も言ってなかったけどな?」
「きっと、非周期の彗星なんですよ! とりあえず、『お兄ちゃんlove彗星』と名付けましょう!」
「どんな彗星!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
ブラコンのマイシスターに「やれやれ」と心の中でぼやきながら、テレビのリモコンのスイッチを押す。
「ニュースでは何もやってないな~?」
リモコンをポチポチと押して、チャンネルを何度も変えてみる。すると、ドサッと何かが倒れる音がした。
振り返ると、雫樹が倒れていた。
「お、おい! 雫樹! どうした!?」
起こす為に揺さぶろうと思ったが、頭を打っているかもしれないのでやめておいた。とりあえず、妹の身体が冷えないように窓を閉める。
救急車を呼ぶべきかと悩んでいると、眩暈に襲われて意識が遠のいた。
***
「お……ん! お兄ちゃん!」
妹の声が聞こえてきて、目を開く。ぼんやりと妹の顔が見えてきて、俺は妹が倒れたことを思い出し、上体を起こす。
「あん、お兄ちゃんってば。お兄ちゃんは倒れていたんだから、もう少し『妹膝枕』で癒されるべきですよ?」
正座をした状態で、こっちにおいでと言わんばかりにポンポンと太ももを叩く妹。そんな妹に声をかける。
「倒れたのはお前もだろ! 大丈夫なのか?」
「ええ、ちょっと眩暈がしましたけど、気づいたらお兄ちゃんが倒れていました。なので『妹膝枕』で介抱していました」
能天気な笑顔の妹。そんな妹をよそに、俺たちが倒れた理由を考える。
(先ほどの彗星のせいか?)
考え込んでいると、ふくれっ面の妹が目に入る。
「む~、お兄ちゃん、不安なことがあったら、兄妹で甘え合うべきですよ!」
「頼り合うな?」
ボケをかます妹にツッコミを入れておいた。いや、本人はボケをかましたつもりはないのだろうが、こうやって構ってやるのも兄の責務であろう。
「明日学校だし、もう寝る準備をするぞ」
「あ~ん、お兄ちゃんのいけず!」
ぽかぽかと俺の背中を叩く妹に構うとキリがないので、放置して俺は明日の準備をした。
***
翌朝、洗面所で顔を洗っていると鏡が自然と視界に入る。タオルで顔を拭いていると違和感に気づく。
(あれ? ちょっと目が赤いか?)
鏡で目を覗き込んでいると、妹が声をかけてきた。
「お兄ちゃん、目がどうかしたのですか?」
「あ、ああ、なんか目が赤いような気がして」
「どれどれ、先生に見せてごらんなさい。さあ!」
「……女医の真似?」
軽口叩きながら、妹に目を見て貰う。
「確かに右目が少し赤いですね? 普通は白目が赤くなるのでは? 黒目が赤くなるなんて、何かの病気がありませんか!? お兄ちゃん! 今すぐ入院して精密検査をしましょう!」
目を見て貰うことで、自然に俺も妹の目に視線が向く。
「いや、雫樹の左目もなんか青っぽく見えるけど……気のせいか?」
「それは大変です! 一緒に入院しましょう! そして一緒のベッドに寝ましょう!」
涎を垂らして興奮している妹の頭に、手刀を軽く叩きこむ。
「あほか、多分様子見で平気だろう。それより学校に行くぞ」
「お兄ちゃん、ひどいですよ~」
大げさに頭を押さえて涙目の妹をよそに、学校に行く準備をした。
***
学校の校門をくぐり抜ける。
雫樹は俺の腕にがっしりとしがみついて、いつも通りご機嫌である。
そんなバカップルのような俺らを学校の連中は『いつもの光景』として慣れている。有名すぎて学校全体で公認となっている。
教室に入り挨拶をして、それぞれ席につく。
クラスは一緒だが流石に席が隣同士にはなっていない。俺が席についた途端に、雫樹の席に女友達が寄って行き、話を始めた。
俺は妹が平和に過ごしている光景を見て心が温まる。
『こんな平穏な生活がずっと続くんだろうな……』
平和な日常を思い浮かべて笑みが零れそうになると同時に悲鳴が聞こえた。
席を立ちあがり、悲鳴が聞こえてきた校庭の方に、窓から顔を出す。
「……なんかうねうねと動いている小さな物体があるな? 蛇か? 蛇ぐらいで大騒ぎだな」
そんなことを呟いた俺の脇下から、ひょっこりと雫樹が顔を覗かせて、同じく校庭の何かを見つめる。
「あれは、ツチノコですね」
「ツチノコ? ツチノコなんて都市伝説だろうが。そもそも雫樹は見たことがあるのか?」
雫樹は首を傾げる。
「いえ……見たことないですね? なんであたし、あれがツチノコって分かったんだろう?」
一呼吸おいてから、取り乱す妹。
「お兄ちゃん! ツチノコって毒があるんですよ! しかも噛まれたら死ぬくらいに!」
俺たち二人は見つめ合い、青ざめる。
「え? それが本当ならヤバくね?」
「ヤバいですよ! それと本当ですから! 信じてませんね? じゃあ、一緒に確認に行きましょう!」
「いや、そんな危ないやつは先生に任せるべきじゃね~か?」
「先生が危ないじゃないですか!」
「俺は?」
「お兄ちゃんなら大丈夫ですよ! あたしにとってヒーローと言っても過言ではありません!」
「いや、過言だろ……」
目を輝かせている妹の期待は裏切れないなと、俺は教室を飛び出して校庭へと向かった。
***
校庭に辿り着くと、倒れている生徒たちが何人かいる。
逃げ惑う生徒たちに更に襲い掛かる、胴体が太い蛇。妹を信じるとして校舎から見ていたよりも、動きがずっと速い。
「……これ、どうしたらいいんだよ……」
そう呟いた途端、ツチノコと目が合った気がした。ツチノコはこちらに向かってくる。
「うわああああ!」
咄嗟にツチノコに右ストレートのカウンターを叩きつけることができた。ツチノコは吹き飛ばされるも態勢を立て直し、再び襲い掛かってくる。
慌てて雫樹をお姫様抱っこした。
「うおおおお!」
その状態で逃げる。『死ぬほどの毒を持っている』と聞いている上に、攻撃速度が速い。逃げることしか考えつかない。
俺が必死に走っていると、雫樹は呑気に不思議そうな顔をしている。
「お兄ちゃん……そんなに力強かったでしたっけ? しかも、逃げ足も速い。誤解しないで頂きたいのですが『あたしが重いのによくそんなに早く走れるな』って意味ではないですよ? これでもダイエットの成果で、体重が二キロほど減ったんですから」
今はどうでもいい妹情報に逃げ惑う。そこへ黒いスーツを着たヤバめの男が現れた。
このまま進んでいいのか戸惑い、スピードを思わず落とした。
「お兄ちゃん! 後ろ! 来てますよ!」
そう言われて後ろを振り返ると、目の前にいたはずの男は、ツチノコの太い胴体に日本刀を突き出していた。
(なんだこいつ!? 日本刀を持っているとかヤバい奴だろう。いや、最初に見たときは日本刀を持っていなかったし、いつの間に俺の背後に回ったんだ?)
黒スーツの男が日本刀を引き抜くと、ツチノコはさらさらと光の粒となって消えた。そして、男の視線が俺たちの方に向く。
「へ~、君たちも『オッドアイ』になったのか」
「オッドアイ?」
『君たち』と言われた。つまり、妹の身体にも何か異変が起きている。瞬時に雫樹を心配した俺は、雫樹の顔を見る。俺が言う前に雫樹が口を開いた。
「お兄ちゃんの右目……黒目が完全に赤くなってます……」
そういう雫樹の左目も青くなっている。やはり朝、気のせいと思っていたのは気のせいではなかったようだ。男は話を続ける。
「彗星の影響を受けたものは『オッドアイ』の能力が開花する。オッドアイにより『アカシックレコード』にアクセスして能力を使うことができる。どんな能力かは人それぞれだが。それでだな、君たちは敵か? 味方か?」
男は刀をカチャリと音を立てて構える。狼狽しながら即答する。
「い、いや、敵とか味方とか知らないって。俺たちだって『アカシックレコード』とか今聞いた話だし!」
「そうか……」
男が手にしていた日本刀が、ツチノコと同じように光の粒を撒き散らして消えた。
「そ、そうだ! 学校が大変なんだ! 何か異常なことが起きているが、あんたなら何か知っているんだろう? 助けてくれ!」
「既に、くぐりと楓が向かっている」
「くぐり? 楓?」
「ツチノコの毒のことだろ? くぐりが治癒能力を持っているし、楓は記憶操作で学校で起こった出来事の記憶を消して回っている。問題ない」
その言葉を聞いて、身体から力が抜けて地面に膝をついた。雫樹も俺から降りる。
男は身を翻し「今度会う時には味方と言うことが確定していることに期待しているよ」と手を振りながら去っていた。
***
不審な男を見送った後、雫樹が声をかけてくる。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、左目を閉じてみて下さい」
何事かと思い、左目を閉じてみる。すると文字が見える。
「『power』? なんだこれ?」
「あたしは右目を閉じると左目に『book』って書いてあります。これが先ほどの人が言っていた『能力』というやつなんではないでしょうか?」
なるほどと思いつつ思案する。先ほど、ツチノコを殴った時。そして、雫樹を抱えて走った時。力が湧いてくるような感じがした。それが俺の能力『power』なのだろう。……ネーミングそのまんまじゃね~か。
「ほらほら! あたしのを見て下さい!」
妹に急かされて、顔を覗き込む。すると、妹は頬を赤くして両目を閉じた。
「いや、目を閉じたら見えないだろうが!」
「キスされるかと思っちゃったものですから」
もじもじしながら恥じらう妹。
「……いや、キスはしないから……ってあれ? 雫樹? 青い目が黒く戻ってきたぞ?」
「あっ! お兄ちゃんもですね」
全ての問題が解決して、気の抜けた俺は学校に戻るべく歩き出す。
妹もいつも通りの日常に戻ったことを実感したのか、俺の腕にしがみつき鼻歌を歌っている。
学校に戻り教室に入ると……。
「瑞樹! 雫樹! 授業中に抜け出してどこに行っていたんだ?」
「え? いや、あの、え~っと?」
先ほどの男が言った言葉を思い出す。
『学校で起こった出来事の記憶を消して回っている』
俺と雫樹は何も反論できずに、廊下に立たされた。
読んで頂きありがとうございます。
色々なジャンルに手を出してしまう作者。
良いんだか悪いんだか……。
感想や応援をお待ちしております。




