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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第37話 ケーキバーにて

 ドリンクバーから七人分のジュースを注いでトレーに乗せる。

 レモンティー、メロンジュース、コーラ、一人一人好みが違うから意図せずとも彩りが豊かになる。


「ちーっす。お疲れ〜」

「美咲? 歌ってたんじゃなかったのか?」

「ちょうど終わったとこ。陽也くん一人で持ってくの大変かなって思って」

「気遣いありがと。でもトレーが結構大きいからなんとかなりそうだよ」


 こう言ってるが、僕にドリンクを一人で持ってくるよう命じたのは他でもないこの結城美咲である。

 前に麻央と一緒にいる時に、一方的に電話を切られたのが相当頭に来ていたらしく、今日までそのイライラを冷ますことなく持ち込んでくれたらしい。

 有名ピザチェーンも驚きのデリバリーのクオリティだ。集合場所に集まった時に美咲の友達の、『誰?』という質問に対し『さあ?』と答えていたのは本気で泣きそうになったぞ……。

 あの麻央ですらドン引きしていた。


「あっちにケーキバーもあるから一緒に持って行こうよ」

「いいね。麻央も甘いの好きだし」


 文化祭が終わった後、約束通り美咲と打ち上げをすることになった。

 美咲の友達二人と橋田と野上君、そして麻央の七人。想定していたより賑やかな打ち上げだ。


「なんか合コンみたいになっちゃったね」

「まあいいんじゃない?」

「は? あたしの友達にちょっかいかけんの?」

「しないってば!」


 急に声が鋭くなるのやめてほしい。

 麻央がナイフだとすると、美咲は刀の居合い抜きのように一瞬で切ってくる印象だ。

 麻央に振られたばかりの橋田も楽しそうに歌っていたし、美咲の友達も話しやすくて安心した。

 未だ麻央恐れているのか、野上君がずっと緊張した顔持ちなのが気になるけど、これを機に乗り越えてくれればいい。


「ていうか麻央ちゃんって陽也くんと幼馴染だったんだね」

「やっぱ驚くよね」


 麻央の名前はこの地区の学校中に知れ渡っている。

 三年になってこちらに越してきた美咲が耳にしていてもおかしくない。


「マジで可愛いね。リアル麻央ちゃん」

「リアルってなんだよ」

 麻央は麻央だよ。


「それで? 昨日の夜電話で少し話したけどさ、また色々頑張ってたの?」

「またっては?」

「麻央ちゃんのために何かしたんじゃない?」

「さあね。こんなの頑張ったうちに入んないよ」

「ばーか。何すかしてんの? バレバレだし」


 惚けているのをわかっているのか、美咲の返しが少し悪戯っぽい。


「実はちょっとだけね。と言っても二年ぶりに大喧嘩して仲直りして、一緒に謝っただけだよ」

「ふーん……なんかつまんないの」

「いいんだよ。美咲がつまんなくても」


 これは元々面白い話じゃないし、僕と麻央が起こしただけの問題なのだから。


「そういう意味じゃないですー。陽也君もっとあたしに相談してくれればよかったのに」

「いや、でもさ……」


 相談したら美咲が怒りそうなんて言ったらまた機嫌を悪くしそう。

 うーん……難しい。


「なに? あたしが機嫌悪くして怒ると思ってたの?」

「まだなんも言ってないって」

「やっぱ思ってんじゃん!」


 だって美咲の時だって、急にスイッチが入って機嫌が悪くなったりしたしさあ……。

 それになんとなくだけど、美咲には麻央のことも隠しておきたかった。


「別に怒ってないし怒らないから」

「本当かなぁ?」

「だって陽也くんにチョコあげたりプレゼントもらってたのって他の女でしょ?」

「……は?」


 え? 


 嘘でしょ? この人いつの話してんの? それゴールデンウィークとかそこらだよね?


「あの時は『仲がいい』とか『委員会』とか超むかつく言い訳してたけど、相手が麻央ちゃんだったら、陽也くんの性格なら『幼馴染』って言い訳するよね?」

「さ、さあ……? 実際にその状況になってない——」

「な? だろ?」


 こ、こわいよ美咲。


「前から不思議だったんだけど、なにがそんなに気に入らないんだよ?」

「だから知らないって言ってんじゃん。陽也くんがデレデレしてるからじゃない?」

「そんな無茶苦茶な……本人も前にしてないのにさ」

「うっさい。あたしが気に入らないの」


 美咲は口を尖らせながらチョコレートケーキをポイポイ皿の上に乗せていく。


「あ! でもさ、陽也くんってあたしと麻央ちゃんで全然態度違うよね」

「まだ続くのぉ……?」


 文化祭でへとへとなところに精神攻撃はきついんだが。


「なんつうか、麻央ちゃんに対して激あまだよね」

「どこがだよ」


 多分だけど、美咲と喧嘩した時より酷いこと言ったと思うぞ。


「陽也くんは麻央ちゃん本当に大事なんだなあって」

「本人に教えてあげて」


 お返しに僕のことももう少し大切にするようにと。たとえば毒舌を控えるとか。


「うまく言えないけど、ちょっと羨ましいと思った」

「そ、そうか……」

「いいなあ〜」

「……僕は美咲のこと、普通に大切だって思ってるけど」

「へ〜。じゃあどうやって証明するの?」

「えっと……電話を途中で切ったりしないとか?」

「当たり前だっつのバカ」

「ごめんなさい……」

「じゃあ大切な美咲ちゃんのためにミルクレープ奢って? ね? ハル」

「全っ然似てない! ミルクレープ奢ってもらいたいだけだろ!」

「うっわあ〜。麻央ちゃん大好き過ぎでしょ」

「揶揄うなよ!」

「メロいの? メロってんの? ん〜?」

「こら! 肩ぶつけてくんな! 落とすだろ!」


 皿に二つのミルクレープが追加される。どうやら奢るのは確定らしい。

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